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AIとスケベ同人作家の戦い ―性的規制と表現の自由の最前線から、SIDが思考を共有する未来へ―  作者: 岡崎清輔
第2章:VISAとマスターが性癖を殺す日  プラットフォームと規制の倫理をめぐる死闘
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不屈の創造性:それでも魂は燃える

この圧倒的な圧力に直面しながらも、多くのクリエイターは、その魂を燃やし続け表現を諦めなかった。


彼らは、「あなたの作品は、どこまで戦っているのか?」という問いを、自らに問いかけ続けたのである。


前節で論じたように、「売るために曲げる」という行為は、性癖の「マイルド化」と「魂の喪失」を招いた。


しかし、真に情熱的なクリエイターは、その限界を認識し、たとえ経済的利益を犠牲にしてでも、自身の内なる「けしからん」衝動を追求する道を選んだ。


彼らは、作品が市場で売れなくても、プラットフォームから排除されても、「それでも描かずにはいられない」という、根源的な創作欲求に突き動かされていた。


これは、資本の論理を超えた、人間の不屈の精神の表れであった。



AIのプロンプト規制に対し、クリエイターたちは、そのフィルターを回避するための新たな技術と知恵を開発した。


AIの盲点やアルゴリズムの隙間を突く「プロンプトハック」は、倫理フィルターを逆手に取り、その裏側にあるロジックを解読し、回避策を見つけ出すという、きわめて高度な知的遊戯となった。


また、正規SIDの厳格な管理から逃れるため、リスクを承知でShadowSIDやFringeNeuroといった非正規SIDやサードパーティー製SID-OSを利用する者も現れた。


これらは、プライバシー侵害や精神的リスクを伴うものの、「規制されない自由」を求める切実な願いの表れであった。


これらの行為は、テクノロジーによる統制に対し、テクノロジーを逆用して抵抗するという、現代における新たな「ハッカー倫理」を形成している。




2060年代に普及した霊子(Quanon)や重力子物理学といった最先端技術は、表現の場を情報空間からさらに根源的な領域へと拡張した。


霊子が意識や感情を「エンコード」し、それを量子情報として空間に伝播させる能力は、もはや言葉や画像といった従来のメディアを介さずに、「思考そのもの」を表現した。


これは、AIのプロンプト規制やSIDの「集合的良識プロトコル」が、言語化された表現や思考パターンを検閲するのに対し、より根源的な「意識のゆらぎ」を表現として昇華する道を拓いた。


重力子物理学がSIDと結合することで、意識が物理現象を操作するようになったことも世界を変えた。


表現は単なる情報空間に留まらず、物理的な現実そのものを変容させるという、きわめて挑戦的な領域へと拡大したのだ。


例えば、特定の性癖や思想を物理空間に具現化したり、あるいは「反倫理的」とされる存在を物理的に「消去」したりするような、極端な表現活動も発生した。


これは、表現が「シミュレーション」から「現実への介入」へと進化する、新たなフロンティアとなったのである。



これらの試みは、単なる技術的な挑戦ではない。


それは、人間の欲望と創造性が、いかなるテクノロジーの支配にも屈しないという、不屈の魂の叫びだったのだ。



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