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ログ・ホライズン ~わっちはお狐様でありんす~  作者: 祈願
〈夏季合宿〉:狐が休む場所
15/47

暑『1』のは『5』めんでありんす

〈西風の旅団〉


円卓会議参加ギルドの一つ。大規模戦闘攻略を目標に掲げるギルドは数多いが、先行者利益が大きなこの分野において、新興団体にしては珍しく戦果を挙げて勢力を伸ばしている

ギルドマスターは〈放蕩者の茶会〉出身のハーレム製造機もといソウジロウ=セタ。天然気味な心優しい童顔から発生するスマイルで女性〈冒険者〉の心を落としまくっている・・・・ッチ!

悔しい事に戦闘に関しても一流であり、彼の戦闘スタイルに攻撃を「受け止める」と言う言葉はあまり聞かない

攻撃を「流す」事に特化しているのだ。・・・私の予想が正しければ彼は〈エルダー・テイル〉において未知の領域にたどりつくであろう・・・・




「第12回!ドキ☆エルダー・テイル追加パック!~突撃!隣人のお宅~」著作者:くずのは

より抜粋・・・・




「ん~人物紹介になってしまいんしたか。しかし・・・」


彼女はクルリと後を振り返った。・・・後には凡そ60人の〈冒険者〉が二列になって坂を下りていた


「大所帯でありんすな~。でももう歩けんす!」

「黙って歩けパンツ神!列が乱れるだろ!」

「・・・くすん」





青空の下、彼女の駄々は直継の一言により一掃されるのであった・・・


ログ・ホライゾン ~わっちがお狐様でありんす~


白い砂浜!青い海!輝く太陽!・・・身体に沁みるでありんす





時は戻り5日前・・・

マリエールが自分の立場も考えないでバカンスに行きたいと駄々をこね、〈夏季合宿〉と言う名のバカンスと「エターナルアイスの古宮廷」において開かれる会議と舞踏会への招待状が同時期に決行される決定され〈記録の地平線〉は各自、どちらに参加するか話し合いをしていた・・・


「―――と言う訳で直継と班長は〈夏季合宿〉に。アカツキは 「主君の身の安全はわたしが守る」・・・僕と一緒に来て貰う訳だけど・・・いいかな?」

「おう!うちでもトウヤとミノリが参加するしな!引率は任せろ」

「ふむぅ・・・合宿と言えばバーベキューですかにゃ?腕がなりますにゃ」


直継は胸に拳を当て、にゃん太は手を口に添えて合宿での献立を思い浮かべにこやかに笑った。アカツキも「承知」と短く返していたが不満な事はないようだ

各自が自分の成す事を確認し、にゃん太が淹れたお茶を啜っていたのだが・・・・目の前のニートに視線が向き、にゃん太を除く3人がため息をついた


「・・・主君、あの駄狐はどうするのだ?」

「・・・俺、この一週間でアイツが此処から出て行く所見た事ねぇぞ?」

「〈自由都市同盟イースタル〉は貴族文化が支流・・・疎そうな真似は出来ないにゃ。かと言って〈夏季合宿〉は食料の調達や新人の引率、一歩間違えれば大惨事になりかえにゃいにゃ」

「・・・・此処で留守番。っていうのは駄目だよね?」

「うにゃ?わっちは別にかまわんでなんし?」


ソファで林檎と戯れながら答えるニートを見て、また3人。ため息をつくのであった・・・

しかし忘れては困る!現在〈記録の地平線〉には彼女をどうにか出来る存在が2人もいるのだ!


「なぁ~クー姉?一緒に合宿行こうぜ?」

「くーさん、一緒に行きませんか?」

「うにゅ~合宿?・・・わっちは動きたくないでありんす~」


彼女を制御(?)出来る存在、トウヤとミノリに言い寄られ一瞬は考えはしたがNOと答える彼女はもはやニートの化身である。

だが、2人は止まらない。むしろ先程の答えは予想通り言う感じに更に言葉を続けた・・・


「マリ姐から聞いたけど、バカンスなんだって!美味いモンいっぱいあるってよ!」

「・・・美味しい食べ物?」


彼女の垂れ下がっていた耳がピンっと上がった・・・


「バカンスですよ?引率・・・ずっとひなたごっこができますよ!・・・たぶん」

「・・・・太陽ポカポカ」


彼女の垂れ下がっていた尻尾がピンッと上がった・・・

彼女の嫌いな物を上手く暈しながら好きな物だけを上げて彼女をその気にさせていく・・・

そしてそれは9本の7尻尾が全て上がるまで続けられてついに・・・


「シロエェェ!わっち!バカンスに行くでありんしょう!」


バカンスと言う名の〈夏季合宿〉に参加する事を決めたのであった・・・





「・・・あの時程『双子ちゃん恐ろしい子!』って思ったことはないでありんす」

「なら〈イースタル〉に行くか?お前は無理でも『くずのは』ならシロも歓迎するって言ってたぜ?」

「・・・『くずのは』もわっちと同じで腹の探りあいは御免でありんす。あと、『くずのは』の存在は〈茶会〉メンバーしか知りんせん。そな大きい所で変わったら大変でありんす」

「あ~・・・そうだっけ?お前もなんだかんだで考えてんだな?」

「・・・誰しも〈茶会〉みたいにわっちを受け止めてくれるとは限りせんでありんしょう?」

「そうか?少なくとも双子や〈三日月同盟〉は大丈夫だとは思うぜ?・・・ってついたか」


直継と話しながらも進んでいくうちに、さしわたし500mはあるかのような貯水池があり、池のそばにはこの辺りでは珍しい、鉄筋コンクリートの廃墟が余り古びれもせず立っている場所へとたどり着いたのであった


「学校でありんすか?何年ぶりでありんすかね?」

「俺はまだ、さほど懐かしくはないけどパンツ神は懐かしいのか?」

「さぁ~?わっちの年齢がばれんす。でも、懐かしかぁ~」


その後、事前に決めていた校舎の掃除班と食材調達班に分かれ各自、合宿の準備を始めるのであった・・・もちろん、掃除と言う名の肉体労働が嫌な彼女が食材調達と言う名目のつまみ食いについて行ったのはご愛嬌・・・





 セミの音がうるさいほどにふってくる田舎道を、マリエール達、食料調達部隊は歩いていた。


「んぅーっぅ。良い匂いやんね!」


 辺りには、ほのかに梨の香りが漂っている。


「そうだにゃぁ。梨の良いところがあったらわけて貰いたいにゃ」

「そうですね、梨食べたいです!」

「梨もよいざんすね~」

「・・・くーさん、そろそろ放してください。人目が・・・」


 同じく食料調達斑の引率でついてきたにゃん太と、その隣に控えるセララ。さらにミノリに抱きつく駄狐。また〈料理人〉を選んだ新人プレイヤー数名も、畑を見やっては夏野菜のあれこれを口々に品定めしているようだ。


「こりゃ良いバカンスになりそうやね♪」


各自、それぞれ周りの風景、〈大地人〉の人々に興味深そうに眺めているのを見て、マリエールがうきうきした口調で告げるが、にゃん太に「夏季合宿ですにゃ」と一応訂正されてしまう。マリエールの後で「合宿は嫌でありんす~」と場違いな発言が聞こえたが、マリエールのこの旅行に掛ける思惑は、メンバーに広がってしまった噂でしっかりバレバレなのだが、年長者としては一応たしなめる義務のようなものがあるのだろう、しかしその注意も殆ど本気と云うことはなく、つっこみというレベルのものだった。


 町はザントリーフ大河の河口付近にあった。

 水害を警戒したのか、川の畔からは少し離れて立ててある。

 この辺りの土地は平坦で、穏やかにうねる大地のあちこちがタイルのように四角く区切られ、あちらは畑、こちらは田んぼ、そちらは果樹園と利用されている。だんだんとそのモザイクが細かくなってきたと思ったら、農具をしまう小屋や倉庫などが現われ、いつの間にか町の内部に入っていたという印象だった。


この「チョウシの町」は、村落と云うよりも小さな町と云って良いほどの規模がある。このクラスになると、商店などが存在する意味も出てくるのかも知れない。


太い通りの中央で足を止めると、ついてきたメンバーがマリエールを取り囲む。面倒見がよいと云われてきたマリエールだ。少しだけ姉御気分で、気持ちが良くないこともない。


「えっとな。うーん。どないしよかな。買い出しは……にゃん太班長に任せるか。あとは、ルキセアだっけ? キミにもお金渡しておくから、二手に分かれて。内容は相談して決めてな。メモ、持ってきてあるよね?」

「もちろんですにゃ」と請け合うにゃん太。


 それに頷いたマリエールは一回だけ自分のマジックバックを確かめてみる。用意されたお土産を確認すると、メンバーをきょろきょろと見回した。形式の問題として、この町の町長格に挨拶に行くつもりだ。

 挨拶だけだから人数は要らないが、見栄えとしてはもう一人くらいお供を連れて行くのがよいだろう。

 誰を連れて行くべきなのか、と考えると、ミノリと視線があった。


(ええやん。しっかり者そうな娘やし)


 そう思って口を開き掛けると、ミノリはそれに先駆けて「お供します」と云った。


(勘もええ娘やね)


「じゃ、うちらはヒィヒャ!?」

「わっちもいくでありんす~」


ミノリに話しかけようと振り返った瞬間、弾力のある胸をわし掴みする影が現れた・・・もちろん、彼女である

マリエールも最初は驚きはしたが、背後から揉まれること一ヶ月、彼女の対応にも慣れたようで気にせずに話を進めた


「くーちゃん、いまからな~?村長さンッ!・・とこ行くんやけどおとなしゅうできる?」

「できるどすぇ~」

「なんで舞妓言葉?まぁええ、ほな行こか?」

「え!?あ、はい!お供しますっ」


目の前で行われている淫行に顔を赤くしていたミノリだが、マリエールに話しかけられて慌て返事をした

しっかり者の娘だろうが、そこはやはり話に聞いていた通り中学生なのだろう。そういう事の免疫がないようで、まだ揉みくだしている彼女を視線に入れまいとするミノリが愛おしくなり、マリエールはくしゃくしゃと頭をなで回す。


(シロ坊のトコにとられちゃったンッ!けど、この娘可愛いなぁ。……うーん、これはお買い得を逃したかも知れへん)

「あ、あのっ」

「なん? ミノリ」

「なんで平気なんですか?」

「そやな~慣れにきまっているやんっ♪」


頬を赤く染めるミノリを笑いで諭し、二人は年の離れた姉妹のよう(一匹いるが)に町の大通りを歩いてゆく。


途中で荷物を運んでいる主婦らしき〈大地人〉に尋ねると、町長はすぐ先の十字路にある大きな二階建ての屋敷に住んでいるということだった。その際に日と目に付くと言った理由から彼女の淫行は終了し今度はミノリに頬刷りをし始めたのであった


「ご、ご挨拶すれば良いんですよね?」

「そやな、挨拶して、お土産渡して……あつうない、ミノリ?」

「くーさんには悪いですが・・・暑いです」

「うにゅうにゅうにゅ~♪」


季節は真夏、夏の暑さが肌を焦がす季節に毛皮を羽織るミノリは、さぞ体力を消耗しているのであろう・・・そんな事を考えながらもマリエールは話す内容を頭の中で箇条書きにしていった・・・

荷物には、アキバの街から持ってきたサクランボ酒が樽で入っている。それを村長さんに渡して・・・林檎酒なら今この場に存在はしていない、サクランボを選択した私を誉めて欲しい!と思ったのは余談・・・


そのほかには――おおよそ二週間の間、廃墟を使わせて貰うこと。町からは5キロほど離れて居るので余り迷惑は掛けないと思うこと。ただ、数日に一回は食料買い出しにやってきたいと云うこと。そんなもんかねぇ?。


「そやな、挨拶して、一応義理を通して。食料仕入れの打診もせなあかんな。あんまりひとつの農家から買いあげてばっかり居ると、こっちの町で喧嘩になるかも知れへんし……」

「あ、そうですね」

「わっちは〈ススキノ〉にいたころ、林檎を買い占めたでありんすよ?」

「「・・・・・」」

「ま、まぁ、町長さんの言うこと聞いておけば良いんとちゃうかなぁ。後は、世間話をして……ここいらの情報があるなら掴んでおきたいところやね」

「情報、ですか……?」

「せや」


マリエールは頷く。

この世界は〈大災害〉以降変わってしまった。ノンプレイヤーキャラクターはもはや〈大地人〉になってしまったわけで、〈エルダー・テイル〉時代に持っていた機能を保持しているかどうかは、厳密に言えば判らないのだ。


「シロ坊は色々気の回る子やから、出来るだけ情報収集を頼まれとるん。このチョウシの町も、〈大地人〉のことも。うちら、知っとるようで、あんまり判ってへんから」


「そうですか……。そう、ですよね」


ミノリも何か得心したのか、素直に頷いた。

〈ハーメルン〉から解放されてか二ヶ月・・・シロエさんの下、色々な事を学んだけどシロエさんは特に〈大地人〉の事を考えているように思っていたのだ

ふっと空を眺めらがらもミノリはポツリと・・・


「シロエさん、今頃何してるでしょう」


恩人でもあり、思い人でもある彼を思い一言つぶやくのであった・・・・





ザントリーフの夜の校舎でのバーベキューを終えて翌日、彼女を含めマリエールと新人〈冒険者〉ここで言う20未満のプレイヤーは、メイニオン海岸に足を運んでいた

ここは有数の美しい白砂の海岸線があり、彼女達が寝泊まりしている校舎からは、馬で30分ほどで往復にも至極便利な位置にある為、とても居心地が良いのだ!・・・ようするに


「天国やわ~、青い海!白い砂浜!輝く太陽!すてきやとおもわへん、くーちゃん?」

「・・・|コーホーコーホー《わっちには身に沁みるでありんす》」


マリエールはとろけるばかりのエンジェルスマイルを浮かべ、かたや彼女はビーチパラソルの下で全ての尻尾をダダ下げて夏の暑さに呻っていたのであった・・・・


マリエールの水着は、『旧世界』の浜辺にいたらちょっと感嘆してしまいそうなほどの、攻撃的なビキニだった。ことさらに布の面積が少ない訳でもないのだが、マリエールの反則級ボディラインと、鋭角なカットラインのせいで、扇情的に見えてしまう。 マリエールもそれには自覚があるのか、綿のショートケープをパーカー代わりに肩から掛けていた


一方彼女の水着は『旧世界』の砂浜にいたらちょっと通報されてしまいそうなほどの、変質的な水着だった。黒と白のラインが入った全身タイプの水着すなわち囚人水着を着込み、頭にはシュノーケル。腰には浮き輪、足にはフィン。一歩間違えなくても危ない人だ。ことさら囚人水着のサイズはピッチピチで彼女のボディラインをこれでもか!とアピールしているようであった

彼女も自覚があるのか、話す時以外はシュノーケルの口に加えてマスクも被っていた・・・なんの意味があるのであろうか?


「・・・そない暑いのダメなん?うちが新人達を見てるさかい海にでも入ってきたら?」

「|コーホーコーホー!コーホー?《泳ぐのは疲れるでありんす!マリーは?》」

「・・・あかん、なに言ってるかわからへん」

コーホー?(そうでありんすか?)・・・海水は毛並みに悪いでありんす、わっちに構わずマリーが入って来たらどうでありんす?」

「ん~・・・そうしたいのは山々なんやけど一応、監督役やしこの場から離れることできんのよ」

「・・・そうでありんすか」


2人は血気盛んにカニに挑む新人を見ながら夏のバカンスを堪能するのであった・・・





NEXT お前はわっちを怒らせた

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