表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
薔薇の名前   作者: 山口三


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

49/74

地震


 なんとか冷静さを保ちながら商談を終えた。


 夕食にフロウは降りてこなかった。体調が悪いので休んでいるとジョージが伝えてくれた。自分も食事が喉を通らなかった。


 夜気に当たりながら考えをまとめたかったが雨が降り出したので自室をウロウロと歩きながら考えた。



 仮面舞踏会の時から知っていたとしよう、俺を驚かそうとイタズラ半分だったのかもしれない。仮面の買い物をロブに頼んだから、そこから俺が行くことを知ったのだろう。


 そういえばお互いに名前も尋ねなかったな。

 2度目の約束をした時点で普通は聞くだろう。聞かなかったのは俺だと分かっていたからか。なぜそんな簡単な事に気づかなかったのだろう。


 では2回目のパーティーの時どうして俺のキスに応えた?


 ほのかに希望が胸に芽生えるのを感じた。

 ウィルとどうなっているのかは分からないが、俺を兄として以上に思ってくれているのではないか?


 確かめなければ。フロウの気持ちを知りたい。俺の勘違いならそれでいい。

 キスの事は許してもらえないかもしれないが、きちんと謝ろう。


 21時か…フロウはまだ起きているだろうか…


 フロウの部屋に向かう途中、地鳴りがしたと思ったら突然大きな縦揺れが襲った。

 階下では女性の短い悲鳴や物が割れる音がした。


 レナードは廊下の柱に摑まり、揺れが収まってからすぐ階下に降りて行った。侍女やメイド達が慌てふためいていた。


「ケガした者はいないか?」


 一番近くに居たメイドに尋ねた。


「ここにはおりません、キッチンで何か割れたようなので見てまいります」

 

 行きかけるメイドを制止して


「俺が行こう、君はフロウの様子を見て来てくれ」


 今フロウの様子を見に行くのは少し気まずい気がして自分はキッチンに向かった。



 キッチンは混乱していた。割れた食器や小麦粉が床に散らばり、お茶の葉がテーブルに撒き散らされていた。


「大丈夫か?けが人は?」


 レナードは少し大きな声を出して注意を引き寄せた。


 マリが進み出てきた。


「レナード様、ここは大丈夫です。ジョージさんが邸内を見回っておられます」


「分かった、ジョージと合流しよう。まだ揺れるかもしれないから倒れてきそうな物の近くには寄らないように」


 キッチンを出るとフロウの様子を見に行かせたメイドが戻ってきた。


「フロウ様はお変わりございません。お部屋の花瓶が倒れて水がこぼれていましたが、割れてはいませんでしたのでお怪我はございません」


「そうか…よかった、ありがとう」


 安心したところでジョージを探しに行った。




 その後ジョージとロブと手分けして邸内を見て回ったが大きな被害はなかった。


 置物や花瓶が割れたりした程度で、時間帯も夜半だったため火も使っておらず火災もおきなかった。


 けが人は、慌てたメイドが転んでひざを擦りむいた程度だった。


「雨も降っていることだし、外は明日明るくなってから見て回ることにしよう、今日はもう休もう。ジョージ、ロブご苦労様でした」


 広い邸内を歩き回り3人とも疲れ切っていた。


 自室のベッドに倒れこみ、地下のワインセラーが無事だったのは奇跡だなと考えているうちにいつの間にか眠ってしまっていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ