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結び:無意識の責任と倫理の再定義への要請
「無意識の責任」という問いは、人間の自由意志の範囲を根底から再定義し、倫理の新たな地平を切り拓く必要性を私たちに突きつけている。
私たちは、もはや無意識を「責任外の領域」として放置することはできなくなってしまった。
しかし、同時に、その全てを「責任の対象」とすることもまた、人間の精神的な自由を窒息させる。
この倫理的葛藤を乗り越えるためには、人間の複雑な内面、特に「けしからん」衝動や、曖昧な欲望といったものを、いかに社会的な倫理体系の中に包摂し、許容していくかという、新たな哲学的な探求が不可欠だ。
この問いは、次のセクションにある「意図主義倫理 vs 感受主義倫理」という、SID社会における倫理的潮流の対立へと繋がる。
それは、私たちの「思考の正義」が、いかにして定義され、そして争われるのかという、きわめて実践的な問題定義になるのだ。




