2 ストーンスライム
「石スライムですか?」
「はい。1年ほど前から、なぜかロックハードで石スライムが大量発生していて、村まで溢れて来るのです。」
「その討伐依頼をギルドに出したと?」
「はい。半年ほど前に村のお金を集めて、ギルドに依頼を出したはずなのですが…」
あったかなぁ?そんな依頼。
2年間この村から1番近いギルドで活動していたけど、そんな依頼は見覚えがない。
半年も放置されてる依頼があれば、さすがに目にするはず。
「依頼をしに行ったのは誰ですか?」
依頼しに行ったと見せかけて、横領でもしたんじゃないのか?
「それが、ラフトとレイトと言うこの村で1番足が早い2人に向かわせたのですが、まだ帰って来ていないのです…」
怪しい…
「なるほど。彼がどうなったかは僕達には分かりませんが、ロックハードには元から用があったので調査しましょう。」
「ありがとうございます!では、今夜は我が家にお泊まりください。ルストには宿はございませんから。」
「あぁ…明日はすぐに立ちますし、馬車で充分ですよ。」
「そんな!私どもの水がお気になさらなかったでしょうか?!」
「あ、いえいえ!お水は本当に美味しかったですよ!僕達は旅に慣れていまして、初めての宿よりも馬車の方が落ち着くだけですから。」
「そうですか…それは仕方ありませんね。」
「そう言う事ですので、失礼します。」
ぱっぱと、村長カークの家を出て馬車に戻る。
「エル様、どうして馬車で夜を過ごす事にしたんです?」
「人の耳を気にしない所で話し会いたくてさ。」
「私もですね。」
アストンも何か思うところがあるようだ。
「ふんふん♪」
シーナはさすがは行商人の娘だけあって、馬車での生活に何の疑問も抱いていない。
(もしかしたら、本当に知らない宿より馬車の方が落ち着くのかな?)
考えてみると、シーナは行商人→奴隷→ロックハード行き、という人生なので、まともな定住生活をした事がない。
「シーナさんはさすがですね。馬車生活にも慣れてそうで羨ましいです…」
メローはこの4人の中で1番馬車での生活を苦手にしている。
アストンとシーナは平気そう。
おれはポーカーフェイスで誤魔化している。
「ふふふ。ご主人様がいればどこでも大丈夫なのです!」
そっちか!
照れるおれ、微笑ましげにしてるアストン、ジト目のメロー。
うん。いつも通りで何より。
「それでエル様は人目を忍んで何を話そうと?」
「この村の依頼についてね。…」
周囲の気配を探ってみるが、馬車の周りには誰もいなそうだ。
「実は、村長の言ってた依頼に見覚えがないんだ。」
「「!?」」
「足の速い男なら、この村からで2週間ぐらいでギルドに着くはずなのにね。」
「そうなると…その方達が心配ですね…」
え?
そうなるの?金だけ取って逃げたとかじゃなく?
「ですね。たった2人で森を進むとなるとかなり厳しいでしょう。命懸けの旅です。前の村ではそんな話聞いてませんから、おそらくはそこまで辿り着く前に既に…」
確かに、馬なしだと隣の村まで2日はかかる。
途中の野宿などでモンスターに襲われる可能性もあるのか…
おれの心が汚れていたようだ。
きっとヴィルトンのせいだな!
「その通りだね。たぶんその2人はもうこの世にはいないと思う。」
「それは、この村の方達名前では話しにくい事ですね。」
そういってメローがおれの頭を撫でてくれる。
くっ、心が痛い!
「そ、そう言う訳だよ。明日からはロックハードに向けて出発する。石スライムが出る可能性が高いし今日はしっかり休もう。」
「「はい!」」
「それで、アストンは何が話したかったんだ?」
「私は石スライムについてです。」
「ふむ。」
そういえば、石スライムの事をあまり知らなかったな。
街の周辺には通常のスライムばかりだった。
「スライムの発生条件はご存知ですか?」
「たしか、魔力が物質に長い間溜まってるとスライムになるんだっけ?」
「ええ。その通りです。高い魔力がある場所には必ずと言っていいほどスライムが発生します。ロックハードはかつて、偉大な2人の魔法使いの戦闘によって産まれた地。」
どうやら、魔法研究家のアストンはロックハード誕生の原因となった魔法使いを尊敬しているみたいだ。
「ともなれば、魔力の濃度も高くて当然です。ですので岩だらけと言われるロックハードなら、石スライムが大量に発生するのも当然です。」
「今回の件も当然って事ですよね?」
「いや、これはアストンが懸念する通りおかしいね。」
「どう言う事です?」
「いいかい、村長は石スライムは半年ぐらい前から大量発生していると言っていた。これまで何度も発生しているならまだ分かるけど、今になっていきなり大量発生するのはおかしい。」
「補足しますと、スライムの発生、移動によりその土地の魔力の偏りは解消されて行くので、発生はどんどん小規模になって行くのが普通です。」
「なるほど…」
「つまり、半年ぐらい前からロックハードで何かが起こっていると言う事です!」
なんかアストンの目がキラキラしてる。
「これは非っ常に研究しがいのある事ですよ!」
あぁそういう事か…
アストンは合流してからと言うもの、ずっと魔法談義をおれとしていた。
シーナと代わった時と寝る時以外はずっとだ。
エルも生まれてこれまでの12年間、跡目争いを嫌い、魔法研究に捧げて来たので、話が合うのだ。
「ふむ…確かに気になる!」
「そうでしょう!そうでしょう!」
「ロックハードの開発にも役立つかも知れない!」
「ええ!必ずや解明してみせましょう!」
「「おーーー!」」
おれとアストンはやる気を漲らせた。
「「……。」」
メローとシーナの2人が、土属性の魔法談義に話を咲かせるエルとアストンを生暖かい目で眺めながら、夜は過ぎて行ったのだった。
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