3 シルヴィア
~9才〜
ヴィル兄は12才となり、無事ユニークスキル《精密》を得た。
《精密》は星5のユニークスキル。スキルを発動すると行動の精密性が飛躍的に上がる。
魔法と合わせて使えば的のど真ん中に百発百中。
魔力消費の無駄が無くなり、効率も良くなる。
制御が難しい複合魔法や雷魔法にも役立つし、おれの《魔力制御》の万能上位互換だ。
魔法以外でも、剣と合わせれば剣筋がブレなくなるし、領内の仕事も計算ミスが無くなり的確にこなせて、文字も綺麗。
ぶっちゃけ羨ましい!
このまま行けば何か問題が起きない限り、ヴィル兄が後を継ぐだろう。
そして今、ヴィル兄の母ダリアは問題になりそうなおれを潰そうと動いてる気配がある。
よく考えてみると、前にレオ兄に勧めていたオーウェン家の歴史本。あれは確か騎士として活躍したご先祖様の本だ。
誘導して、レオ兄の興味を領主から騎士へそらしていたんだろう。
(そう言えば、ヴィル兄はよくレオ兄がサボった宿題を代わりにやってあげていたな…)
相当昔からレオ兄を当主の座から離そうと母子で考えていたのかもしれない。
おれもレオ兄のサボりを見て見ぬフリしてたから人の事は言えないんだけど…
本を取り上げようとしたり、どうせ魔法学校に行くんだからと、領主に必要な知識は不要だと主張したり。
(おれも魔法以外の家庭教師はぶっちゃけいらないんだけどな。)
元から領主になるつもりは無いし、今は魔法使いの冒険者になりたいのだ。
《詰め込み》はなかなか便利で、冒険者になっても役立つと思う。
オモチャや本を綺麗に仕舞える。
これなら家を出て一人暮らしでも生活できそう。
最近は、とにかく色んな物に魔力を込めてる。
本当は動物や魔物に込めたり研究がしたいが、家にいる間は無理そう。
冒険者活動も昼食〜夕食までの間しかできないからなぁ。
自由な時間が足りない…
そんな将来について考えてると、妹のシルヴィアが部屋に入って来た。
メローも一緒だ。
「エル兄様!絵本〜!」
「シルヴィ様〜ノックをしなきゃダメですよ~」
おっと、妹に絵本を読んであげる時間だった。
そう、妹だ!
今のおれには妹と弟が一人ずついる。
前世のおれは一人っ子だったので、今世は4人も兄妹がいる。
ダリアが弟のガリオを、ノエルが妹のシルヴィアを産んだ。
今ガリオは5才、シルヴィアことシルヴィは4才だ。
どっちも非常に可愛いらしい。
メローも「エル様と同じぐらい可愛いです」と言っている。
男のおれと可愛さで比較するのは意味が分からないが、メローの中では最上級の誉め言葉だ。
2人とも今のところ素直そのもの。
ガリオは将来レオ兄のような剣士になりたいと言っていて、シルヴィは魔法使いになりたいとおれに懐いている。
年齢的にも趣向的にも、領主になりそうもないのでヴィル兄も二人には手を出していない。
まあ、出したらおれが本気で怒るけどね。
「あいつもそんな馬鹿はしないだろう…」
「どうしたのエル兄様?」
「何でもないよ。シルヴィは素直で可愛いってだけさ」
「そうかなあ〜?えへへ」
「大丈夫ですよエル様!エル様だって同じぐらい可愛いですから!」
うん、メローは通常運転だな。
今や毎日シルヴィに絵本を読んであげるのが、おれの日課の1つとなった。
シルヴィーが見たいのは絵本より、おれのオリジナル魔法火の雑魚と、水の雑魚かもしれないけど。
「はやく、はやく!」
「わかった、わかった....ほいっ!ほいっ!」
さっそく火と水の小魚達を出して二人の周りを飛び回らせながら、本を読み始めた。
ちなみに、この魔法を使いながらの読み聞かせのおかげで、おれは《並列思考》を習得した。
読むのは500年前のセレーナ王国の英雄と、東のドルメキア帝国の悪の将軍の物語。
(何が悪かはさっぱりだな。普通に部下思いの良い将軍に思える。むしろうちの英雄がムカつく)
両者は魔法が得意で、全属性の魔法を駆使して死闘を繰り広げた。
最後はドルメキアの将軍が、魔法の制御を仕切れなくなり暴走して大爆発を起こして敗北する。
セレーナの英雄は、巻き込まれて重傷を負うが、聖女に助けられて一命をとりとめ、二人は結婚して幸せになる…
(このリア充め!やっぱりドルメキアの将軍の方がいい奴っぽい!)
ちなみに、敵将が自爆で終わるせいで、セレーナ王国でもあんまり人気が無い話だ。
だが、我が家では定番。
なぜなら、この時の大爆発でできた岩だらけの荒地ロックハードは、オーウェン領にあるから。
「な、この話でも分かるだろう?魔力制御はとっても大事なんだよ。」
「わかった!シルもエル兄様みたいにお魚さん飛ばしたい!」
「なら、お兄ちゃんの魔法をよく見るといいよ。魔法はイメージが大事だからね。」
魔法はイメージが強く影響するので、
まっすぐ飛ばすなら玉や矢の形がいい。部屋を飛び回らせるなら魚の形がいい。鳥でもいいかもな。
シルヴィとメローのウケも良好。
ちなみに、一番動かしやすい形はロケット型。
ちょっと前、ロケット花火を参考に編み出したけど、速過ぎて制御が難しく、壁にぶつかると炸裂して部屋の壁が少し焼けた。
しかも、火薬が発明されてないこの世界では、火魔法のイメージは延焼だ。
ミサイルやロケットが着弾し、爆発するなんてイメージは無い。
この事故でおれは火魔法の使用を制限されてしまった。
楽しかったんどけどな~。
「シルヴィも火と水の才能があるから、練習すればお魚さん達を飛ばせるはず。魔法で分からない事があったら何でも聞いていいからね。」
「じゃあねー、最近スキルが増えてステータス表示が見にくいの!」
あー。おれも同じ問題にぶつかったよ。
「お兄ちゃんもわかるよ〜。スキルがごちゃごちゃしてると見にくいし…実はね、魔法を使う時にロスが少し多くなるんだよ。」
「「そうなの?(んですか!)」」
「うん。ステータス表示をあえて散らかしたり、整理したりして実験したから間違いない。」
ステータス表示はデフォルトだと、覚えた順に魔法もスキルもごちゃまぜで列挙される。
この世界の人には当然なんだろうが、前世でRPGゲームをしたり、ファンタジー小説を読んでいたおれからすると、めちゃくちゃ見にくい。
なので、項目を作ったり、順番を変える方法を編み出していた。
「そんなに難しくないから教えてあげる。」
「エル様の発想は天才です...洗礼でどんなユニークスキルを得るのか楽しみですね!」
「うん!絶対、魔法のユニークスキルだよ!」
ヴィル兄も含め、みんなそう思っているんだろうな。
「...そうだね」
絵本を読み終え、無用となった雑魚達をぶつけ合って霧を発生させる。
部屋が霧で神秘的な空間になって、シルヴィとメローの拍手を浴びて、読み聞かせが終わった。
「ユニークスキルか...もしものために《詰め込み》の可能性を試しておくか。」
1人の部屋に、おれのつぶやきが消えていった。
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エルロンド 9才
【魔法】
(基礎魔法)
ステータス表示(改)、魔力循環、魔力放出
(火属性)
小さい火の玉、火の玉、火の柱
(水属性)
小さい水の玉、水の玉、
【オリジナル魔法】
(火属性)
火の短剣、火の雑魚、ロケット花火
(水属性)
水の短剣、水の雑魚
【スキル】
《詰め込み》《速読》《魔力制御》《並列思考》
反応いただけたら幸いです。
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