ある夏の午後
もう季節は夏だった。バラは3番花が色づいてきていた。一期咲きのバラは枝をグングン伸ばしている。
今日は池の近くにある東屋で午後のお茶をしていた。
最近ドレスの流行がガラっと変わったので夏のドレスを新調なさってください、とマリに言われカタログを眺めていたところだった。
レンはひと休みするためにジョージにお茶を頼もうとしていた。だが開け放った窓の外からいい風が入ってきた。夏の匂いのする風だ。
外に出ようとしている所でケイトと会った。
「池の東屋でフロウ様がお茶を取っておられます。ご一緒にいかがですか?」
ケイトの表情から他意は見られなかったが自分を気遣っているのは間違いなかった。
「行ってみるよ、俺の分のお茶を持ってきてくれ。よかったらケイトもどう?」
「私はもう少し後に頂くことにします、お気遣いありがとうございます」
レナードは東屋に向かった。その姿を見ながらケイトは考えていた。
ここの所フランシス様はずっと食欲がない。ボーっとして上の空の時が多い。本を読んで泣いていらっしゃることも何度かあった。これは絶対に恋煩いだわ。
舞踏会の後あたりからだと思うから、お相手はレナード様ではないかと思うのだが、レナード様のお話だとご結婚なさるのはウイリアム様と。
フランシス様と相思相愛なのはウィリアム様?
だけどそれがレナード様の早とちりなら? フランシス様もレナード様をお好きだというのが真実ではないだろうか。
それならなんとかしてお二人の仲を取り持って差し上げたい。でも確実ではないのに軽率なことはできないわ…。なんてもどかしいのかしら。
レナードが東屋に行ってみるとケイトの言う通りフロウがカタログを見ながらお茶を飲んでいた。レナードに気づくと嬉しそうにしながらフロウが手招いた。
「ここは涼しいわよ、兄さん」
「あーーいいね。今日は風がある分、気持ちがいいね。ドレスのカタログを見ていたのかい?」
「そうなの、私の夏のドレスはもう流行遅れなんですって」
フロウは笑って自分のドレスを見た。




