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「倫理」の変遷と現代的課題:なぜ、その概念は表現を縛るのか?
「倫理的であること」は、人類社会において常に「善きこと」として語られてきた。
それは、個人や集団が社会生活を円滑に営むための規範であり、文明を維持するための不可欠な要素であると認識されてきた。
しかし、創作の現場、とりわけ同人誌やインターネット発信といった、かつては既存の制度的縛りから自由であるとされてきた空間において「倫理」という語が持ち込まれるとき、そこにはしばしば漠然とした不安、あるいは明確な抑圧の予感が伴う。
この不安の背景には、「倫理」という概念が、その歴史的変遷の中で、いかにして表現の自由を制限するツールへと変容してきたかという複雑な経緯が存在する。




