7 奴隷
翌日、朝食の時間、テーブルに母とヴィルの姿がない。
何かあったのか?
「ヴィルトンは王都へ帰った。ワイルダー達はもう少しここで我が家の仕事を学んでから帰還する。」
ふーん。
ヴィルは直接おれに手を出すつもりはないみたいだな。
おれに何かあっても、自分は関係ないと言うためかな?
「ノエル母さんはどちらへ?」
ヴィルに着いて行くならダリアのはずだろう。
「レオナルドの仕事ぶりを見てくるために一緒に王都へ送った。あいつの手紙は白紙同然だからな。ノエルにはしばらくは王都で過ごしてもらう予定だ。子育ての事は忘れて羽を伸ばしてもらう。」
「いきなりですか…僕がロックハードに行くことは伝えたんですか?」
「エルロンド!!」
「「?!」」
メイド達が驚愕している。
おれの洗礼の結果は聞いてるはずだから、扱いが悪くなるとは思ってただろうが、ロックハード送りは予想してなかったか。
シルヴィとガリオはもっと驚いてるな。
あれ?メイド長も驚いてる?
(もしかして父とヴィル、ダリアの独断?)
万が一ノエル母さんの耳に入れば、実家のヴァージル家が出張ってくる可能性がある。
関係者を最小限にとどめたのか…
「お父様?エル兄様をロックハードに送るって何の事ですか!」
「あの、僕も始めて聞きましたけど…」
「これは王都へも連絡済みの決定事項だ。」
「そんな!」
「いいんだよ。シルヴィアもガリオも気にしなくていいんだ。僕は大丈夫だから。」
「でも…」
シルヴィには何の責任もないし、重荷を背負う必要はない。
ただ、父やダリア、ヴィルがこういう人だって事は知っておいてくれ。
じゃないと良いように利用されてしまうからな。
ガリオもだ。
ヴィルは実の弟でも容赦しないと思う。
メイド達はまともだと分かった。
とくにメイド長のケイトがシロなのは好情報だ。
ヴィルの子分達が入って来ても、家を好きなようにはさせないだろう。
これで安心して家を出られる。
荒れた朝食の後、部屋に戻って来た。
もともと家庭教師は洗礼までで、そのあとは授かったスキルによって、どの学校に行くか決まる手筈になっていた。
これからは自由時間だ。
トントンっ
ん?
誰だ?
クセで出していた魔法を消す。
「どうぞ〜」
「失礼します。エル兄様…」
シルヴィだ。
ヴィルの子分が来てからは久しぶりだな。
「どうした?読み聞かせかい?」
「違います!母様の実家に手紙を送りましょう!」
あー。やっぱりそっちだよな…
「それはダメなんだ。シルヴィ」
「どうしてですか!きっと助けてくれます!」
「確かに助けてくれるかもしれない。でもそうなったら侯爵家の口出しでオーウェン家の面目が潰れてしまう。レオ兄さんの出世に響く。もちろん、シルヴィやガリオにもね。」
「なら、こっそり行って匿って貰いましょう!」
「それは一番危険だ。僕のロックハード行きは多分王族が許可を出す。侯爵家と王族の対立になってしまう。」
「むーーー!」
シルヴィは素直で可愛いなあ。
「僕は大丈夫だよ。シルヴィは安心して魔法の練習に精を出してて。」
「本当に…大丈夫なのですか?」
「うん。でも昼食の後、僕は家を出るから訪ねて来ちゃダメだよ?」
「??…わかりました。」
「これは2人の秘密だよ?」
「はい!」
「じゃあ昼食まで読み聞かせをしよっか。」
シルヴィと魔法の練習をしながら読み聞かせをして、昼食を済ませた。
軟禁状態なので来客はない。
ヴィルとノエル母さんもいないし、ジルヴィは来ないように約束した。
さっそく部分消音をかけて、窓から出る。
塀をよじ登って外へ出た。
奴隷商の元へ向かう。
「昨日ぶりですな。エルロンド様。」
「えぇ。さっそく契約をお願いします。」
「かしこまりました。彼女にはエルロンド様は冒険者エルとだけ伝えております。」
「わかった。」
昨日とは別の部屋へ案内された。
あれ?昨日の目付きの鋭さと違って、今日はオロオロしている。
「シーナです!よ、よろしくお願いいたします!」
「ええ。よろしくお願いします。」
「エル様はお忙しい身、さっそく契約をしましょう。」
契約書におれの名を書き、血胤を押す。
シーナはすでに署名済みだ。
「これでシーナはエル様の忠実な奴隷です。煮るなり焼くなり好きにしてやってください。ふふふ」
おい、怖がらせるなよ!
確かにロックハード送りだけど…
おれはシーナを連れて奴隷商から出た。
「えっと、発言の許可を願います!」
ちょっと!
往来でいきなり土下座はやめて!
視線が痛い!
「立ってください!好きに話していいですから!」
「いいのですか?」
前に貸し出されてた主人はどんな奴だったんだ?
「今はお好きにどうぞ。ただ僕の家に着いたら、家族の前では自分からは決して喋らないように。あと、奴隷であることも話さないでくれ。」
「か、かしこまりました!」
「それで、何ですか?」
「あの、大変失礼ながら、ご主人様は冒険者だとお聞きした。それは本当なのでしょうか?」
あー。
今の服装は、服屋からプレゼントされた冒険者の初心者セットだ。
しかも、2年間でそれなりにボロになってる。
おれは薬草採取ばかりやってたので、たいして筋肉もないし、見た目は古ぼけた冒険者セットを来た、ただの冒険者に憧れてる少年だ。
「これをどうぞ。」
冒険者証を渡す。
「?…これは失礼しました!…本当に冒険者だなんて…」
「分かってもらえましたか?」
あれ?
なんかさらに怯えてる?
「わ、わたしは何をすればいいのでしょう?……エル様の…夜伽の相手をすればいいのですか?」
「え?」
あの奴隷商め!変なこというから!
「何言ってるんですか…僕はまだ子供ですよ?」
「で、では、他のメンバーの方達の?」
「他のメンバー?僕はソロですよ?」
「え!ソロでE級冒険者になったんですか!?」
「そうです。」
この見た目だからな。パーティを組んでると思われても仕方ないか。
シーナが驚いてる。
「では私は何を…」
「シーナさんには…と、その前にあのポーション屋とそれから服屋に寄らせてください。」
反応などいただけたら幸いです。
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