課題と展望:創作者が切り拓く新たな倫理の地平
創作者が制度設計者となる時代は、確かに希望に満ちた展望を開ように見えた。
しかし、上記のようなテクノロジーがもたらす課題とリスクは、決して軽視できないものだった。
私たちは、以下の点を明確に認識し、新たな倫理の地平を切り拓いていかねばならなくなった。
技術的課題の克服、すなわち、分散型システムのスケーラビリティ、セキュリティ、そしてユーザーインターフェースの改善が不可欠なものとなった。
特に、量子コンピューターのコモディティ化が進む中で、量子暗号技術の導入など、セキュリティ対策の強化が求められるようになった。
そして、倫理的課題への対応。
民主性の確保、少数意見の保護、責任の所在の明確化は、分散型ガバナンスにおいて最も重要な課題であり続けた。
AIの判断プロセスを透明化し、人間の介入余地を確保するための仕組みを構築する必要があった。
多数決原理に陥りがちなDAOの限界を認識し、あえて「わからなさ」や「不完全性」を許容する倫理、すなわち「けしからん」表現を守るための、新しいガバナンスモデルの構築、「異常な倫理」をガバナンスの根底に据える必要がでてきたのである。
これは、人間の不完全性と「誤解の権利」を内包する制度設計を目指すものだった。
当時の、遺伝子レベルでの倫理的適合性が追求される時代において、人間の「けしからん」衝動や逸脱の可能性を、技術の支配から守り抜くことが不可欠なものとなったのである。
創作者は、自身の表現を通じて、人間の多様性と不屈の意志を世界に示し続ける必要があった。
創作者が制度設計者となる時代は、倫理が「外から押し付けられるもの」ではなく、「内から構築されるもの」へと変容する時代へと変化したのである。
これは、私たち一人ひとりが、自身の欲望と自由、そして責任を自覚し、能動的に社会のルール形成に参加することを求める、きわめて挑戦的な要請でもあった。




