7-6 [挿絵アリ]
このエピソードで決着付けたかったんですが、ギリギリ収まらなかった……!!
「今回、選ぶべきは決まっていますわ。このゼノレギオン以外、あり得ません」
フローラの凛とした声が、ホールに響く。
その顔は険しく、決して自分の意見を譲らないという強い意思が感じられた。
だが一方のキャロルもまた、彼女に負けず劣らずに声を張り上げ対抗していた。
自分の意見こそが正しいと言わんばかりに、胸を張っている。
「いーや、お姉様が選んだ基準って、そのロクでもない趣味よね!? 私は違うわ、きちんと今後を見据えての計画よ!」
真っ向から激しく口論を交わし、激突するフローラとキャロル。
その二人の声は大きく、カイはこめかみを押さえ、耐えるように目をつむった。
「二人とも、もう少し声を下げてくれよぉ……!」
カイが深く息を吐き、ふと目を開けると、コーネリアがすっと一歩前に出た。
穏やかな笑みを浮かべながら、カイに向けて丁寧に声を掛ける。
「どうやら白熱した議論はまだ続くご様子……。その間に、先ほどご購入を決断されたピクシーについて、改めてご説明致しますね」
そう言いながら、コーネリアはタイミングを見計らったかのように、話を切り替えた。
カイは背後の騒音を聞かなかったことにして、コーネリアを見た。
彼女が手にしていたケージの中で、ふわりと光を纏った小さなゼノレギオン――XER-10-ピクシーが静かに羽ばたいていた。
XER-10-ピクシーは、まるで幻想から現れた妖精そのものだ。
全長20センチほどの小柄な身体は、透き通るような羽根を持ち、微かな光をまとって浮遊している。
「こちらのピクシーは、その愛くるしい姿と儚げな羽の美しさから愛玩用として大変人気が高く、特にお子様方に喜ばれております。また、一部のコレクターの間では、羽色の美しさを競うピクシーグランプリが開催されるほどでして――」
コーネリアが指先で端末を操作すると、ホログラムには大会で優勝した個体の写真が映し出された。宝石のような羽が輝き、まるで芸術品のようだった。
カイはその映像を見て小さくため息をつきつつ、ピクシーが漂う様子をぼんやりと見つめた。確かに、その姿は文句なしに美しい。
「へえ、こういう大会があるんですね……趣味の人かな」
カイはぼそりと呟いたが、コーネリアはその言葉に笑みを深めた。
彼女にとっては想定内の反応だろう。
「ええ、この手の商品はいつだって人気ですよ。中には特注品として、実在する人間の遺伝情報を基に作られる個体もございます。その場合、価格は青天井となり、まさに希少品として扱われることもございます」
「え、それは違法なんじゃ……」
その一言にカイは思わず目を見開く。
だが、コーネリアの顔はどこか涼し気で、笑顔が深まるばかりで答える様子はなかった。
倫理的な問題を含んでいることは明白だったが、この施設においてはそれすら商品価値として評価されているのだろう。
「続けますね。このピクシーは単為生殖で増える性質がございますが、その管理は非常に難しくなります。湿度や温度、栄養バランスを精密に整える必要があり、育成に失敗すればすぐに衰弱してしまいますが――」
コーネリアが静かに続ける。
まるで一つ一つの単語に価値が含まれているかのような丁寧な口調だ。
「逆に言えば、その希少性こそが魅力であり、手間をかけることでさらに価値を高めることができるのです。羽色は遺伝することは無く、全て一世代限りの完全ランダムであるため、特異な色合いは非常に高価値が期待できます」
ケージの中では、ピクシーがふわりと羽を揺らした。
光の反射が柔らかな虹色の輪を描き、静かな美しさを放つ。
「寿命は20年ほど。手のひらサイズの存在ではございますが、繁殖させ、育成すれば資産としての価値も期待できますわ」
「なるほど……」
カイはピクシーのホログラムに映るデータを眺めながら、静かに頷く。
初めは小さいという理由で適当に選んだだけだったが、コーネリアの話を聞く限り、このピクシーには大きくその価値が化ける可能性がある事に気付かされた。
資産価値を高めることが出来るといった点が、実にカイの中で良く響いた。
欲しくもない人工生命体を大枚叩いて買うのだから、価値ある商品に化けるのはカイに取ってこの上ない好都合だからだ。
カイは静かにピクシーのホログラムを見つめながら、その小さな存在が持つ“資産価値”について考えを巡らせていた。
「繁殖させ、育てて羽色の美しさを最大限に引き出す。そして、コレクターに売り出せば元は取れる……!」
思わず口元に手を当てて唸る。
愛玩用としての価値ももちろんだが、手間を惜しまなければ、確実に利益が見込める商品だ。
「資産価値……いい言葉だ」
カイがしみじみと呟いたその瞬間――。
両肩を力強く掴まれる。
「カイ様っ!」
「ご主人様!」
背後から、フローラとキャロルの声が重なって飛んできた。
カイは、ピクシーの静かな羽音から一転して、現実に引き戻された。後ろ髪を掻きながら、渋々と二人を見返すのだった。
「なんだよ、今度は……」
振り返った先には、見事な仁王立ちで並ぶフローラとキャロルの姿があった。
先ほどまで白熱していた口論は一旦収まったらしいが、その代わりに二人の表情には勝ち誇ったような、あるいは最終戦争に挑むかのような緊迫感が漂っている。
「カイ様、最終的なご判断をお願いいたします!」
「ご主人様が決めなきゃ進まないわ!」
二人の言い分が平行線をたどった結果、どうやら最終判断をカイに委ねることで決着がついたらしい。
カイは天井を仰ぎ、心底うんざりとした顔をする。
「俺かあ……」
ぼやきながらも、フローラとキャロルの視線があまりにも真剣なため、逃げるわけにもいかない。
仕方なく、その場に立ったまま二人の言い分を聞く体勢に入る。
「では、カイ様。まずは私の提案をお聞きくださいませ!」
フローラが一歩前に出ると、その表情はまさに完璧なプレゼンテーションを行う自信に満ちていた。
彼女は背筋を正し、両手を優雅に組んで胸元に当てると、澄んだ声で語り始める。
「私は今回購入するべきなのは、このXER-01-ゴブリンだと考えております!」
カイは案の定、フローラが購入を希望しているのがゴブリンであったことに軽い頭痛を覚えた。
だが同時に、ああ見えてフローラは無駄なことは決してしないのだ。
その為、カイの中で今回ゴブリンを選んだ理由についてはほんの僅かばかりの興味があった。
鼻息を荒くして語り始めたフローラは、誰にも止められない勢いでアピールを続けていく。
「まず、第1の魅力は安さ。1体あたり1万クレジットという低価格は他にはありませんわ。稼働期間は10年ほどと長くはありませんが、幸いなことに繁殖が実に容易である点も見過ごせない長所ですわ」
フローラ曰く、ゴブリンは安価な労働力として実に都合がよいという話だった。
戦闘用生物兵器という側面を持つゴブリンは、それにも関わらず個体戦闘力は高くはない。
しかし、最大の強みは集団行動であり、それを支えるために高い知能を与えられている。
集団行動では非常に高度なコミュニケーション能力を必要とし、同時に命令誤認を避けるためにも、そうした知能が求められた。
結果として、ゴブリンはその高い知能から単純な労働力としても流用することが出来るという。
「現在の私たちは大きな弱点を抱えておりますわ。それは言うまでもなく3人しか居ないということ。この先、必ず多くの人員を必要とする場面が出てきます。そのとき、このゴブリンを活用することが出来るのです」
はきはきとプレゼンを終えたフローラは、ドヤ顔で満足げに胸を張り、カイの反応を待った。
その自信たっぷりな姿には、一分の隙もないように見える。
カイは軽く腕を組むながらも、彼女の意見には確かに一理あると感じていた。
3人しかいない現状で、いざという時に労働力を補える手段を用意しておく――それは間違いなく合理的な判断だ。
「まあ、フローラの言うことも一理ある」
カイは渋々と呟く。
集団行動が得意なゴブリンは、単純作業を効率的に任せられるのだろうし、何より安い。
繁殖方法も適当な大きさの動物を母体にして増やすことも出来る手軽さもある。
だが、その瞬間、キャロルが待ってましたと言わんばかりに一歩前に出た。
彼女は興奮気味に反対意見をぶつける。
「ちょーっと待った! お姉様の言ってること、間違ってはいないけど、全然効率が悪いわ!」
キャロルは端末を操作し、ホログラムに別の選択肢――ドローンを映し出す。
滑らかなデザインで、いかにも機械的な姿をした一般的な作業用ドローンだ。
「いい? ゴブリンが出来る作業はドローンも出来るわ! 加えて安定した動作、維持コストの低さ、それにバッテリー交換だけで動き続けるんだから!」
ホログラムには、ドローンが淡々と荷物を運び、整然と作業をこなす映像が流れていた。
ゴブリンの手間暇かかる繁殖や管理とは違い、ドローンは手間なく作業を遂行している。
「そもそも、ゴブリンは能が高いって言うけど、その分面倒も増えるのよ! 指示を出すのだって、いちいち細かくしなきゃいけないんだから!」
キャロルの勢いに、フローラが冷ややかな目を向ける。
「ふん、ドローンに人間のような判断力があるとお思いですの? 高度AI搭載型は当たり前に高価ですわ。その点、ゴブリンはまだ廉価! しかも増やせる! 指示もゴブリン同士でマニュアル化すれば解決ですわ」
「いやいや! 逆にゴブリンなんて数が増えたら管理が大変じゃない!」
二人の視線がぶつかり合い、空気がピリピリと張り詰める。
口論は止まる気配もなく、再び熱を帯び始めていた。
カイは額に手を当てつつ、強引に二人の間に割って入る。
「二人とも少し落ち着いてくれ。まずは順番に話を聞くから、一旦静かに……な?」
その一言に、フローラは「全く」と言いたげに息を吐き、キャロルも口を閉じる。
だが、キャロルの表情には明らかに勝ち誇った笑みが浮かんでいた。
「じゃあ、ご主人様! 次は私の案を聞いてよ!」
彼女は勢いよくカイの前に立ち、端末を操作すると新たなホログラムが浮かび上がる。
先ほどのドローンとは異なり、ホログラムには異様な姿をした人工生命体が映し出されていた。
――分厚い甲殻に覆われた体躯、獰猛な牙を備えた顎、そして背中から無数に伸びる鋭利な触手。
見る者に本能的な恐怖を抱かせるその姿は、まさに戦闘のために造られた生物兵器だった。
「これかあ……」
カイが思わず声を漏らすと、キャロルは得意げに胸を張って答える。
「XER-99-キマイラよ! ただの労働力じゃないわ、これは正真正銘の戦闘用ゼノレギオンよ!」
ホログラムにはシミュレーション映像が流れ始める。
廃墟となった戦場で、キマイラが触手を振り回し、敵を次々と引き裂き、鋭い顎で噛み砕いていく。
「ゴブリンの仕事はドローンで代替できる! じゃあ、戦闘は? 一匹当たりの戦力なんてたかが知れてるわよね。でも、このキマイラは違う! 純粋な戦闘ユニットで、どんな敵だって倒せるんだから!」
彼女の目は輝き、言葉には確かな自信があった。
しかし、その説明にカイは微妙な表情を浮かべる。
「いや、それは分かるけど、なんだか過剰な気がするぞ」
「確かに過剰かもね、けど無いよりはマシよ! この間だって、セントリーボット相手に苦労したじゃない? けど、あの時、もしこのキマイラが1体でも居たなら話は違ったはずよ」
キャロルの指摘はその通りで、キマイラのような戦闘に特化している陸戦ユニットは実の所カイ自身も興味が惹かれるものがあった。
ついこの間、カイは生身でセントリーボットを相手にしなければならないという状況に遭遇した。
その際は、何とかパワードスーツで乗り切ることが出来たが、それが無ければ非常に危ない闘いだったのは疑いようが無い。
その際の出来事について、カイはフローラとキャロルの戦闘スキルを無条件に信頼していた故に起こった事案と分析し、密かに彼女たちの陸戦装備の見直しを図っていた。
すでに幾つかの新型装備を購入していたが、更なる戦力として戦闘用生物兵器を購入しておくというのも、決して悪い手ではないと思っていた。
「まあ、確かにな。ここで陸戦ユニットを増やすというのも悪くはない」
そのカイの言葉を聞いて、キャロルの笑みがさらに深くなる。
この勝負、勝った――。
しかし、その時だった。
フローラが控えめに咳払いをして、二人の間に割って入るように静かに口を開いた。
「……カイ様、そのような怪物を導入するのはあまりにも危険ですわ」
彼女の声はいつも通り落ち着いていたおり、わずかに眉をひそめ、キマイラのホログラムを睨むように見つめている。
「いくら強力な戦闘力があるとはいえ、その姿をご覧になって何も感じませんか? あのような異形が艦内を歩き回るのを想像してみてくださいませ」
「うっ……確かに」
カイは思わず想像し、軽く背筋がぞわりとした。
触手を振り回しながら咆哮するキマイラが、自分たちの生活空間をのし歩いている姿は、冗談でも見たくない。
さらにフローラは続ける。
「それに、維持費や管理の手間も問題ですわ。そこら辺はどうなっているでしょうか、コーネリアさん?」
フローラの冷静な問いに、コーネリアは再び端末を操作し、淡々と説明を続ける。
ホログラムには、キマイラの詳細データが次々と映し出されていく。
「はい、XER-99-キマイラについて、さらに補足させていただきますね」
ホログラムに映るキマイラの姿が、再びゆっくりと拡大される。
その異形の生物は、まるで今にもこちらに飛びかかってきそうな迫力を放っていた。
「まず、キマイラは非常に獰猛で他のゼノレギオンとは異なり、主人と認識した者以外の命令は決して聞き入れません。従順に見えるのはあくまで主人に対してのみ――それ以外の者に対しては攻撃的な態度を示す場合もございます」
「主人以外は無視……?」
カイが眉をひそめると、キャロルも「へえ」と感心したようにホログラムを見つめる。
「だからこそ、制御は特別な方法で行われます」
コーネリアは端末を操作し、脳内構造を示すデータをホログラムに浮かび上がらせた。
そこには、複雑な回路のようなものがキマイラの頭部に埋め込まれている様子が示されている。
「キマイラの制御には、サイコシンク・インターフェース――PSIが使用されます。これは脳内に埋め込まれた特殊なコントロール装置で、主人の思考や命令をシンクロさせることで動作します。しかし――」
コーネリアは一拍間をおいて、少し声を落として静かに続けた。
「このPSIには一つ大きな欠点がございます。それは――一度紐づけを行うと、二度と書き換えることができないということです」
「……二度と?」
「はい。最初に紐づけされた者が主人として登録され、その後は永久に変更不可能となります。紐づけミスや事故があれば、そのキマイラは文字通り“制御不能”となり、廃棄するしかなくなるのです」
その言葉に、カイは思わず息を飲んだ。
フローラとキャロルも口を閉ざし、何か考えるように動きが止まる。
「だから価格が高騰しているのです。PSIによる絶対的な制御は魅力ですが、その代わり非常にリスクも高い。……それがキマイラという生物兵器の真の姿でございます」
コーネリアの言葉が終わると同時に、ホログラムの中のキマイラが再び咆哮し、触手を大きく振り上げた。
その姿は異様に迫力があり、ただの“商品”とは思えないほどに禍々しい。
「ふぅーん、紐づけ……似ているわね」
キャロルが小さく呟く。
今までの勢いはやや影を潜め、複雑な表情でホログラムを見つめている。
「じゃあ、もしご主人様が紐づけをしたら――」
「いや、戦闘ユニットなんだからその指揮は二人の内どちらかで良いんじゃないか? フローラ辺りに紐づけさせるとか」
カイが疲れた顔で適当に話すと、彼女は慌てて首を横に振った。
「え、待って! 私がプレゼンしてるんだから、そこは私じゃないの!?」
「まあキャロルでも構いませんが……汎用型でも指揮は出来るでしょうし」
「まーた、汎用型のことディスってくるじゃないお姉様」
再び二人の間に火蓋が切って落とされそうになっている所を、すかさずコーネリアが口を挟んで消火する。
「申し訳ございません、管理・維持についてもご説明致しますね」
寸前でコーネリアが再び穏やかな笑みを浮かべ、場を収めるように言葉を続けた。
「XER-99-キマイラの維持には、定期的な特殊栄養剤の供給が必要です。それに加え、ストレスを軽減するための専用区画の確保も推奨されております」
「そりゃまた維持が大変そうだ……」
カイが眉をひそめると、コーネリアは優雅に頷いた。
「はい。戦闘用に特化しているため、通常のゼノレギオンとは異なり、キマイラは気性が非常に荒いのです。そのため、艦内での飼育にはストレス管理が不可欠でして……。万が一、管理に失敗すれば暴走する危険性もございますわ」
「暴走……!?」
フローラの言葉にキャロルが大きく反応した。
彼女は慌てた様子でコーネリアに詰め寄る。
「な、何それ! 初耳なんだけど! それってどのくらいヤバいの?」
「万が一ですけれど、暴走時にはPSIを持ってしても制御が効かなくなる可能性がございます。その場合、最悪……艦内での被害は免れないかと」
「うへぇ、それは勘弁」
カイはげんなりとした顔で息を漏らす。
戦闘力が高いのは確かに魅力的だが、それが自分たちに牙を剥くリスクがあるとなれば話は別だ。
「ご主人様、大丈夫だって! ちゃんと管理すればそんなこと起こらないんだから!」
キャロルは必死にフォローするが、その顔にはさすがに焦りの色が浮かんでいる。
「貴女、何を根拠に言っているのです?」
フローラが冷ややかに見下ろすと、キャロルは言葉に詰まった。
「だ、だって……大丈夫だもん!」
「……説得力が皆無ですわね」
フローラが呆れたように肩をすくめる。カイはその二人の様子を見て、頭を抱えたくなった。
「結局、どっちも問題はある、か……」
キマイラの戦闘力は確かに魅力的だが、管理の難しさとリスクは無視できない。一方でフローラの推すゴブリンは、手間がかかるものの安価で手に入るという利点がある。
「カイ様、私たちの生活空間に怪物を導入するなど正気の沙汰ではございません。ゴブリンの方が遥かに現実的な選択ですわ」
フローラが優雅に微笑みながら言うと、キャロルがすぐさま反論する。
「ご主人様、違うわよ! これから先、またセントリーボットとかヤバい敵に遭遇するかもしれないのよ? その時どうするの!? ちゃんと考えてよ!」
キャロルの必死な訴えに、フローラが鋭い視線を向ける。
「必要以上に過剰な戦力は無駄というものですわ。第一、そのような暴走の危険があるものを導入するのは――」
「――待て待て、二人とも落ち着け!」
カイは二人の口論を手で制し、再びため息をついた。どちらも言いたいことは分かる。だが、問題はどちらも完璧な選択肢ではないということだ。
「少し考えさせてくれ。ゴブリンにするか、キマイラにするか……簡単には決められないぞ」
そう言って、カイはホログラムに映るキマイラとゴブリンを交互に見つめた。
ホログラムの中でキマイラが咆哮し、鋭い触手を振り回す。その姿が妙に現実味を帯び、カイの頭痛はさらにひどくなっていくのだった――。
Psycho-Sync Interface:サイコシンクインターフェースシステム
軍用の脳波コントロールシステム、技術的には比較的新しめ。




