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山中へ

 カバンに首を吊るに充分なロープを詰め、何度繰り返したか分からないこの行動に果たして意味はあるのだろうかと自問自答しながら山中へ向かうため、電車に乗る。


 「こだま」の職員には「友達のところへ遊びに行く。」と伝えてきた。いつものことだ。


 電車の窓にはデモ隊が大騒ぎしているのが見える。


 2030年頃、「これから生まれてくるかもしれない子ども」に対する人権意識の高まりから、子ども本人の意思確認を経ずに誕生させてはならないという思想が広まった結果、リベラル思想派が集結し、一大ムーブメントとなったことがあったらしい。それから20年近く経った今も一部過激派が騒ぎ立てている。


 今となっては一部の思想家のみのムーブメントと成り果てたけど、自分もこれは正しい思想だと思う。僕はこの「力」を望んで生まれたわけじゃない。


 もし神様がいるのなら僕に「君にこの力を与えるけれども、生まれたいかい?」と尋ねて欲しかった。無論「ノー」と答えるだろうが。


 まして、僕が子どもを誕生させる立場となったときに、自分の「力」が遺伝してしまうとしたら……。考えるだけで申し訳なく、恐ろしいことだ。


 ただ、ふと「こだま」の職員の優しさを思うと、こんなひどく消極的な自分の考えに負い目を感じないでもない。こんな自分に対してでも彼らはとても……とても優しいんだ……。


 思慮に浸っているうちに目的の駅に着いた。カバンを抱え、目的を完遂するため山中へと向かう。

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