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多層的格差への影響:情報格差から記憶格差、存在格差へ

AIインフォデミックと大消去は、2060年代の社会における多層的格差を、かつてないほど深刻なものへと深化させた。


情報へのアクセスだけでなく、記憶そのものが操作されたことは、過去の認識や真実へのアクセスに格差を生むことになった。


大消去によって、特定の記憶や情報にアクセスできる者とできない者の間で、認識の基盤が分裂し、相互理解が絶望的なまでに不可能になったのである。


これは、真実を認識する能力そのものにおける格差であり、究極の「認識論的格差」として表れた。



記憶から抹消されることは、社会的に「存在しない」ことに等しい。


大消去は、特定の集団や個人を記憶から抹消することで、肉体的な排除を超えた、究極の存在論的排除を実行した。


これは、「存在の抹消」が技術的に可能になったことを意味し、人間の尊厳を根底から揺るがした。


SIDに接続している「プラグド」な人々は、操作された、あるいは「最適化された」記憶をネットワーク上で共有することになった。


一方、SIDを装着しない「アンプラグド」な人々は、異なる、あるいは断片的な記憶を持つことで、真実の認識が分裂し、社会の分断はさらに深まっていった。


アンプラグド達は、操作された集合的記憶から隔絶されることで、独自の「真実」を保持することができたが、その代償として社会の主流でもあったSIDCOMのネットワークから疎外された。


一方、正規SIDユーザーは、SIDCOMが管理する「健全な」記憶を共有することができたが、その記憶が「大消去」によって操作されたものである可能性は否定できなかった。


シャドウSIDのようなサードパーティー製SIDユーザーは、記憶操作を回避できる場合がある一方で、その代わりに法的な保護を失い、第三者の介入(心霊ハッカーによる記憶操作など)のリスクに晒された。


記憶上定義されるの「真実」へのアクセスが、利用するSIDのタイプによって異なるという、新たな格差を生みだしていた。



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