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性愛・性癖の変容:個人的な領域から公共の対象へ

SIDにおける最大の社会変化の一つは、「性癖」の可視化と、それが個人的な領域から公共の対象へと変容したことである。


もともと、性欲やフェティッシュは、極めて個人的で秘匿された領域であり、羞恥と快楽のバランスによって成立していた。


しかし、SIDによってそれが発信されずとも無意識のうちに共有されてしまうようになると、性癖のあり方は根底から変わってしまう。


今現在、性癖とは「個人の嗜好」ではなく、「複数人によって共感された記憶の束=情動プロトコル」として存在している。


例えば、第1章で論じた「美少女がお茶漬けを食べている様子」が性的に感じられるという奇妙な快感も、それをSIDを通じて共有した者同士が共鳴することで文化圏として成立するようになった。


倫理もまた、そのプロトコルに対して可視化されるようになったのである。


SIDは、社会が何を快とし、何を不快とするかをリアルタイムで可視化し、そのフィードバックによって進化可能な倫理を生成するようになった。


SIDによって起こった倫理的再構築の中心は、「恥」の概念の変化だ。


羞恥という概念が「公序良俗に反することを見られること」から、「他者と感情が接続されない=共感不能性によって生まれる情動」へと変わった。


この再定義により、奇抜な思考やフェティッシュな欲望は、共感される限りにおいて倫理的になりうる側面を持った。


SID社会では、倫理と不道徳の境界が曖昧になるという、奇妙な現象が発生している。


これは、表現の自由が「どこまで感情を他者と接続できるか」という能力に依存するようになったことを意味していた。


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