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入場

ダンジョンに行って体調が良くなってそれが持続的になるのであればもちろんバッティングセンターにも寄りたい


病気のせいでしばらく球を打つことが出来ずに少しストレスも溜まっている、バットを振るって球を弾け飛ばす感覚が春希は何物にも負けない心地よさを感じている


少し危ない性癖かもしれないが誰にも迷惑を掛けることはない、それが物であれ人であれに向かっての破壊衝動であれば犯罪者まっしぐらだが、健全なスポーツ活動であれば問題はない


持参品はバットとスマホと財布それと距離の検証の為の巻尺に決まった。


ダンジョンに着くと報道された初日にあれだけの人が居たのに既に誰も居ない、別に真夜中ではなく昼間の時間でもだ、これなら心置きなく検証をすすめることができる。


まず最初は"距離"からだ、入口近くまで行き呼吸を確かめる


「うん、楽になってる」


前回来た時と同じように呼吸が楽にできるようになっている、それを確かめてから段々と距離を取ってみる、100メートル、200メートル、300メートル、ここまではなんの異変もない、500メートルを過ぎた辺りから息苦しさを感じてきた


「多分500でリミットだな」


距離の検証はこんなものだ、次は時間の検証に移る、まずは前回と同じようにダンジョンの近くに30分ほど居てから500メートル離れた場所に行ってみる。


長い時間居た方が影響を受けるのであれば500メートル離れた場所でも苦しくなることはないはずだ


ただこの方法は余り意味がなく、30分も居たにも関わらず500メートルの距離では矢張り苦しくなる、その後1時間でも試してみても結果は同じだった。


「うーん、時間は影響しなさそうだな、じゃあ最後の検証に入るか、実はこれが1番楽しみにしていたんだよな」


誰もが入ることができなかった為に調査もできず、その為立ち入り禁止の看板も立ってはいなかった、洞穴があった場所は元々がなんの場所かは不明だがただの空き地になっていた。


川越市はそんなに田舎ではないのだが、この洞穴の周辺に関してだけは妙に人気がないのが少し妙なところではあるが、春希は自分の病気のことしか考えて居なかった為そこまで深くは考えて居なかった


実は人が居ないのは理由があったのだが、それは後日わかることだった


「じゃあ早速入ってみますか」


春希が洞穴の下に降りて行くと目視でわかるような緑の膜のようなものがあった、みんながこの膜に遮断されてその先に進めなくなっていたのは知ってはいたが、直接にこの膜に触るのは憚られた


「丁度バットあるし、これでちょっとやってみようかな」


愛用のケースからバットを取り出すと膜を押してみた(ムニュ)とした感覚はしたが膜の向こうにバットが通ることはなかった


「まぁバットが破壊されないってことはそこまで危険もないか」


特に根拠もなにもないが自分なりの論法で直接手で触ってみることにしたが、遮断されることを覚悟して少し力を入れて掌を膜に向かわせたが、そのまますり抜け膜の向こう側によろけてしまった、転びそうになるのをギリギリで踏ん張りなんとか尻餅をつくのは回避できたが、頭の中はハテナでいっぱいだ


「誰も中に入れなかったってニュースで言ってたけど、なんて入れたの?もしかして俺って選ばれた人間なのか」


元々選民意識があったわけでもない春希だがこの時ばかりはそう思ってしまった、元々周りの人間の中で自分だけが奇病に罹り、ある種コンプレックスを感じてしまった結果だ


厨二廟罹患者に元々の人気者が居ない理屈と似ている。


折角誰にも入れなかったダンジョン、記録をしてみんなに見せびらかせて自慢するネタにしようとスマホの動画モードを起動した。


別に動画配信をして人気者になろうまでは考えてなかったが、今までの鬱屈とした想いを払拭できるかもとは考えた。


スマホを外に向けてダンジョン(仮)の奥に向かって歩き出した、特に自分で懐中電灯等の明かりを用意してなかったが、なかはほんのりと明るかった、壁と床を見ると緑の苔のような物が光を放っていた。


ダンジョンの中に入ることが可能だとは思ってなかったせいで明かりまでは用意してなかったがこれは嬉しい誤算である


床にも苔が生えてるせいで滑るのかと思ったが、普通の苔とは違い水分を帯びてない為ただ光って柔らかい物体だった


「これもしかして部屋で使ったら快適かも」


貧乏根性を発揮して苔をむしろうと思ったがびくともしなかった。


「窃盗はだめだよな」


スマホで証拠動画まで撮っておいて先程までの自分の行動は全く反省することはしなかった


そのまま後ろを振り返ることなく撮影しながら奥へと向かって歩き進んでいく春希。










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