ある独白
僕には、年の離れた可愛い妹が一人いる。
妹は、よちよちと歩きながら、覚えたての言葉でにいちゃ、と僕を呼ぶんだ。
舌足らずな可愛らしい声で呼ばれると、自然と顔が綻ぶんだ。
だから幼い僕の世界が、妹を中心に回り出すのは、遅かれ早かれ必然だったのかもしれない。
最初は、妹のすぐ回りだけが平穏だったらよかった。
けれど、僕たちが成長するにつれて、その範囲も広くなっていった。
いつの間にか……その範囲は、妹の周囲から世間へと広がった。
ただ妹のために、そう思っていた。他はどうでもよかった。妹さえ――イーラさえ笑っていたら。それだけだったんだ……最初は。。
やがて、“世間が妹のために生きやすくなればいい”と考えるようになった。妹のために、こちらではなく向こうが妹にあわせてよくなればいいと。
なぜなら、僕の家は少し特殊だったから。
僕には不可思議な“力”が生まれたときからあった。そんな子供が生まれる家だった。
だから……僕には、妹がいつかは僕と同じ力を持つようになると薄々わかっていた。今は妹にとって生きやすいけれど、力が出たなら……とっても生きにくいんだ。
僕の世界は妹が中心で。
でも外の世界は妹にとってはやがては生きにくくなるから。
僕は、妹のために。
例え妹が望まなくても。
妹のために、世界を変えることにした。
だから。
だから妹のために動いた結果、僕は。
国と、敵対することになった。
でも。
僕は後悔はしていない。
例え、妹が泣いても。嫌がっても。総合的に見て、妹が将来的に幸せになれるのならば。
僕は、ただ妹のために――イーラ。
君が笑っていてくれれば、それでよかった。