表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生貴族の荒れ地開拓日誌 魔力詰め込み放題って本当ですか?  作者: 雪
一章 実家脱出編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/18

5 ワイルダー

〜洗礼1週間前〜


オーウェン家の跡取り問題がいよいよ佳境を迎えている。

次男ヴィルトンと、そろそろ洗礼を受けるおれとの争いだ。

争いと言っても、ヴィルは貴族学校に通っていて家にいない。

おれも薬草採取と魔力水の納品、稼いだ資金で買った魔法書を読むのに忙しい。


なので、ダリアが悪い噂を流して父の評価を下げようとしてくるのが鬱陶しい。

後継には興味がないとそれとなく伝えてみても、全然信じてくれない。

逆に警戒を強めて来るので説得は諦めた。


ヴィルは側室の子だ。

おれは正妻の子で、魔法の才能にも恵まれている…ように見える。

ダリアからすれば、後継を狙わない訳がないと思ってるんだろう。


おれは転生者だから早熟で、早めにスキルを覚えられただけ。

ユニークスキルも、1人1つと言われているので、たぶん洗礼で貰えないと予想してる。


スタートダッシュは速かったが、いずれは追いつかれるかもしれない。

開発した魔法だって、前世の知識ありきだし面白半分で作った見た目重視の魔法だ。



ただ、おれにも悪いところがある。

花火魔法でやらかしたのだ。


いつものように花火魔法で遊んでいた時、調子に乗って《詰め込み》で花火にいつもより多く魔力を詰め込んでみた。

結果、制御を失った花火が壁に当たり爆発した。

花火は隣のヴィルの部屋まで貫通して、ヴィルは右手に軽い火傷をして、失神した。


これまでも、おれは魔法をイジって本を燃やしたり、壁を焦がしたりした事があった。

ただ、魔法で他人を傷つけたのは始めてだった。

メローが来るまでおれは茫然自失となっていた。


それ以降、おれは花火魔法を自分で完全に禁止してる。


「魔力制御は大事!」

いつもシルヴィに言っていたのに、おれ自身が甘く見てた。


《精密》を持ってるヴィル兄ならともかく、下級スキルである《魔力制御》では、ユニークスキル《詰め込み》の魔力を制御しきれるわけがなかった。



あとはノエル、メロー、シルヴィが、空気を読まずにおれを褒めちぎるのもダリアがおれを敵視する原因の1つだな。


というか、ノエル母さんの血筋は怖い!

剣バカのレオも、魔法バカになりつつあるシルヴィも空気を読まない。

読めないのではなく、読まない。

Going my way だ。


(おれは常識人…大丈夫なはず…)


今も夕食の席が修羅場。

「あなた、エルはすごいのよ!今日服を買いに出かけたらね、一瞬で合計を計算したの。しかもお釣りが間違ってることに気付いてすぐに指摘してくれあのよ?」

「エル様は天才です!おかげで救われました〜」

ほら、ダリアが無表情になった。

「メロー。あなたは黙って給仕しなさい。」

あ、メローがケイトに怒られてる。


今朝、おれと母さんはメローを連れて買い物に出た。

高い服をぽんぽん買う母さん。

元小市民のおれは一体いくらになるんだと、戦々恐々としながら頭の中で計算していた。

《高速思考》って素晴らしい。


会計の時、メローは店主と話をしていた。


"話題はこの国で一番の魔法の天才は誰か"について。


「やっぱり王都の第3王女様じゃないですかね〜。水と風魔法の素晴らしい使い手だとか?」

「エル様も負けてません!エル様はですね〜、自分で開発したオリジナル魔法で〜、屋敷の壁に大きな穴だって開けられるんですよ〜」

「はえっ?!」

店主がビックリしておれを見て来る。

やらないから!

大丈夫だから!

そんな目で見ないでくれ!


「あははは。メローの冗談はいつも面白いな〜」

「あ痛っ!どうしてつねるんですかエル様!」

メローの狂った褒め言葉のせいで、店主の手元も狂った。


店主もメローも気付かない。


メローは気付けよ!

さては、いつも計算してないな!


メローはこれでも王都のメイド学校を出ていて、領主の仕事の補佐など、そこそこの計算が出来るはずなのだ。

ミスが後で発覚すると、店主は貴族を騙したとされ、メローはチェックミスとして、どっちも罰を受けるだろう。


仕方ないなぁ。


母さんは馬車に戻ってて、言わなきゃバレないから、指摘する事にしたのだ。

「あれ?服の代金が○○ですよね?渡した金貨が××枚だったので、お釣りは銀貨と銅貨が〜〜枚じゃないですか?」

「「あっ!」」

これで、この場は事なきを得た。


なのに、メロー…

「〜なーんて事があったんですよ〜。エル様は命の恩人です!」

「ふふふ、さすがはエルね〜。」

「そんな事より、ノエル様はこの国一番の魔法使いは誰だと思いますか〜?私はやっぱりエル様が…」

馬車で普通に母さんに話した。


その時は、母さん相手なら別にいいかと思ってたんだけどな〜。



すかさず、ダリアがおれを下げてくる。

「エルさんは、魔法と計算()()は優秀ですのね。その魔法で誰かを傷つけないか心配ですわ。やはりエルさんには貴族学校より魔法学校がお似合いだと思いますわ。」


いいねそれ!おれも貴族学校より魔法学校の方が100倍良い!

「ダリア母さん名案ですね!僕も魔法学校に行きたいです!」

あれ?

ダリアから更に表情が消えたぞ?


「何度も言わせるな。それを決めるのは洗礼の結果次第だと言っているだろう。」

父の言葉には、ダリアもおれも黙るしかない。

その後はダリアのヴィル自慢が続いた。

《速読》を覚えたから領主の仕事に役立つとか、学校で派閥を作って仲間がたくさんいるとか。


ヴィル兄の派閥がある学校なんてますます行きたくないんだけど…


(てかヴィル兄も《速読》覚えたのか〜。あれ便利だよな〜。)


レオ兄さんの近況?

たしか今は17才。

字が苦手だから手紙は必要最低限の事しか書かれていない。

この前の手紙にはたしか…

「ゲルト団長と戦闘訓練をしていたら、新しい技を覚えました。いつか父とも戦いです。」

とだけ書いてあったな。

ほとんど殺害予告だし、ダリアは顔を青くしてたが、たぶんレオ兄に悪意はない。

戦いながら強くなる。まるで格闘漫画の主人公みたいな兄だ。


黙々と食べる父、気楽に食事を楽しむノエル母さんとシルヴィの心臓は鋼で出来てるに違いない。

オロオロしてるガリオと、おれを睨むダリア、息の詰まる夕食がここ最近の光景だ。


ポーカーフェイスのおれも、見た目はノエル母さんの血筋らしく、何も思ってないように見えてるだろう。


夕食を終え、部屋に戻る。

もはやクセとなった火の短剣を飛ばしながら思う。


「当たり障りの無いスキルでありますように〜」



翌日、ヴィル兄が突然帰って来た。


(あれ?学校があるはずじゃ…)

「ただいま父さん。突然になったけど、どうしてもエルの洗礼を見届けたかったんです。学校にも許可を取ってあるので問題はありませんよ。」


そこまでなら、確かに問題ない。


ただ、ヴィル兄は5人の仲間を引き連れて来ていた。

「初めましてエルロンド君。君がヴィルトン様の弟か。僕はワイルダー。よろしく。」

うわぁヴィル兄を様付けで呼んでるよ…

友人って言うか手下じゃん…


彼らは時々おれを観察している。

ターゲットの顔を忘れないために睨みつけるように。

まるで威嚇してくるチンピラみたい!

おれが普通の11才の子供だったら泣いてたぞ?


逆にワイルダーとかいう男はおれに視線を送らない。

こいつは危険だと思う。

初見はおれの体をジロジロ見て、どの程度の実力があるのか測ろうとしているようだった。

というか、魔法を使われた気配を感じた。

鑑定だろうな。

おれのステータスを見たな?

冒険者同士なら決闘だぞ?



それから時々、ヴィルが父さんの書斎に行くのを見かけた。

何を企んでいるのか…

今のおれは部屋から出るのも一苦労だ。

試しに出てみると…ガチャ…


ガチャッ!

「あれ、エルロンドくん。君も何か用かい?僕も一緒にいいかな?」


「あー、扉を開け閉めして遊んだだけなんで気にしないでくださ〜い。」


常に手下が、隣のヴィルの部屋からこちらの様子を伺っている。

邪魔な連中だ。

妹が来る時も同じことをしてくる。

怖がって妹が遊びに来てくれない。

シルヴィを怖がらせるとは、最低な奴らだ。


こうして、おれとヴィルの手下達は、互いに警戒しなら洗礼の日を迎えたのだった。

反応などいただけたら幸いです。

誤字脱字、気になる点も遠慮なくどうぞ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ