6-5
ちょっとだけ!ちょっとだけ長め……
カイはハヤトを連れ、オベリスクの広大な艦内を案内していた。
その巨大な構造の中で、ハヤトはまるで新しい冒険に出るかのように目を輝かせている。
格納庫、居住区、食堂、娯楽設備、どれも彼にとって初めて見るものばかりで、そのすべてが目を見張るほどのスケールだった。
「これでほぼ全部だ。最後にブリッジを見せて終わりだな」
カイは優しく微笑みながらハヤトに言った。
だが、ハヤトは振り返り、満足することなくさらに輝く目でカイを見つめた。
「それも見たいけど、白鯨号とナイトフォールも見てみたい! 特にナイトフォールは前から気になってたんだ!」
その言葉には、純粋な好奇心と興奮が詰まっていた。
カイはその無邪気な姿に一瞬、不思議な感覚に囚われた。断ることができない、何かに引き寄せられるような気持ちだ。
通常ならば、ここで断るはずだったが、その言葉は喉の奥に引っかかり、どうしても出てこない。
「はぁ……わかった、外観だけだからな」
カイはため息をつきながらも、ハヤトをナイトフォールが格納されている第2ハンガーへと案内した。
そこに静かに佇むインペリアル・ライト・カヴァリーことナイトフォールは、漆黒の艶を持つ鋭いフォルムで、まるで羽を休めている鴉のようだった。
キャロルの愛機を、今こうしてハヤトに見せることには、言葉にできない妙な感覚があった。
「すっげぇ……これがナイトフォールか……」
ハヤトは目を見開き、その姿をじっと見つめていた。
まるで憧れのヒーローを目の前にした少年のように、その目は純粋な光を放っていた。
カイはその表情を目にして、わずかな満足を感じつつも、どこか胸の奥に違和感が残る。
「外観だけで満足してくれ。これはキャロルの艦なんだからな」
そうカイが言い終わる前に、ハヤトはさらに強い口調で頼み込んだ。
「中も見せてよ! そうだな、どうせならコクピットまで見たい! な、いいだろ?」
その執拗な要求に、カイは一瞬戸惑った。
これまでハヤトが見せた無邪気さとは違う、何か切迫したものが彼の声に混じっていたように感じたからだ。
しかし、それもカイは断れなかった。不思議と、どうしてもこの要求を無視することができない。
「ああ……仕方ないな。コクピットまでだぞ」
カイは重い口調で答え、ナイトフォールの内部にハヤトを案内する。
コクピットへと入ると、操作パネルが整然と並び、精密な計器類が輝いていた。パネルボードの上には幾つかの愛らしいマスコットフィギュアが飾られており、それが実にキャロルらしい。
ハヤトはその光景に目を奪われ、一歩一歩ゆっくりと進み、ついには操作パネルに手を伸ばしかけた。
「すごい……VRで見たのと全く同じだ。けど、やっぱ臨場感が違うぜ……本物はこんな感じなんだ」
目に見えて幸運するハヤトを見て、カイは眉をひそめた。
カイは急に、ここに彼を入れたことが間違いだったのではないかという思いが湧き上がってきた。
そもそも、幾ら見たいとせがまれたからと言って、部外者を簡単にコクピットへ入れるなどあり得ない。
なぜ自分はこんなにも簡単に彼の言うことに従っているのか。そんな疑念がカイの中で膨らみ始めていた。
だが、その瞬間、艦内に鋭いアラート音が鳴り響き、一気に考えが霧散した。
『未確認艦船の接近を確認。警戒態勢に移行』
カイは驚きながらもすぐに端末を手に取り、状況を確認した。
オベリスクの早期警戒システムから発せられた報告では、未確認艦船が接近しており、数分以内に危険な距離に入るという。
「すぐにブリッジに戻らないと……行くぞ、ハヤト!」
カイは急いでハヤトを引き連れてナイトフォールから出ようとしたが、ハヤトはその場を動こうとしなかった。
「待ってくれ、カイ。俺がナイトフォールを起動させる。緊急出撃に備えて準備するのが先決だろ?」
その言葉にカイは耳を疑った。
目の前のこの子供は、今なんといった?
軍でも採用されるレベルの小型戦闘艦を起動させる? そんなこと、素人の少年にできるはずがない。スイッチ一つで起動するような簡単なものではない。
「馬鹿なことを言うな! いくら、フライトシミュレーターで練習したからって現実は別だ! 下手に触るな!」
カイは目の前で我儘をいう子供を叱りつけるかのように、強い口調で反論した。
しかし、ハヤトは動じることなく、驚くべきことに強い声で言い返してきた。
「俺は素人じゃない! インペリアル・ライト・カヴァリーならフルエンジ改造した艦を持っているし、戦闘ランクだってエリートなんだよ!」
「はあ? お前は何を言って……ッ!!」
その瞬間、カイの中で何かが弾けた。
激しい衝撃が頭を駆け抜け、次の瞬間、カイはハンガーの出口に立っていた。
何が起こったのか理解できない。いつの間にここに移動したのか、全く記憶がなかった。
「え、はあ? どうして……ここに?」
カイは一瞬で移動したかのような感覚に激しく戸惑いを覚えた。
自分は先ほどまでナイトフォールのコクピットの中に居たはず。
それなのに、一瞬気が遠くなったかと思えば、次には全く別の場所に居た。そんな非現実的な状況を前に、戸惑いを覚えない人間など居ない。
だが、カイはすぐにハヤトの言葉を思い出した。
「……そうだ、あいつ!」
カイは慌ててハンガーの中へ戻ろうとしたが、扉は固くロックされていた。
扉の壁面に備え付けられた端末で状況を確認すると、第2ハンガーのシステムは出撃準備に入っており、完全にロックされていることがわかった。
「くそっ……!」
焦りながらカイはそのまま端末を通して、ブリッジに通信を繋いだ。
画面にはフローラとキャロルの顔が映し出され、カイはすぐに説明を始める。
「フローラ、キャロル! ハヤトが勝手にナイトフォールに乗り込んで、発艦しようとしている!」
◇◇◇
ハヤトはナイトフォールのコクピットに座り、今までに感じたことのない高揚感に包まれていた。
目の前には現実の操縦桿、そしてフットペダル。ゲームの中で何度も触れた仮想の装置とはまったく異なる、生の感触がそこにあった。そのことにハヤトは胸の高鳴りを抑えられなかった。
「これが……本物の操縦席……」
手に触れた金属の冷たさや、足元に伝わるフットペダルの感覚が、彼に現実の重みを感じさせた。
まるで夢の中にいるかのような感覚。それでも、これは確かに現実だ。
ハヤトはその事実を噛みしめながら、さらに興奮を募らせた。
思い返せば、ある日突然、目を覚ましたら全く知らない場所にいた。
最初は驚き、そして恐怖した。
しかも、自分は奴隷として捕らえられていたという事実を知った時、彼は絶望の淵に立たされた。
自分がなぜここにいるのか、なぜこんな状況に陥ったのか全く理解できなかった。
学校を終え、真っ先に帰宅してパソコンに向かってクライアントを立ち上げる。
そうして画面には見慣れたゲームロゴ『Dangerous Space』。
5000時間のプレイ時間を持つ、ハヤトにとって愛してやまない宇宙シュミレーションゲーム。
そのゲームを立ち上げたところまでは覚えているが、それ以降の記憶が無い。そして、次に意識がはっきりした頃には、全く知らない場所に居たのだ。
そうして少しずつ周囲の状況を知るにつれ、彼はあることに気づいた。
目の前に広がる世界は、彼が知っているゲームの世界と酷似していたのだ。それに気づいた時、彼の絶望は一転した。そう、彼はゲームの世界に迷い込んだのだ。
「も、もしかして……異世界転移ってやつか!?」
初めは、自分の置かれた状況に途方に暮れた。
しかし、ある瞬間、ふとゲーム内のイベントと今の状況が重なることに気づいた。
ゲームの中でプレイしていた同じような展開。そう、彼は自分がゲームの中の世界にいるのだと確信した。
ゲームでも、奴隷から救出されるイベントがあった。
星系防衛隊に助けられ、その後自分を待っているのは大きな冒険の始まりだった。目の前に広がる展開も、それと全く同じだった。
そして、現実でも同じように、彼は救出された。星系防衛隊によって。
次に現れたのは、カイという謎の多い独立パイロットだった。
いずれ自分と恋仲になる二人の美しい女性を連れ、どこかゲーム内のキャラクターを彷彿とさせるその姿に、ハヤトは運命的なものを感じた。
カイとの出会いが、次なる冒険の幕開けだったのだ。
そして、その冒険の次なる展開。それは――海賊からの襲撃。
彼はゲームのシナリオ通り、すでに次の展開を予想していた。
未確認艦船の接近警報が鳴り響いた瞬間、ハヤトの中で物語のパターンがはっきりと見えていた。ここからは、自分のターンだ。
ナイトフォールに颯爽と乗り込み、華麗に海賊を撃退する。
その姿を見たカイは自分を褒め称え、フローラとキャロルも頬を染めて好意を寄せてくる。
それこそが、次に待ち受けている展開だ。
「俺が……ヒーローになるってわけ!」
ハヤトは心の中で確信した。
そしてその未来を夢見て、手際よくナイトフォールの出撃シークエンスを進めていった。
手元の計器類を操作し、エンジンのスイッチを入れる。光が一つ一つ点灯し、ナイトフォールのシステムが稼働していく。
計器パネルが鮮やかに輝き始め、シートに伝わる微振動が彼をさらに興奮させた。
「パワープラント、出力値正常。各種スラスター、動作正常。センサーは近距離戦闘用に切り替え……」
ハヤトは手際よく各種チェックと、操作を進めていき、ついにハンガーの外部ハッチがゆっくりと開放される。
宇宙の黒い闇が、ナイトフォールの前に広がる。
「これからが、俺のステージだ!」
ハヤトは勢いよくスロットルを全開にし、ナイトフォールは緩やかに宇宙へと飛び出した。
徐々に遠ざかるオベリスクを見て、眼前に広がる宇宙の広大さに、その圧力に息を呑む。だが、その恐怖を上回る興奮と快感が彼を包み込んでいた。
「ヒャッホオォー!! ハヤト様の出番だぜ!」
ハヤトはその瞬間、すべてが自分の手中にあるかのような感覚に包まれていた。
これから訪れる自分の活躍を、信じてやまなかった。
◇◇◇
『ナイトフォール、自動発艦シークエンスが間もなく終了。コントロールがパイロットに移譲されますわ』
オベリスクのブリッジで、フローラはハヤトの動きを冷静に把握していた。
初めはカイから、ハヤトがナイトフォールに乗って出撃しようとしている等という報告を受けた時、何かの冗談かと思った。
だが確かにナイトフォールは自動発艦シークエンスを起動しており、それに伴ってオベリスクの第2ハンガーが自動的に艦の出撃準備を進めていることが分かった。
ハヤトがどのようにして発艦シークエンスを始めることが出来たかは不明だが、むしろ、それを起動してくれたおかげで安全は確保できていた。
このシークエンス中はパイロットの操作を受け付ける事無く、自動的に安全な発艦が可能となっている。
そのため、下手に操作をしていても、それは一切無駄なのだが、次なる問題はそのシークエンスが間もなく終了してしまうということだった。
「了解した。こちらも発艦する、まずは目先の問題から片付けるぞ」
『承知しました、カイ様。こちらも間もなく大型ドローンの準備が完了致しますわ』
一方のカイも、自ら白鯨号に乗り込んで、ハヤトの後を追うように発艦準備を進めていた。
「あのクソガキ……私の艦に傷一つでも付けてたら殺してやるわ」
その隣に座るキャロルは殺意を滲ませながら、各システムチェックを行っていた。
カイはそんなキャロルを刺激しないように、勤めながらも、迫りくる海賊への対応を考えるのだった。
そんな時、開放された第1ハンガーのデッキから一筋の光線が目に入る。
それは光学兵器のビーム照射に他ならない。
『ナイトフォール、攻撃を受けています。シールド出力90%まで減少』
ブリッジで状況を観測しているフローラから報告が入る。
それを聞いた途端、隣に座るキャロルが目を見開き、カイに急いで発進するように告げる。
「あああぁーー! 私のナイトフォールぅーー!! ご主人様、早く発艦して!!」
「お、おう……白鯨号、発艦する」
カイは隣で血走った目で催促するキャロルに軽い恐怖を感じ、急ぎ白鯨号を発艦させる。
すると、それまでピタリとハンガーに張り付いていたランディングギアが、抵抗なく引き離れる。
そうして浮力を得たかのように白鯨号は垂直に上昇していき、オベリスクから発艦していった。
一方、ハヤトは先ほどまでの高揚した気分とは打って変わり、自分の想像通りに動かないナイトフォールを相手に悪戦苦闘していた。
見知ったコクピット配列にも関わらず、操縦桿を押しても引いても、その挙動は自分の持つイメージとはかけ離れた動作をする。
ここで自分は大活躍を成し遂げ、これから躍進し続けると言うのに、この体たらく。
ハヤトはそんな焦りと、怒りを感じながら操縦桿を激しく動かしていた。
「くそ、なんで!? ゲームの中じゃ、完璧に動かせていたのに!!」
皮肉にも、その焦りだけが艦の動きに反映されているようで、ナイトフォールは加速を続けながら、見るも無残にきりもみ回転をしていた。
そこへ、海賊からの容赦のない攻撃も加わって、ハヤトの焦りは加速していた。
攻撃を受けるたび、激しくシールドが明滅し、出力がじわじわと減っていく。今やシールド耐久力は80%まで減じられていた。
それが完全に失われた時、どんな結末を迎えるのかだけは、ゲームでよく理解していた。
「落ち着け……落ち着け、俺。まずはスロットルを抑えて……ひいぃ!!」
制御を取り戻せない理由の一つとして、スラスター出力をほぼ全開にしていたことだ。
小型戦闘艦であり、一撃離脱を得意とするナイトフォールの出力は非常に高い。故に、高速域では繊細なコントロールが要求される。
操作に全く慣れていないハヤトが何とか制御するには、低速域に落とすしかない。
だが、ハヤトはスロットルを落とすことは出来なかった。
『ひゃははは! なんだお前、ド素人じゃねえか! 踊れ、踊れー!!」
オープンチャンネルを通して流れる海賊の声に、ハヤトは心底恐怖を覚えた。
それから逃れたい一心で、ハヤトはスロットルを無意識に引き上げてしまっていたからだ。
ナイトフォールは無軌道にきりもみ回転を続け、海賊の攻撃が次々と命中していく。
操縦席にいるハヤトは、何もかもが自分の想像通りにいかない現実に、疎ましい思いが募っていく。
ゲームの世界では、ヒーローのように敵を倒し、自分が中心となるはずだったが、現実は違った。計器類が警告音を鳴らし、徐々にシールドが削られていく。
「くそおぉ、なんでだよ! こんなはずじゃない! 俺はヒーローなんだよ……!」
だが、ハヤトの焦りと動揺は、そのまま操縦に反映され、艦の挙動はますます無軌道になっていく。
海賊の攻撃は容赦なくナイトフォールを狙い撃ち、シールドの耐久は残りわずか。画面には、シールド耐久値が赤い明滅に変わり、飽和寸前であることを示していた。
その時、カイの耳に通信越しにハヤトの泣き叫ぶ声が響いた。
『た、助けてくれ! 誰か! もうダメだ、俺……やめてくれよぉ……!』
同時に、カイの隣にいたキャロルも、叫び声を上げた。
「ぎゃああーー! 私のナイトフォールがああーー! 早く……早くなんとかしてえぇー!!」
キャロルの声は悲鳴に近く、この二人の泣き叫ぶ声にカイは思わず耳を塞ぎたくなった。
二人は謎のシンクロを見せて、カイを苦しめていたが、彼はそれに負けじと集中力を維持していた。
シールドが完全に消失するまでの猶予は数秒しかない。
カイは一瞬の思考を巡らせ、最後の秘策を実行に移す決意を固めた。
「フローラ、ぶつけろ!」
幸いにも、襲撃してきた海賊船は一隻のみ。
白鯨号の火力では正面からの戦闘は無理だが、巧妙な戦術を使えば十分に撃破できると信じていた。
カイは海賊船がナイトフォールに夢中になっている隙に、無音駆モードにして静かにその背後に回り込むと、オベリスクにいるフローラに合図を送った。
ハヤトの悲鳴が通信から漏れ続け、キャロルの泣き叫ぶ声も耳にこびりつくように響く。
カイは歯を食いしばり、タイミングを見計らった。
次の瞬間――海賊船に勢いよく何かが衝突した。
海賊船のシールドは一瞬のうちに飽和して消失し、何やら得体の知れない物体が船体に突き刺さっていた。
「今だッ! キャロル、電力を兵装に回せ!!」
「ッ! は、はい!」
カイは白鯨号の兵装を起動させ、今だ衝撃の混乱から立ち直っていない海賊に向けて攻撃を開始する。
一瞬何が起こったのか分からず、呆気に取れていたキャロルは、カイの号令に咄嗟に思考を切り替えすぐさま対応した。
十分な電力を得た2門の小型レーザー砲は、精確に海賊船に突き刺さった物体を狙い撃つ。
レーザーが物体に命中すると、それは一瞬輝き、その後まるで導火線に火が点いたかのように大爆発を引き起こした。
「何……今の……?」
キャロルが驚きの声を上げる。
彼女の目の前で、海賊船はあっけなく木っ端みじんになり、巨大な火の玉を残して消えていった。
辺りには無数のデブリが漂い、海賊船の残骸は完全に粉砕されていた。
「ふぅ……作戦成功っと!」
カイは慎重にその光景を見つめ、事態が落ち着いたことを確認する。
だが、キャロルは何が起こったのか理解できないまま、カイに説明を求めた。
「ご主人様、一体何が起きたの? あの爆発は一体……」
カイは息をつき、少し間を置いてから答えた。
「突き刺さっていたアレ、オベリスクに積みっぱなしだった大型ドローンなんだ。シールド展開機能がついている特殊仕様」
火力に乏しい白鯨号1隻では、海賊船を相手にすることは非常に困難だった。
そこでカイはフローラと相談して、オベリスクの倉庫に積みっぱなしになっていた大型ドローンの有効活用を思いついた。
この大型ドローンは特殊な環境下で運用されることを想定した特別製で、シールドを有するドローンとなっていた。
それを使って海賊船のシールドを無力化して、白鯨号の低い火力でも対応できるようにする作戦を実行したのだ。
その威力については、語るまでも無い。
過去、この大型ドローンが暴走した際、オベリスクの堅牢なシールドですら直撃時は一気に飽和寸前のレッドゾーンへと突入した。それ以下の出力しかない海賊船であれば、当然と言えば当然の結果だろう。
「それをフローラに制御させてミサイルみたいに使ったんだよ。で、運良く海賊船に突き刺さったままだったから、レーザーで誘爆を狙ったって感じだ」
「え、そんな貴重なドローンを!? ちょっと勿体無かったような……」
「まあ、実際貴重なんだろうけど、ずーっとハンガーの片隅で放置してた代物だからなあ。たぶん、ここが使い時だったんだよ」
キャロルは驚きながらも納得し、改めてカイの戦術に感心していた。
「とにかく、脅威はこれで去った。フローラ、ナイトフォールのコントロールをオーバーライドできるか?」
カイは通信を繋げ、フローラに指示を出す。
『了解しましたわ。すぐにナイトフォールの遠隔コントロールを試みます』
フローラはすぐにシステムを操作し、ナイトフォールのオーバーライド準備に取り掛かった。
カイは無事に事態が収束することを願いながら、スクリーン越しに乱回転を続けるナイトフォールを見つめ続けた。
特殊仕様の大型ドローン、1基で1万クレジット位




