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ログ・ホライズン ~わっちはお狐様でありんす~  作者: 祈願
〈海外〉 :海を渡る狐
24/47

『2』げろ!悪が忍び『4』ってきた!

〈海外サーバー〉


〈エルダー・テイル〉は米アタルヴァ社によって提供されているオンラインゲームだが、そのゲーム世界は13の管区によって分割されゲーム世界内のハーフガイア・プロジェクト対応地域にある国のオンラインゲーム会社が「運営」という形で参加している為、世界各国で〈エルダー・テイル〉が愛されているのだ


経営方針等、色々とサーバー事に異なるが、基本的に日本にいても海外サーバーに行く事が可能となり〈エルダー・テイル〉が愛される要素の一つになっているのであろう……



「第12回!ドキ☆エルダー・テイル追加パック!~隣の家の芝は青く見える~」著作者:くずのは

より抜粋……



「ネタが…ネタが尽きてきんした……ん?念話でありんすか?おやぁ~?珍しい方からでありんすね~?」


リリリリンっと鳴り響く通信回線に眉を顰めながらも通信相手を見て彼女は尻尾を揺らした


「あいあい、クーでありんす♪現在、林檎を所望しておりんす!――え?ふざけるな?……わっちはいつも本気で林檎を愛しておりんす!―――ん、全部で2個でありんす―――あい、了解でありんす!書いたどすえ?……ん?まさか…待つでありんす!わっちは行きようありんせん!―――ッ!シロエェェ!助けてー!ちんど――……」



彼女の助けを呼ぶ叫びは虚しく〈記録の地平線〉に響き渡り、異常を察したシロエが来た時には置手紙と呼出水晶を残し、彼女の存在は〈ヤマト〉から消えていたのであった……





ログ・ホライゾン ~わっちがお狐様でありんす~


拉致監禁は犯罪でありんす!え?わっちが言うな?




荒野を渡る風は、もはや冬のそれを思わせるほどに冷たかった。

四囲の静寂は、光の欠如した闇ではなく、より神秘的で透明な気配に満ちた、夜という色彩を持って宇宙の青がそのままに、色を深く深く落としたような、その広がりは、視線を上にやれば億千の星空へと繋がっている。

高原アオルソイの夜だ。遠くの山々は、星空の欠如と言う形で、その暗い影をわずかに教えている

……そんな闇の中、4人と1匹の影が焚き火の明かりによって揺らいでいた


「しかしLV91、か……」

「ん?気になるのかな?けろナルド」

「レオナルド、だ……失礼な奴だ」

「諦めろ。……カナミに説いても時間の無駄だ」

「その様だな」

「あ、ひど~い!」


頬を膨らませながら怒っていますよ!っとアピールするカナミを尻目にKRとレオナルド、二人は話を進めていく……


「エリアスは古代種だし〈大地人〉だ……理解は出来ないが納得はできる。でも、僕は自分の目で確かめてから判断したいんだ」

「確かに……正確な情報は自分で確かめた方が理解出来るだろう」

「コッペリア達の中で誰かがLV91に至ればわかりマス」

「そうだけど…経験値テーブルも分からない今、暢気にLVが上がるのを待つのは……なんだかな」

「ふむ……」


苦虫を潰した様な表情で俯くレオナルドを尻目にKRは馬となった自分の首を振りながら考えた後、長い首を下げカナミに小突き始めた


「ちょッ!?KR、セクハラー」

「カナミにやるか。……〈呼出水晶〉は持っているか?」

「へぇ?KR持ってないの?」

「今の俺は〈白澤〉だ。持っている筈ないだろう……俺の前に置け」

「もう~!態度がデカイお馬さんだな!」


ぶーたれながらもストレージから赤色の水晶を取り出しKRの前に転がした


「念話対象・〈くずのは〉。赤から青へ…念話と接続」

「……な、なにをしているんだ?」


転がってきた水晶を器用に足で受け止め、ぶつぶつっと呟いている馬を見れば誰だって何をしようとしているのか常識的に気になる

しかしこのパーティーに常識は通用しないようで、誰も尋ねる様子が伺えなかったのでレオナルドが尋ねるかたちになってしまった


「日本にいる知己に連絡を取っている。彼女ならLV91に至っているだろう……ついでだ、エリアスが魔法を使えるが本職がいた方がいいだろう……呼ぶぞ」

「なっ―――」


言葉が続かなかった……色々と疑問に思う所はある

なぜ外国サーバーとの連絡がとれるのか?始めて見るあの水晶はなんなのか?どうやって呼ぶのか?・・・…多様な疑問が浮かんでくるのだがレオナルドには「あ~その手があったか~」と感心してKRが行っている行動に疑問を抱かない彼女が不思議でならなかったのだ……


レトロな呼び出し音が数秒鳴ったうち、KRの知己と言う相手から応答が返ってきた……


『あいあい、クーでありんす♪現在、林檎を所望しておりんす!』


レオナルドは頭を抱えた……声からして女性らしいが返事の内容があまりにもアレだ

忘れていたがKRの知己と言う事は、カナミの知己である可能性もあったのだ

カナミの友は不思議な奴………日本で言う『類は友を呼ぶ』


「久しいな……だが、ふざけるのも大概にしろ」

『え?ふざけるな?……わっちはいつも本気で林檎を愛しておりんす!』


隣で爆笑しているカナミを見て更に頭が痛くなってきた


「……まぁいい、ペアの〈呼出水晶〉は手元に何個ある」

『ん、全部で2個でありんす』

「2個、か……どういう風の吹き回しか知らんが、ギルドに所属しているな?……俺はカナミと違って優しい「え~!KRが優しい!?」……用事がある時は〈水晶〉を割れと書いて手紙と一緒に部屋に置いておけ」

『あい、了解でありんす!書いたどすえ?・・・…ん?まさか…待つでありん―――』

「よし、呼ぶぞ。」


何か騒いでいる相手の了解を聞く前にKRは馬となった自身の足で〈呼出水晶〉を砕いたッ!パリンッと言う破壊音と共に激しい閃光が高原アオルソイを照らした


突然発生した閃光に目が眩む。だが直ぐに目を閉じたのが幸いし徐々に視力が戻っていく……チカチカとまだ星が飛んでいる中、レオナルドは最初に聞いた言葉は―――


「―――ん屋に犯されるぅぅぅぅぅぅっぅぅう!!!」


気品の欠片もない悲しい叫び声であった……

カナミの笑い声をBGMにレオナルドは深く頭を抱えるのであった……







「わっち……汚されんした……双子ちゃんとマリー、弟子に合わせる顔がありんせん」

「っと言うわけで一緒に行く事になったクーちゃんです!よろしくね~!」

「まて、どういう事だ!」


いきなり現れた狐尾族の女性は地面に「の」の字を書き、カナミは満面の笑みを浮かべながら彼女を紹介し、亀が突っ込みをいれる……まさにカオスだ

レオナルドは思う。傍観を貫くエリアスとコッペリアの仲間になりたい……と、しかし彼の常識を覆す事態に傍観など貫けなかったのだ


「あの〈呼出水晶〉はトランスポート・ゲートと同じ役割ができるのか!?だとしたらそれで日本に行けば良いだろう!」


トランスポート・ゲート、都市と都市を繋ぐ簡単に言えばワープの様な物だが〈大災害〉後、これらは機能を停止させた。現状では再起動の見込みがなくただのオブジュクトに変わってしまったものだが〈呼出水晶〉が携帯式のトランスポート・ゲートなら!と期待を込めてKR.に言葉をぶつけたが……帰ってきた言葉はレオナルド望むモノではなかった……


「〈呼出水晶〉は本来通信器具であり、一部を例外を除いて転送は出来ない」

「なっ!?な、ならなんで彼女は!?」

「例外だ。〈くずのは〉単体なら〈呼出水晶〉の組み合わせが合えば〈呼出水晶〉から転送できる」

「なん……だと!?」

「……裏技を使えばいけると思うがな」


レオナルドが驚愕する中、最後は皆には聞こえない様に呟いた……KRにも思う事があっての言動だと思われるが……深くは説明する気は無い様で未だに「の」の字を書く駄狐に声を掛ける


「二度目だが、久しいな〈くずのは〉。……お前にしたら些かレベルが低いようだが」


彼女のステータスを確認し、少し含みを持った言い方で久しぶりにあった知己に話しかける

彼女のステータス画面にはLV90の数字、決して低い訳ではないのだが彼からしてみれば意外だったのであろう



「……わっちも色々と忙しかったでありんすよ!あと、わっちはクーでありんす!いい加減覚えやがれ!ちんどん屋!」

「……俺はKRだ。貴様こそ覚えろ駄狐」

「ま~ま~、喧嘩はよくないよ?二人とも」


フシャー!と尻尾を逆立てて馬に喧嘩を売る狐を諌めるカナミ……はやくも挫けそうになるレオナルドであった、が……一人の少女が前に出る


「コッペリアはコッペリアと言いマス。初めまして。よろしくお願いしマス。……心拍数に異常が見られます。治癒をご所望デスか?」


スカートをつまみ上げる優雅な礼をとった……空気が読めないとはこの子の事を言うのか?と疑う程、タイミングが可笑しい。しかし、可笑しいのは一人ではなかった


「エリアス=ハックブレードだ、よろしく頼む〈冒険者〉殿」


次は自分の番とばかりに前に出て礼をとるエリアス。

レオナルドは今日何度目になるかわからない頭痛を感じ頭を抱えた

そんな彼とは反対に毒気が抜かれたのか彼女はKRとの口喧嘩をやめ二人を見定めた後、満面の笑みを零しらがら口を開いた


「わっちは、〈冒険者〉のクーでありんす♪……まことカーミンの仲間は個性的な物ばかりでありんすな♪」


『物』と言う場所だけ妙に強調しながら話す彼女は、二人と握手を交わした後、未だに頭を抱えるレオナルドにも手を差し伸べ……ないで何処から取り出したのか分からないが赤い果実を食べ始めたのであった


「っておい!僕には握手を求めないのか!?」

「♪~♪~♪~」


流れ的に自分にも手を伸ばすと思っていたのに、その場にいないかのように振舞う彼女に更なる頭痛がレオナルドを襲った


「あはは~、クーちゃんは人見知りって言うか、人間嫌いだからね~♪ドンマイ、けろナルド!」

「人間嫌いって……エリアスとコッペリアはどう説明するんだよ!」

「気にするな……付き合いが長い俺でもアイツと言う人間がわかならい」

「……大丈夫なのか、人として」


HPは満タン、MPも満タン。しかしレオナルドのライフゲージはレッドゾーンに突入し、いまだに減り続けている


「人としては駄目だが、能力は保証しよう」


KRがフォローのつもりで言い放った言葉はかえってレオナルドのライフゲージを削りきったのであった





「………KR」

「……なんだ〈くずのは〉」


高原アオルソイの夜が更に深まった頃、4つの寝息と共に高原の闇へと静かに消えていった……

フィールドでの野宿。〈大災害〉が起きた事により別段珍しい光景ではなくなったモノだが、いかんせんそこはフィールド、いついかなる時にモンスターとエンカウントするかわからない状態な為、交代制で火の番と見張りを行うことになったのだ


最初はいきなり連れ出したのは此方の非だからと言って彼女はシフトには入っていなかったのだが……意外にも彼女が進んで番を付くと名乗り出て、レオナルドの評価を上げる事になったのだが、彼女にとってはKRと二人で話すタイミングが欲しかっただけ……レオナルドの事なんてこれっぽっちも考えてはいない

『知らぬが仏』……いまのレオナルドにはドンピシャな言葉である


「私を呼んだ理由は何故かしら?……カナミがいれば万事解決のはずよ?」


話したい事は至って簡単……自分を呼んだ訳

召喚時、あえて聞かなかったのは、何かKRに考えがあると読んでのことであった

kRも〈くずのは〉に呼び出される、または話し掛けられるとわかっていた様で〈くずのは〉の質問にすぐ答えた


「二つある。一つはパーティーの強化……いくらカナミが馬鹿げていても限界はある。一対一しか脳のない〈武道家〉、HPを削るしか出来ない〈古来種〉、違和感を覚える〈施療神官〉、そして仲間になってから日が短い〈暗殺者〉」

「なるほどね、貴方が私に求めているのは広域性と指揮、ね」

「あぁ……」


KRが全てを語る前に何を求めているのか察する事ができるのは……付き合いが長いと言う理由だけでは片付けられないだろう

KRと〈くずのは〉……二人は近くて遠い存在なのかもしれない……


「で、二つ目は?」

「……お前の口伝はなんだ」


高原アオルソイに一陣の風が吹き荒れた。風は一瞬焚き火の炎を揺らした後、更に激しく炎を燃え上げた


「……〈情報書換〉(オーバーリライト)よ……貴方は?」

「……〈真紅の契約〉だ」

「そう……」


交わす言葉は少ない、だがお互いが何を伝えたいのか容易に想像出来てしまう……

しかし、決して口には出さない、いや、出してはいけないのだ……


ユーレッド大陸アオルソイ

広大な荒れ地と沙漠、視界の果てまで駆け抜けて行く乾いた風が吹く大陸……


今この瞬間、世界最大の大陸を横断する旅にイレギュラーが入り込んだ




NEXT 狐と放蕩者と亀と勇者と人形と…



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