一日目
「ではお先でーす、お疲れ様でーす!」
「——ちゃん、忘れてる忘れてる!ぷちねこアイス!冷凍庫に置いたままよ!」
「あ!そうだった!鈴木さん、ありがとう!せっかく早朝の米原さんに取っておいてもらったのに忘れて帰っちゃったら、何しに来たんだって感じですよね!」
「ふふっ、バイトしに来たんでしょ!」
「あははっ!そうでした!今度こそお疲れ様です!」
「傘は持ってるわね?暗いから気をつけて帰るのよ!」
「はあい!」
はあ、今日もたくさんお客さん来たなあ。疲れた…。早く帰ってアイス食べよ。
それからお風呂入って…。お風呂だけ入ったら作業しないとだなあ。コンペまであと二週間しかないしね。でも、ちょっとだけ寝よっかな。ふわあぁ。
あ!そうだ!今朝あげたイラストどれくらいpv付いたかな?結構自信あるんだけど……!
えーと…。うーん、いつもと変わらない、か。50まではコンスタントにいくようになったけど、そっからが難しいなあ。
あ、コメントも来てる!雨水ラッシュさんだ!ははぁ〜いつもかたじけない、誠に感謝でごわす!
ん…と、色づかいが綺麗で、すごく良い、だって!良かった、頑張ったもんね。かわちゃん先輩の言うように、美術の教科書参考にするの結構ありかも!
ぽっ ぽぽっ
ん…雨、かな?梅雨だなあ。東京の雨って、なんだか寒いから苦手なんだよね。早く帰ろ。
ぴちゃんっ!
あ、あの音だ。あのやけに響く水音。雨に混じってやたらと響くあの音。それから——
そう…一緒に感じるこの視線。わたしの背中の皮を貫通して、心臓まで触ろうとするかのような視線。
ストーカー、なのかなあ。わたしの何が良いっていうのかな。深夜に働くせいで肌はぼろぼろだし、化粧だってファンデ塗って眉毛描くくらいしかしてないのに。
ぴちゃっ ぴちゃぷっ ちゃぷんっ!
嫌だなぁ。警察に言ったって、無駄だってよく言うけど、やっぱり行ったほうが良いのかな?でも、自意識過剰だって笑われたら嫌だし…。
ああぁ……!今日はなんだかしつこいなぁ。どこから見てるんだろう?怖いのを我慢して探しても見つからないんだよなあ。
あの緑の屋根のお家のブロック塀の隙間?それとも、郵便ポスト?今はやってないたばこ屋さんの横の路地裏?
びちゃっ びちゃん!
どこっ!どこから聞こえるの!?誰なの?は、走ろう!遠回りになっちゃうけど、国道沿いから帰ろう!
びちゃちゃっ! びちゃあん!
なに!?何あれ!何か落ちてきたっ!えっ、電柱の上!?何あの、赤いどろどろっ…!いやっ!
あ、ああ!う、動いてる!逃げなきゃ!やだやだやだっ!きゃあああぁあぁぁ!
ああっ……!!
やだ、離してっ!やめて!あっ……ぐっえぇっ……ぅぐっ……。
ああっ、いしき…がっ……。
あれ…ヒト?どろ…どろにかお、が…。わたしに、にて…?
これにて、本作は最終話となります。
本日までお付き合いいただき、本当にありがとうございました。
もしお楽しみいただけましたら、ぜひ最後に一日目から五日目へ向かって読み返してみてください。
初読とは少し違った景色が見えてくるかもしれません。
また、別の作品として
『深淵からのぞいていたのは、あくまでも神でしたか?』
も投稿しております。
こちらはホラーではありませんが、「体感」を大切に描いた作品です。
本作をお気に召していただけましたら、ぜひそちらもお読みいただけると嬉しいです。




