ふたりの休暇3
今夜はホテルで夕食を取ることにした。
「今日も沢山歩いたね、お腹がぺこぺこだ」
「明日は家に帰るのね。お土産、みんな喜んでくれるかしら?」
「フロウが一所懸命に選んだんだ、大丈夫だよ。気に入らないって言われたら違うものを買いにまた来よう」
「それ、いいわね! 誰か気に入らないって言ってくれないかしら」
部屋に戻りながらレナードが言った。
「プロポーズしようと思ってフロウと一緒に来たんだけど、時間が足りなくて婚約指輪を用意できなかったんだ。本当はプロポーズと一緒に渡したかったんだけど」
「フフ、兄さんってロマンチストだったのね。私、その気持ちが何より嬉しいわ」
「次のお楽しみにしててくれ」
俺はロマンチストだったのかな…少し照れたレナードの顔が赤かったのはワインのせいだけではないだろう。
今夜もレナードが先にベッドへ入った。
落ち着け、落ち着け。変に意識するな。昨日と変わりなく、すぐ眠ってしまえばいい。
「兄さん、寝たの? …おやすみなさい」
フロウは小さな声で囁いてから横になった。
今日はフロウに触れるのもはばかられた。キスしたら止まらなくなってしまいそうだった。フロウもすぐ寝てくれたら助かるが…。
レナードの期待通りしばらくすると隣の枕から安らかな寝息が聞こえてきた。レナードも安堵しつつ眠りについた…。
眠りについてからそんなに時間は経っていなかった。フロウのうなされる声でレナードは目を覚ました。
「フロウ、フロウ、大丈夫か?」
レナードの声にフロウが反応した。
「は…うぅ…はぁはぁ…に、兄さん」
「大丈夫か? すごくうなされていたぞ、怖い夢を見たのか?」
フロウが半身を起こすと涙が頬に落ちるのを感じた。
「わ、私、泣いていたのね。とても恐ろしい夢を見ていたみたい」
レナードも体を起こすとフロウが抱き着いてきた。
「怖かった。お父様たちを亡くした時みたいに悲しくて、恐ろしい夢だった」
フロウはわずかに震えていた。レナードもフロウを抱きしめた。
「もう大丈夫だ。ただの夢だよ、俺がそばにいるから安心して」
「キスして、兄さん…」
レナードはフロウに応えた。そっとキスして安心させようと思っていたが、今夜はおかしかった。
激しく求めあうキスに突然レナードはフロウの体を離した。
「あ…だめだ、フロウ。このままだと俺は…自分を止められなくなってしまう」
「止められなくなってもいいわ…」
暗闇に目が慣れてフロウの潤んだ瞳が見えた。
レナードのキスはフロウの唇から首筋へと移動して行った…。
「おはよう、兄さん」
レナードが目を開けると腕の中でフロウが恥ずかしそうに微笑んでいた。自分の肌に直接フロウの温もりを感じた。
「はっ」そうだ…昨日……。
「ちょっと寝過ごしちゃったみたい」
朝の光…ではなく昼近い光にフロウの髪が輝いていた。
「おはよう、フロウ」
これ以上は無いほどの幸福感が溢れてきた。愛する人とひとつになった、恍惚としている自分がいた。その気分のまま愛する天使にキスをした。
「その…昨日は、大丈夫だった? 体は‥平気?」
「大丈夫、だと思うわ……兄さん、ダメ。思い出したら、わたし恥ずかしい!」
フロウは顔を真っ赤にして背中を向けてしまった。その背中にキスしながら
「ねぇ、フロウ思ったんだけど。兄さんっていうのをやめて名前で呼んで欲しいな」
フロウはすぐ振り向いた。
「えっ…そうよね、レン…でもすぐ兄さんって言ってしまいそう」
「言った時のペナルティーを考えておくよ」
レンは楽しそうに笑った。
「に、…レンのいじわる! いいわ! 私だって…」
フロウは毛布を全部体に巻き付けながら起き上がりバスルームに駆け込んだ。
掛けていた物を全部剝ぎ取られレナードの裸体が露わになった。
「わっ、うわぁ」
バスルームにレナードの情けない声が流れてきた。




