火の酔い
「え、大丈夫?どうかした?」
ヒカリが慌てたようにヒカルに聞いた。
「どうした、舌噛んだか?」
ウェインも立ち上がり、ヒカルの様子を見た。
「ありがとうございます」
ヒカルが言った。
「なんか、久しぶりに、こうやって、誰かとご飯食べた気がして、嬉しくて......」
ヒカルは涙を拭った。
「......何それ」
ヒカリは微笑んだ。
「そんなこと言われたら、私まで嬉しくなっちゃうじゃん」
「とりあえず、食っちまえ美味いもんは美味いうちに食った方がいい。竜の肉はすぐ硬くなるぞ?」
ウェインが言った。
ヒカルは頷いて、食事を再開しようとした。
その時、食堂のドアが開いた。
「クソッ、ボルトの野郎、あそこまでやんなくてもいいじゃんか」
入ってきたのは傷だらけの赤い竜、レッドだった。
「うわー......」
ウェインは言葉を失っている。
ヒカリはごくりと唾を飲んだ。
「ああああ、もう!なんでいっつもあいつはここまでボコボコにすんだ!」
レッドは怒りに任せて叫んだ。
「あの人、なんであんなに......傷だらけなんですか?」
ヒカルはヒカリに聞いた。
「任務で怪我したんだろうって言いたいけど......」
ヒカリはチラッとレッドを見る。
「ボルトだな。ほら、さっき入り口で担がれてただろ?」
ウェインがヒカルに言う。
レッドは咆哮を上げた。
「女の子1594人ナンパして、何が悪いってんだよー!」
「......は?」
3人とも同じ反応をした。
「クソォ、一週間かけていっぱいアタックしたのに......成果がボルトの説教って......」
レッドはヒカルたちの席の通路を挟んだ向こう側の席に座り、テーブルを叩いた。
「おいブルー!酒持ってこい!」
レッドは厨房に向かって大声で言った。そして、隣の席にいるヒカリに気が付き、言った。
「お前、今夜俺の相手しろ!」
「いや、何の!?」
ヒカリは驚いて言った。
「決まってんだろ、俺とせいなる夜をだな......」
「レッド」
ウェインが言った。
「今、ここに、ボルトを呼んでもいいんだぞ?」
「ああ、すみません、ご勘弁を!」
レッドは慌てて謝った。
そこに、ブルーが酒瓶を持ってやってきた。
「ほら、いつもの」
レッドに渡す。
レッドはそれを一気に飲み干し、おかわりを頼んだ。
「なあ。聞いてくれよ!」
レッドはヒカルたちに言った。
「嫌です」
ヒカリが言った。
「断る」
ウェインが言う。
ヒカルは苦笑いを浮かべた。
「黙っている......小僧、つまり聞くってことか!」
レッドが言った。
「え、えっ!?」
ヒカルは慌てたが、レッドは話し始める。
「俺はさ、頑張ってんだよ。女の子にモテるために美味しいお酒教えたり」
「これ......聞かないとダメですか?」
ヒカルが言う。
「諦めろ。もう何言っても止まらん」
ウェインが言った。
「頑張って竜倒して、その肉を酒に浸けて贈ったり」
「何でいちいち酒が出て来んのよ」
ヒカリが呟く。
「いっぱい、いっぱい酒使ってアピールしてんだよこっちは!なのに......なのに!」
レッドは肩を震わせている。
「どうして誰も振り向いてくれないんだよ!」
「いや、当然でしょ!」
ヒカリが言った。
「あんたいっつもお酒ばっかじゃない。そんなんじゃ女の子誰も寄り付かないに決まってるでしょ!」
「ヒカリ......」
レッドは真剣に話を聞いている......ように見えたが、
「俺に話しかけてくれる......つまり好きってこ」
ヒカリはレッドのみぞおちを殴った。
「先生呼んでくる」
「あああ、待ってえ!」
レッドはうずくまりながら叫んだ。
しかし、ヒカリがドアを開けると、ちょうどボルトがいた。
「あ、先生!レッドさんにいじめられました!」
ヒカリが言った。
「ほう......」
ボルトがレッドを見る。
「待って、説教は、1日2回まで。そうだよね?そうだよな!?何とか言ってくれ!」
レッドはボルトに引きずられて食堂から出ていった。
「......何だったんですか?今の......」
ヒカルが言う。
「......さあ?」
ウェインが言った。




