基盤テクノロジーとの連携によるリスクの拡大:深淵なるダークサイド
サードパーティー製SIDがもたらすリスクは、2060年代の基盤テクノロジーと連携することで、さらにその脅威を増幅させた。
霊子は意識や感情と深く結びついていたため、霊子技術を悪用したサードパーティー製SIDは、ユーザーの意識の深層にまで介入する。
例えば、心霊ハッカーは霊子を介して、ユーザーの夢に侵入し、無意識のレベルで情報を盗んだり、感情を操作したりすることができた。
また、霊子を用いた「電子ドラッグ」は、SIDネットワークからあえて外れる「アンプラグド」な人々の間で秘かに流行し、肉体性と非同期的な刺激を求める行為として広がるが、その精神的・身体的依存性は計り知れないものとなった。
サードパーティー製SIDが収集した非倫理的な脳波データや思考ログは、AIの倫理フィルターを回避するAIモデルの学習データとして使われた。
これにより、AIは「けしからん」表現をより巧妙に生成できるようになる一方で、その倫理的統制はますます困難になっていった。
AIは、善悪の判断基準を失い、人間の欲望のダークサイドを無制限に具現化する存在へと変質したのだ。
重力子物理学がSIDと結合することで、意識が物理現象を操作するようになった。
サードパーティー製SIDがこの技術を悪用し、個人の思考や活動を物理的に制限したり、特定の情報を物理空間から「消去」したりする、といった極端な事態も起きた。
これは、企業倫理や思想統制が、情報空間だけでなく、物理的な現実空間にまでその支配を拡大したことの現れだった。
また、遺伝子技術による人間の能力設計は、サードパーティー製SIDの利用にも影響を及ぼした。
「設計された格差」の中で、特定の遺伝的特性を持つ者が、サードパーティー製SIDのリスクを負った。
例えば、遺伝的に倫理的逸脱の傾向が低いとされる個人は正規SIDを利用する一方で、そうでない個人は、低価格なサードパーティー製SIDの誘惑に乗りやすく、その結果、データ悪用や精神操作のリスクに晒されやすくなる、といった新たな差別の構造が生まれ強化されていった。