記念展の準備
私の名前は大熊である。
以前に、町長をしていたが、現在は町長補佐として役場で働いている。
今日は「島開拓記念20周年」に向けた写真展の準備を南港図書館で行う。
「くまさん、この写真は必要かい?」
この眼鏡をかけて白髪の人物は博士である。
本名は誰も知らず、あだ名で呼ばれている。
役場の町長をしており、本土の王国行政から派遣された。
彼は、無能・・・・・・。
いや、彼は非常に孤独な人間である。
そのため、仕事がよく進まないのだろう・・・・・・。
「ねえ、この写真はなあに?」
わざとらしく、猫バーは田んぼに落ちて泥だらけになっている私の写った写真を見せる。
彼女は、島の旅館の経営者であり、島の裏の支配者だ。
これは本当の話であり、真実を知ろうとした者は、何人も消されたらしい・・・・・・。
「やめておくれよ・・・・・・。お笑い写真展にでも出してくれ!!」
私は恥ずかしかった。
猫バーはニンマリと笑みを浮かべる。
こうして、裏の支配者は、人の弱みを握るのだ。
そして、この写真展の発案者は、猫バーの孫の猫山満月である。
「この写真から考えられることは、くまさんが田植えをしていて、突然、写真を撮ると言われて不自然なポーズで止まったのねえ」
猫山満月は、得意の推理を披露する。
「素晴らしいね。ちなみに、変なポーズを指示したのが数学
バカの渋川だよ!!」
私は渋川を見る。
「いや、数学的に素晴らしくて、美しいポーズを・・・・・・」
「この数学バカめ!!」
私は渋川に厳しく指摘する。
彼は数学者で頭が良いのだが・・・・・・。
バカ・・・・・・。
整理している中で、不思議な写真を1枚見つけた。
そう思った理由は「午後のあいさつ第20回~特別編」とだけ書かれており、なつみちゃんのおじいさんが写っていた。
「これ記憶あるか?」
私は猫バーにきく。
猫バー君の答え!!
「これは『写真』です。まさか、今まで見たことがないの?」
博士君の答え!!
「そうやって、脱線するから進まないんだ!!」
渋川君の答え!!
「オイラーの公式」
正解者は?
「いるわけないだろう!!」
私はひとりツッコミをする。
今度は猫バーが真面目に答える。
「これは、桜田公民館ができた時に記念して行った会ね」
その答えに私は「おおお!!」と声をあげる。
しかし、本当であろうか。
私が納得できない理由は、記念すべき会であるはずなのに、写真に覚えがないのだ・・・・・・。
私の顔を見て、猫山満月の友人のチヅルはみんなにきく。
「なんで、みんなシンミリとした顔をしているのかな?」
この記念すべき会を覚えていないということは、小規模であったか、もしくは、何らかのアクシデントが起こった会でではないだろうか。
そして、チヅルは何かを発見したかのように声をあげる。
「そういえば、司会がアナウンサーではないね」
今はここにはいないが、普段は王国放送から派遣されたゆうきアナウンサーが司会進行を行う。
「若い人は知らないと思うが、なつみちゃんのおじいさんだよ」
私が若い学生たちに説明すると、みんなが驚く。
「えっ、なつみちゃんのおじいさん?」
「そうだ」
この話に、なつみちゃんが反応する。
「おじいさんが? まったく、活動範囲が広いんだから!!」
なつみちゃんは恥ずかしそうに話す。
さらに、気になる点は内容だ。
写真にはタイトルしか書いておらず、本当に記念すべき内容なら原稿が近くにあってもよいだろう。
そう思って、私は猫バーにきく。
「おい、猫バー。この時の原稿をもっているか?」
「えっ? その時、私は裏仕事・・・・・・。いや、別の仕事があって参加していないかも」
「そうか・・・・・・」
ちなみ、裏仕事とは洗濯のことであるので勘違いしないでほしい。
続く・・・・・・。