第二十四話 立ち向かう彼女
村の朝は、いつもと変わらぬ穏やかさだった。
しかし、ベチの胸の内は、昨夜からずっと波立ったままだった。
(私は……どうしたいんだ?)
勇者のパーティーに戻るのか、それとも――
ベチは溜息をつきながら、村の広場を歩いていた。
すると、不意に子どもたちのはしゃぐ声が耳に入った。
「ナスィお兄ちゃん、こっちこっち!」
「レサー姉ちゃん、もっと早く!」
その声に、ベチの足が止まる。
視線の先、そこにはナスィとレサーの姿があった。
ナスィは子どもたちと遊びながら、時折レサーと微笑み合っている。
その光景は、あまりにも自然で、幸せそうだった。
(……私の知らない、ナスィ)
昔の彼とは違う。
けれど、それが悲しいわけではない。
ただ、彼が自分とは違う道を歩いているのだと、突きつけられるようだった。
「……お姉ちゃん、誰?」
不意に、小さな女の子がベチの袖を引いた。
「あ……」
戸惑うベチに、別の男の子が目を丸くする。
「あっ、ベチお姉ちゃんじゃない!? 昔、ナスィお兄ちゃんとよく一緒にいた!」
その言葉に、周りの子どもたちがざわめく。
「え、ほんと?」
「でも、ナスィお兄ちゃんはレサー姉ちゃんと一緒じゃないの?」
子どもたちの無邪気な言葉に、ベチは思わず胸を抉られる。
そう、今のナスィにはレサーがいる。
それが、この村ではもう当たり前になっているのだ。
「ベチ?」
声の主に振り向くと、そこにはナスィが立っていた。
「……」
ベチは言葉に詰まる。
子どもたちがナスィの元へ駆け寄るのを見て、彼がどれだけこの村に馴染んでいるかを思い知った。
(私は、もう……この場所にはいられないのかもしれない)
寂しさが込み上げる。
だが、それでも――
「ナスィ、少し話せるか?」
ベチは意を決して、彼に向き合った。




