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薔薇の名前   作者: 山口三


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報告2

 

 その冬の休暇にもウィルは帰ってきた。


「今年は雪が多いなあ」


 コートに掛かった雪を振り払いながら玄関ホールにウィルが現れた。


「ウィル、お帰りなさい! 暖かいお茶を入れるわ、客間を温めてあるから入って」


 階段を下りてきたフロウは暖かそうなストールを纏っていた。いつもに増して美しく輝いて見える。

 フロウは幸せなんだな、何も聞かなくても全身から幸せがにじみ出ているようだった。



 客間で熱いお茶をすすっているとレナードが入ってきた。


「お帰り、外は大雪みたいだね」


「兄さん、変わりない?」 


 レナードも座って自分にお茶を注いだ。


「家の事は変わりないよ、領地も特に大きな変化はないね。ただ今年は大雪だから春の雪解けで首都へ行く1本道の橋がね、心配なくらいかな」


「あの川は広いけど浅いんだったね。橋が流されないといいけど」


「あとは…グリーンレイクにある園芸社が俺のバラを販売してくれることになって。そこへ行ってきた」


「へぇ~凄いじゃない。ベンも喜んでるだろうね」


「ああ、とても喜んでくれたよ。…グリーンレイクへはフロウと一緒に行ってきたんだ」


「うん」ウィルはそのまま黙って話を促した。


「フロウにプロポーズした」


 ああ、だからあんなにフロウは輝いていたんだな。ウィルはフッと笑った。


「そうか。式はいつ?」


「来春か、夏の初め頃、と思ってる」


「兄さん、そんなに焦らなくても。俺はもうフロウに横恋慕したりしないから大丈夫だよ」


 ウィルはクスクスと笑っていた。


「なっ、焦ってるわけじゃないさ」レンはむきになって言った。


「冗談、冗談だって。二人を祝福するよ」


 そうだった、ウィルはいつもこうだった。子供の頃からよく冗談を言ってみんなを笑わせていた。


 ウィルにもいつか素敵な女性が現れて幸せになってほしい。レナードは心からそう思った。





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