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プラットフォーム・ガバナンスの新展開──創作者が制度設計者になる時代へ
前節では、「センシティブ表現」をめぐる規制が、いかにその定義の曖昧性と技術の進歩(AIの自動フィルタリング、プロンプト制限など)によって複雑化し、その判断基準が「何を隠すか」から「誰がルールを作るのか」という構造的な問題へと移行していったかを論じた。
また、「グローバル倫理」が特定の文化圏の価値観を世界に輸出し、日本の表現文化と深刻な衝突を引き起こしてきたことも指摘した。
これらの問題は、私たちクリエイターが、もはや単なる表現の「受け手」として沈黙しているわけにはいかないことを示唆している。
本節では、この状況に対する抵抗として、「プラットフォーム・ガバナンス」の概念がどのように変容し、創作者が倫理コードの「共設計者」となる時代がいかにして到来しつつあるかを考察していく。
これは、単なる「自由」の獲得ではなく、「責任」の引き受けを伴う、きわめて挑戦的なパラダイムシフトなのである。




