10 メロー
わたしはメロー。
オーウェン伯爵家の三男、エルロンド・レイ・オーウェン様に付くメイド。
わたしのご主人様のエルちゃ…様は天才だ。
他のご兄妹がやんちゃな頃から、本を読み、魔法を創り、計算ができて、わたし達メイドにも偉そうにしない。
こんな方、他に見たことない。
噂によると、王都の第3王女様も幼い頃から喋れたらしいけど、エル様には敵いっこない。
わたしは、エル様が生まれた時からずっと一緒。
教えるまでもなく天才だったけど、それでも言葉を教えて、魔法を見せて、一緒に遊ん…教えて来たのだ。
そんなエル様が、今日この夜、この館から去る…
許せない。
ヴィルトン様も、ダリア様も、ライアン様も許せない。
そして、役に立てなかったわたし自身も許せない。
高位貴族の良いスキルが貰えなかったご子息が、他所の木っ端貴族に送られるなんて話はたまに聞く。
でも、周囲の冷たい評価を、愛情で乗り越えて家においておく貴族だっている。
わたしが好きな恋愛物語の主人公はだいたいそんな感じ。
なのに!
ヴィルトン様もダリア様も、エル様を積極的に追放しようとしてる。
それもロックハードに!
わたしは時々屋敷を抜け出して街で遊んでるから知ってる。
あの2人は、市井にレオ様やエル様の悪口を流してる。
それも嘘ばっかり。
それが、うちのお抱え商人を通して、ライアン様の耳に入ってくる。
そのせいで、ライアン様もエル様を追い出そうとしてる。
わたしも対抗して、ノエル様とお買い物に行く時には、必ずエル様の良い話をする。
でも、お買い物に行く所なんて服屋ぐらい。
結局、わたしはエル様のお役に立てなかった…
ライアン様の前で、ロックハードへ着いて来るなと、わたしは不要だと言われてしまった…
もう時間がない…でもわたしに出来る事は少ない。
エル様がお一人で何か準備をしているのは知ってる。
たまに部屋を抜け出してるのを見てるから。
エル様は魔法の練習をするのに気が散るから部屋に入るなって言うけど、わたしは時々覗いてる。
だって、エル様の魔法の練習は危険だ。
もし放置して、エル様が怪我を負ったら助けが間に合わないかもしれない。
はなび魔法というのが爆発した時のことを、わたしは今でも忘れない。
轟音を聞いて駆けつけた時、エル様は呆然と立ち尽くしていた。
ヴィルトン様は…どうでもいい。
どうせあの程度の怪我で死なない。
エル様の嘘の噂を流してるんだからしょうがないよね?
問題はエル様だ。
わたしもメイド学校でミスをして、友達のアリーを傷つけてしまった事がある。
あの時と同じだ。
エル様はきっと、自分がやってしまった事で、自分の心を傷つけてしまったんだと思う。
どんなに慰めても、あれからしばらく、エル様は魔法を使わなかった。
エル様がいくら大人びていても、魔法が強くても、心は傷つくと分かった。
1人じゃ立ち直れない時だってあるかもしれない。
でも、エル様自身がわたしに着いて来るなと言ったし…
悩んでいたら…
エル様が知らない女を連れ込んで来た。
だ、だれ?!?!
ライアン様に紹介!?
部屋へ入るのをチラッと見た時、その女は顔を真っ赤にしてた。
どうみてもエルちゃんに惚れてる!!
ここだけの話、エルちゃんはあまり整った顔をお好きでない。
例外はシルヴィちゃんだけ。
わたしの顔を見て、落ち着くと言ってたし間違いない。
つまり、あの女はロックハードより危険だ!
2人っきりでロックハード行き?
絶対にダメ!
わたしはロックハードに行く事を決めた。
反応などいただけたら幸いです。
誤字脱字、気になる点も遠慮なくどうぞ。




