多層的格差の深化:意識の「棲家」をめぐる新たな差別
人類の次なる「棲家」が意識の内側となる可能性は、2060年代の社会における多層的格差を、きわめて深刻なものへと深化させた。
意識のアップロード、仮想空間での生活、集合的意識への統合といったサービスは、高額な費用を必要とした。
意識の永遠性や拡張性は、一部の富裕層しか享受できない特権となり、「意識の貧富」という新たな経済的格差が生み出された。
少し、それらの格差について取り上げてみよう。
アップロードされた意識の「品質」は、利用するSIDデバイス、霊子技術、ナノマシンの性能に依存していた。
正規SIDや高度な霊子技術を用いたアップロードは、より安定した、高精細な意識体験を提供する一方で、シャドウSIDや非公式な技術を用いたアップロードは、意識の「劣化」や「改竄」のリスクを伴っていた。
これは、意識の「品質」が、新たな格差の基準となったことを表している。
意識が情報空間に存在するという現実は、心霊ハッカーによる意識へのサイバー攻撃の脅威を生み出した。
意識のデータ喪失、改竄、乗っ取りといったリスクによって、意識の安全を確保するためのセキュリティ技術やサービスの格差が生まれた。
遺伝子技術は、意識のアップロードや仮想空間での生活に適応しやすいように、人間の脳や意識を「最適化」した。
これにより、意識の「棲家」の選択が、遺伝子レベルで「設計」されるようになった。
特定の意識の形態が「優生」と見なされ、そうでない形態が排除されるという、きわめて優生学的な介入が行われたのである。
意識のアップロードが主流となっていく中で、肉体に固執し、意識のアップロードを拒否する「アンプラグド」な人々は、社会の主流から疎外され、その存在価値を否定された。
彼らは、「非効率」「時代遅れ」な存在と見なされ、社会的な機会を奪われていった。




