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幕間2〜陛下と魔女と隠密と、茶番の裏側



「でー、きらきら何しにー?」


 弟子を寝かせつけた魔女は、医務室の扉を閉めたあと、なぜか侍女服の陛下に出会った。

 藁色のロングヘアーのかつらに、化粧し美女に化けた彼は、きらきらいうなと魔女を睨みつけた。


「仕方ないだろう……変装でもしないと、ここへはこれない」


 ここは使用人棟だ。侍女や侍従といった使用人しか入れない。


「侍従でよかったんじゃー」

「顔でばれる」

「だったらーくるなー」


 不機嫌な顔の魔女に、同じように不機嫌な陛下はしばしにらみあった。


「……」

「……」

「あんたら何やってんですか」

 しばらく二人だけの世界? に浸っていた魔女と陛下は突如かけられた声のした方を向いた。

 そこにいたのは、真っ白のシーツの入ったかごを両手に下げた金髪の小柄な侍女。


「キーア」


 侍女は陛下に名を呼ばれ、ため息を付きながらほらほら退いてくださいと、なげやりな態度で二人を医務室の入り口前から追い払う。


「あー邪魔邪魔ですよー。入り口に突っ立たないでくださいね〜ほらほらどけどけー」

「キーア、俺一応こくおむぐっ」


 見事な平手打ちが陛下の横っ面にヒット。


「いちおー変装してんですよねー。だったら自分からばらすなよーです。嬉々としてフェンナが陛下んとこ行ったと思ったらまたそれですか」


 あー似合うからもっと腹が立つーと、キーアは陛下を上からしたまでじっくりと見た。


「あら、姿借りの魔術かかってないんでますねー? その姿は誰設定ですかー? なにあなたそっちの気でもあるんですかーうーわぁやーだーイーラにいっちゃおっかなー」


 だからやめてくださいよーもーとキーアは固まった陛下を放置して、魔女に入室許可をとる。


「ほんじゃーまー失礼しますよーとー」

「イーラにはいうなむぐ」「騒ぐなうっさいですよー病人前にしてぎゃーすかいわんでください」

「むぐむぐ」

「魔女サマぐっじょぶですよ〜わたしが新しいシーツ補充し終えるまでそのおくちふさいどいてください」


 シーツの補充をしながら、キーアはイーラの顔を見た。平凡な、どこにでもいそうな侍女。けれど……先ほど、隠密兼侍女として様々な現場を渡ってきたキーアでさえ顔を真っ青にした経験をした、現在一人しかいないといわれる能力者でもある。


(陛下もー、なんで大切になったかは知りませんがね〜、あんな茶番をしなくてもストレートに俺が守るとか口説きゃよかったんですよー。今日の陛下見守る日記に書かないとー)


 キーアの脳裏に先日の陛下とのやり取りが頭に浮かんだ。


『軍事訓練をする』


 ある日、突然隠密侍女三人を集めた陛下はそうおっしゃられた。


『俺が暗殺された、という設定です近衛兵に危機感を持たせる』


 三人は陛下の決定に異を唱えることはできないので、御意にと答えるしかできなかった。


『最近、ダート卿の不正により半分入れ替えたからな、近衛兵はまだ“ゆるい”し“甘い”。ベルランにも命じてある』


 そして陛下が語った作戦は、一人の侍女を囮にして自ら犯人役に扮し、近衛兵達の士気をあげること。


『お前たちは囮の侍女とともに人質役だ』


 囮の侍女は誰か、とキーアが問えば陛下はお前たちはマトス事件を知っているかと尋ねた。

 六年前に起きた事件で、確か一人しかいない能力者が王妹殿下の侍女として城にあがるきっかけとなった事件。

 その事件は裏では異能力が使われた事件として有名だ。


『近い戦関連でその侍女を狙う輩も、また出てきている。だから、近衛達に彼女の顔を覚えさせる目的もある』


 そうして、茶番は実行された。

 何故か同僚のフェンナが暴走して、姿借りの魔術だけの予定だったのに、魔術を使わずに陛下を女装までさせたり(陛下はお嫁さんもらえないとか泣いていた)、茶番のあと陛下が侍女を俺のもの発言したりとびっくりなこともあったけど。


(あんな目に遭ってしまったこの子を、確かに二度とあんな目に遭わせたくないのはわかりますよーわかりますともー)


 あの蓄音機のような力が流した事件概要。普通の人が聴いたら発狂していた可能性がある力。


(でもわたしはなれて、ましたからー。もっとひどい修羅場も経験済みなんですよー)


 だから、思うことがある。


(人生の先輩に甘えてー、頼るんですよー、イーラ)


 この子の事は守りますよ、と後ろでむぐむぐいっている陛下に心のなかで告げた実年齢不詳のキーアであった。


(しかし……良くできてますね)


「どこ触ってんだあああ?!」

「ふむ、詰め物はスライムですか? でかいですね。あ、揺れる。むにむに? 羨ましいですね、わけてください」

「……、知るかあああああ!! わけれるかあああ!?」


 キーアは去り際にしっかり陛下の偽胸に触れてから去っていった。

 陛下は「お嫁に行けない……」と、やたら盛られた偽胸を両腕で隠していたとかいないとか。

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