8-15
翌朝、メッセフェルト・プライムステーションには穏やかな人工昼が訪れていた。
宇宙の虚空に浮かぶ巨大なリング状の構造体であるこのステーションは、内部の光量と色調を調整することで、あたかも太陽が存在するかのように日常的な昼夜を再現している。
ゆるやかに流れる時間と淡い照明のコントラストが、ユニバーサルホテルのロビーを柔らかく包み込んでいた。
カイたちは前日のうちに、宿泊先の部屋とは別にもう一室を借り受けていた。
商談や作戦会議などの用途で使われるミーティングルームのようなもので、カイたちのような滞在客が追加料金を払えば、いくらかの備品とともに利用できる。
フローラとキャロルはその部屋で、テーブルや椅子の配置を簡易的に整え、ホログラムディスプレイのチェックを行っていた。
「そろそろ来るはずよね」
「ええ、そのはず。……カイ様も、もう少し落ち着いてくださいな」
「ああ、分かってる……」
キャロルが落ち着きなくテーブルの端に腰かけながら周囲を見回す。
フローラは静かに頷き、端末の時刻を確かめつつ待機している。
その一方で、カイは部屋の入口近くで腕を組み、やはり落ち着かない面持ちのまま廊下の方向へ意識を向けていた。
戦闘の準備や傭兵団との交渉など、やるべきことは山積みだが、まずは昨日連絡を済ませた人物との合流が何よりも大事だ。
やがて、扉を軽い調子で叩く音が響くと、カイは咳払いを一つして入室を促す。
電磁錠が小さな起動音を立てて静かに扉が開き、その先に姿を見せたのはヴィンセントだった。
ヴィンセントは相変わらず鋭い雰囲気を保ちつつも、長い移動の疲労を感じさせない表情でカイに軽く顎を引いて挨拶する。
「よう、久しぶりだなカイ。急な呼び出しには驚いたが、面白そうな話だったからな。来てやったぜ」
「その点については申し訳ない。何しろこっちも急な展開だったもので、他に頼る人も居なかったんだよ」
カイは胸中の緊張を紛らわすように小さく息を吐き、続けて彼の背後に気配があるのに気づいた。
ヴィンセントもそれを察しているらしく、廊下へ一度振り返ると軽く手招きをする。
「……入ってこい、クラリス」
声をかけられて現れたのは、以前とはまるで別人かと思えるほど健康的になったクラリスだった。
小柄な体をそっと揺らすようにしてドアの奥から顔を覗かせる彼女は、かつてのやつれた姿が嘘のように肌艶がよく、穏やかに微笑む気配を漂わせている。
少しだけ緊張を帯びているのか、頬をわずかに赤らめながら室内の様子をうかがった。
「……お、お久しぶりです……カイ様。それに……フローラお姉様、キャロルちゃん」
「ふふ、もうすっかり元気になったようねクラリス。やはり、ハンドラーを得たことで一気に回復が進んだようですわね」
「元気そうでなにより、クラリス。もうすっかり良くなってるみたいじゃない」
フローラとキャロルが連れ立って声を掛けると、クラリスは控えめに身を縮めながらも、はにかむような笑みで返す。
しっかり声を出した挨拶は聞こえなかったが、それでも以前からは想像もつかないほど回復しているのは明らかだった。
「さて立ち話もなんだし、入ってくれ。今回呼び出した件について早速説明するよ」
カイはテーブルの方を手で示し、ヴィンセントとクラリスを席へ促す。
昨日の連絡の際、ざっくりとした経緯については伝えていたが、実際こうして顔を合わせるのはまた別の緊張感が伴う。
「ああ、頼む。お前から送られた内容では、ざっくりとし過ぎて上手く呑み込めてないんだ。改めて状況を整理したい」
ヴィンセントが軽く冗談めかして肩をすくめると、カイは苦笑いを浮かべつつも、テーブル越しにホログラム端末を操作する。
すぐさまシューマッハー伯爵星系の簡単な地図が空間に投影される。そこに並んで浮かぶのはラング、ウィン、そしてクルト伯爵の情報だ。
カイはホログラム端末を操作しながらも、今回の事件のあらましについてヴィンセントとクラリスに語り始めた。
始まりはレオン・フォスターと共に採掘に成功したエクリプス・オパールの欠片が強奪されたのを端に発する。
それを追って連邦領を飛び出し、帝国領土内での活動を始めたカイたちは、ヴァルデック侯爵の手を借りてその手がかりをついに掴む。
容疑者はクルト・フォン・シューマッハー伯爵。
彼について調査を進めていくと、密猟した異星生物を中心に取り扱う動物園との関わりと、セイレーンと呼ばれる人工生命体が浮かび上がった。
セイレーンは上半身が女性の半身半漁の人工生命体で、その美しい見た目から密かな人気を博し、動物園は一部の重要な相手にのみこのセイレーンを販売していた。
そして、このセイレーンの製造を一挙に担っていたのがクルト伯爵ということが判明する。
これについて更なる調査を進めた所、ついにエクリプス・オパールの存在と、このセイレーンにまつわる壮大な計画が判明した。
――ここに至るまでの経緯をカイが噛み砕きながら話し終えると、室内には一瞬の静寂が落ちた。
ホログラム上の星系地図や伯爵の肖像がゆらめき、傍らには動物園やセイレーンに関わる各種ファイルが淡く浮かび上がっている。
ヴィンセントはテーブルに片肘をつきながら、拡大表示された伯爵家の紋章データを見つめ、思案深げな表情を浮かべた。
クラリスも隣でその青みがかったホログラムに視線を吸い寄せられ、わずかに身を縮めている。
「エクリプス・オパールを手にしたラングは、安定性の高い第3世代型バイオロイドと脳転写技術による需要人物との入れ替え計画を画策している。この計画が軌道に乗る前にエクリプス・オパールの奪還と、ラング、ウィン、クルト伯爵の主要人物を捕らえなければならない」
カイは言葉を切り、ヴィンセントの反応を窺う。
ヴィンセントは腕を組んだままスクリーンを睨むように眺め、クラリスが不安げな表情でそれを見つめていた。
「クルト伯爵が実行犯としてエクリプス・オパールを手に入れ、ラングとウィンがそれを利用しようとしています。キャロルの潜入調査の結果、伯爵が保有する基地施設の地下ではいつでも本格的な大量生産が可能なプラントが存在することも確認出来ています。もしこれが稼働すれば、一挙に大量の複製体が生み出され、それはやがて星域全体を取り込む形で彼らの手勢が大きくなっていく可能性が高いですわ」
フローラは落ち着いた声で説明しつつも、ドッペルゲンガー計画の脅威について二人に話していく。
それを聞いて、クラリスが小さく目を伏せた。
彼女は過去の経験から、再び姉妹達が生み出され、戦争の道具と化すことに複雑な思いを抱いているのだろう。
「なるほど……だから、お前たちは計画の要であるエクリプス・オパールの奪還のため、伯爵星系へ攻め込もうってのか。理由は分かったが……いや、無茶だろう?」
ヴィンセントがそう言葉を切ったまま首を傾げて見せる。
カイは軽く目を伏せ、ヴィンセントが抱く疑念を痛いほど察していた。
たしかに、相手は一国の主ともいえる星系統治者。たった数人でどうにかなる相手ではないようにも思えた。
「まあ、無理があると思うよな。……ただ、実際シューマッハー伯爵星系の防衛戦力に関しては重大な欠点が存在するんだ」
カイがおだやかな口調で切り出した。
ホログラム端末の投影画面には、改めてシューマッハー伯爵星系の外郭図が映し出され、赤いラインで防衛体制を示すデータが表示されている。
「欠点ねえ……星系一つを牛耳るお貴族様に、そう簡単に突っ込めるような穴があるのか?」
「それが、実の所あるのよね」
「シューマッハー伯爵星系ならではのお家事情、これが今回の突破口となりますわ」
ヴィンセントの眉間にわずかな皺が寄せられ、クラリスも隣で心配そうに視線を巡らせている。
そんな二人に、カイに代わってフローラが相槌を打つように頷いて答える。
「まず、シューマッハー伯爵星系には他星系に見られる大規模な自衛戦力――星系防衛隊が存在しません。これは隣接国境からも離れており、一般的な立ち入りも封鎖している為、あまり強固な守りを要していないのが理由となります。だからこそ、この星系に常備されている機動戦力も非常に小規模になっていますわ」
フローラは言葉を継いで、端末の画面を指し示した。
その箇所には“ヴェヒターの瞳”という名の要塞が描かれ、その周囲を遊弋する艦隊編成のメモが併記されている。
「強固な要塞として名高いヴェヒターの瞳が首都星防衛の要として存在しており、そこに駐留している艦隊がシューマッハー伯爵星系の唯一の機動戦力です。この伯爵家は代々帝国軍と深い付き合いを持っていて、その関係で星域統合艦隊の補給整備を請け負っております。この大規模艦隊の定期的な立ち寄りが行われるため、星系自体には大がかりな守備兵力を必要としていないというのも理由ですわ」
フローラが画面を軽くスライドさせると、“整備補給巡航”という文字がいくつも並ぶ資料が映し出される。
ここには星域統合艦隊が頻繁に訪れ、補給や点検を行うスケジュールの断片が書かれていた。
他星系よりも遥かに高頻度かつ定期的に大規模艦隊がやってくることで海賊などが寄り付かず、伯爵星系内部に大規模な防衛隊を配備する意味があまりなかったというわけだ。
「こうした事情から、伯爵星系には常備する戦力がほとんど存在しません。ヴェヒターの瞳に駐留する少数戦力――ヴェヒター艦隊のみ。私たちが狙うべきは、そこだけとなります」
「つまり、誰かさんが艦隊を抑えつけ、その間に私たちが惑星降下をして奪還作戦を進められるってわけ」
フローラが端的にまとめると、ヴィンセントは真剣な眼差しで頷いてみせる。
クラリスは相変わらず緊張の面持ちだが、どこか安堵も混じったように息をついた。どうやら、星系全てを相手取るわけではないと分かり、多少気持ちが軽くなったのかもしれない。
「相手方の戦力分析が済んでいるのは理解した。だが、それだけで攻め込めるとは思えないな。小規模とは言え、相手は正規軍レベルの艦艇が揃っている。正面戦闘では言うに及ばず、かく乱するにしても人手が足りていないぞ」
「もちろん、無謀だと思うかもしれない。けれど、その艦隊そのものにも問題があるんだ」
カイがそう口にした直後、部屋に張り詰めていた空気がわずかに緩んだ。
だが同時に、相手の機動艦隊がいかに小規模とはいえ、一筋縄ではいかないことは明白だった。
フローラとキャロルも小さく頷き合いながら、ホログラム端末の表示を切り替える。そこにはヴェヒター艦隊の具体的な編成図と旗艦ヴェヒターシルトのスペックが浮かび上がっている。
「ヴェヒター艦隊は、旗艦として700m級の重巡洋艦ヴェヒターシルトを中心に、駆逐艦3隻とフリゲート艦10隻という構成になっている。守護する軍備としては心許ない規模だけど、そのぶん徹底した少数精鋭主義が取られているのが特徴だ」
カイの説明に合わせてフローラが端末の操作を続けると、艦ごとの基本情報が行をなすように連なった。
標準的な帝国製駆逐艦やフリゲートの搭載兵装に混じり、ヴェヒターシルトのみが突出して複数の重火器や高度なシールドシステムを備えているのが一目で分かる。
カイが画面を指で拡大すると、AI制御に関する項目が強調表示されていた。
「その少数精鋭は何も艦隊規模だけじゃなくて、割り振られている人員も実の所少数という特徴もある。これは軍と関わり合いが深い伯爵星系ならではの理由で、大半をAI運用に頼った試験艦隊という性質もあるんだ」
そこには帝国軍と連邦軍の艦艇運用体制の違いを示す図解が載せられていた。
連邦は人口が少ないが故に、早くからソフトウェア面の開発に注力することで高精度のAIシステムを構築しており、最小限の人員でも複雑な運用が可能になっている。
一方で帝国は多数の人的資源を背景とした徹底的なハードウェア強化の路線を採用し、今までは豊富な人手で艦を制御するのが一般的だった。
その結果、帝国はAI制御分野で後れを取っており、近年になって連邦を倣う形で少数精鋭の艦運用を試行し始めている。
軍との関わりが深いシューマッハー伯爵星系は、その実験場のような役割を持たされることが多く、今回のヴェヒター艦隊もまさに“試験艦隊”という性質を帯びていた。
人員を極端に絞り込んだ状態でAI管理を取り入れ、作戦遂行の効率を図る──その方針がはまれば、帝国全体の運用に大きな変革がもたらされる可能性もある。
つまり、艦数が少ないだけでなく、艦艇一隻あたりの乗員数も著しく限定されているのがヴェヒター艦隊の実情だった。
人海戦術が当たり前の帝国軍からすれば非常に珍しいスタイルであり、試験運用という事情がなければ実現できない形態と言える。
「だからこそ、このAI管理を一挙に担っている旗艦を失えば、各艦は個別で戦術判断することになる。貧弱なAIと少数の人員だけでね。つまり、艦隊全体が機能不全に陥る弱点が生まれるんだ。この事実が攻撃側――俺たちにとって“唯一の突破口”となり得る」
「なるほど……旗艦だけを徹底的に叩いて、一時的に艦隊を麻痺させようというんだな」
「……でも、そう簡単に行かないと思う……」
カイの説明にヴィンセントが腑に落ちたように頷く。
同時に隣のクラリスが少し緊張気味に小さな声を漏らした。
それに対してカイがテーブルに両手をついて前のめりになるように言葉を足した。
「この集中攻撃は、俺たちが担当する。オベリスクとナイトフォール、それに白鯨号を最大限活用して旗艦を叩く。ただ、それを成功させるには、ほかの艦艇を抑えて陽動してもらう必要がある。それを引き受けて欲しいのが、ヴィンセント……アンタと、これから雇う傭兵団だ」
「ほう、傭兵団と契約するのか……それなら話は少し変わって来るな」
カイは素早く端末を数回タップし、今度は別の画面に切り替わった。
そこには帝国で活動する無数の傭兵団リストの一部が表示されている。
「実際問題として、手が足りない自覚はしているよ。旗艦を叩くだけでも大変なのに、ほかの艦の攻撃まで全部受けている余裕はない。だから、傭兵団を雇って艦隊の陽動に回す。もちろん、リスクも高いから、それなりの報酬を提示することになるが……」
カイの声には抑えきれない焦燥が滲んでいた。
テーブル中央のホログラム端末には、ヴェヒター艦隊の編成図と帝国の紋章が幾重にも重なって映し出されている。
フローラとキャロルはその表情を斜めから窺いつつ、彼の言葉に静かに耳を傾けた。
ヴィンセントは短く息をつきながら、スクリーンに浮かぶ旗艦ヴェヒターシルトのスペックに目をやる。
旗艦を沈黙させれば艦隊の指揮系統が崩壊するとはいえ、小型巡洋母艦といくつかの航宙艦だけでは荷が重い。
一方で、傭兵団と手を組むなら話は変わってくる。相手が少数精鋭であろうとも、こちらも数を補えるのであれば可能性は広がるはずだ。
「陽動を含めて大規模な戦闘に持ち込むというわけか。作戦としては理にかなっている気はするが、報酬はどうなんだ? いくらお前の頼みでも、ただで引き受けるわけにもいかないぞ?」
ヴィンセントの声には、金銭面での条件をはっきりさせたいという厳かな意志がこもっていた。
カイはその問いを予期していたのか、端末の画面を切り替え、スター・バザールのロゴを含んだ契約書をホログラムに浮かび上がらせる。
「安心してくれ。俺も生半可な額は提示しないよ。結論から言うと……100億クレジットだ。まあ……今の俺の手元にそんな大金はないんだけども。だけれど出所はスター・バザールで、この奪還作戦が完了すれば問題なく支払われる」
テーブルに視線を落としていたクラリスが、驚いたように小さく息をのむ。
まるで桁外れの金額が宙を舞っているかのような感覚に戸惑っているのだろう。
ヴィンセントも言葉を失って一瞬黙り込むが、すぐに端末に映るスター・バザールのロゴに目をやり、納得したように唇を引き結んだ。
「ああ、そういやスター・バザールに競売に掛けて盗まれたんだったな。その落札額の一部を報酬に当てるって話か……。100億という数字は尋常じゃないが、まあ今回の危険に見合う額とも言えるな」
ヴィンセントはそう言いながら端末の表示を確かめる。
カイは彼の視線を受け止めつつ、協力を得るための本気度を伝えようとするかのように言葉を足した。
「星系を牛耳る相手に踏み込むんだ。作戦はどうしたって綱渡りになる。俺自身も命を張るし、ここまで付き合ってもらうなら、それくらいの提示をしないと不公平だろう。もちろん、作戦が失敗すれば手に入らないけど、それは俺自身も同じリスクを背負ってる」
「分かった。その額なら十分だ。……俺はこの話、乗らせてもらう」
ヴィンセントの決断を聞き、カイは大きく息を吐いてホログラムをオフにする。
フローラとキャロルは互いに目を合わせ、ほっとしたように微笑んだ。
クラリスは緊張の糸が切れたように小さく肩を落とし、ささやかな笑みを見せる。
これで戦力の不安を幾分かを補う見通しが立ち、さらに傭兵団との契約を済ませれば無謀の度合いはだいぶ減るだろうという期待が高まる。
「助かるよ、ヴィンセント。そっちが協力してくれるだけで、これからの段取りがずいぶん変わる」
カイはホログラムをオフにし、端末を軽く閉じた。
ヴィンセントは肩をすくめつつもわずかに笑みを浮かべ、隣のクラリスは小さく安堵の息をついている。
フローラとキャロルがテーブルの周りを片づけているうち、部屋の重苦しかった空気が少しずつ解けていった。
「人手不足が一番の懸念だったけれど、これで作戦の核は固まりました。あとは傭兵団との交渉と、艦の整備くらいかしら」
フローラがそう言いながらメモをまとめると、キャロルが端末を片手に傭兵団を紹介してくれそうな場所については調査済みと付け加えて頷いた。
クラリスは少し緊張した面持ちのままカイを見上げ、唇を微かに開く。
「……私も……頑張ります」
その控えめな声を耳にしたカイは、まぶしそうに笑みを返した。
ヴィンセントはそれを横目に見てから、カイへと視線を戻す。
「2日後の作戦決行か。それじゃ、その間に俺の艦も整備しておく。勿論、これはそっち持ちなんだろう?」
「勿論。ただし、不要だと判断したら自腹になるけどな」
そんな冗談交じりの彼の言葉に、カイは笑って頷き、フローラとキャロルもそろって微笑を返した。
つい先ほどまで追い詰められた気持ちだったが、ひとまず協力者が増えたことで不可能が可能へ近づくように感じられる。
その一方で、実際に決行する作戦の危うさは変わらないため、油断は禁物だ。
カイは微笑を浮かべて仲間たちに視線を向けたが、その瞳の奥には、もうすぐ訪れる激戦への決意が揺らめいていた。