心強い友
それから何日か経った日にクロードから手紙が来た。
舞踏会で会えなかったから今度カイルと3人で外で食事でもしようとの誘いだった。
「俺たちお前を探したんだぞ、来てなかったのか?」
貴族がよく利用する静かなレストランでの昼食だった。
「いやぁ 俺もお前たちを探したんだけど、あまりの人の多さにすぐ諦めた」
フロウしか探さなかったとは言えないな…。
「確かに今回の舞踏会はいつもより多かったな」
主催家のカイルが認めた。
「カイルは婚約者と一緒だったんだよ、お前に紹介したかったんだとさ」
「おめでとう!婚約したのか!いつの間に…。3人の中ではカイルが一番先に結婚だな」
3人はそれぞれの飲み物で乾杯した。
「でも、レンもいるんだろう?大公家の孫娘だっけ?うちの妹は情報通だからな、色々聞こえて来てるぜ」
カイルにはウィルと同い年の妹がいる。
「あれは…俺も困っているんだ」
「またか」カイルとクロードの声が重なった。
レンは大体のあらましを話した。
「お前は…女運が良くないな。この間聞いた迷惑な縁談がそれだったのか」
クロードの第一声がこれだった。
「大公家かぁ、エリス以上にやっかいだな」
少し考え込んでいたクロードがパっと顔を上げてにやっと笑った。
「俺に心当たりがある」
「心当たり?何か解決策を思いついたのか?」
藁にも縋る思いとはこういうものを言うのだろう。
「俺が学園を卒業してから、方々を旅して歩いたのは話したよな?で、大陸の小国に滞在していた時にちょっとした縁からそこの王様と懇意にさせてもらってさ…」
クロードが滞在していたその小国には8人の王子がいて、6人が未婚で花嫁を探しているらしい。
小国とはいえ王子の花嫁なら大公家にとってもいい縁談になるだろう。
だから俺が一肌脱いでやるよ、というのがクロードの心当たりだった。
「実はさ、俺もそこのお姫様との結婚を勧められたんだよ。でもまだ結婚する気はなかったから断ったんだけど、せっかく懇意にしてもらったのに恩を仇で返すようで気が咎めてたところだったんだ」
「この縁談がうまくいけばクロードも俺も一挙両得って訳か」
「ま、そんなところだ。ハハハハ」
ダメもとでクロードに希望を託してみた。
アメリアなら王子に嫁ぐのは悪くないと考えるに違いない。しかもあの小国は観光地として有名でかなり裕福な国のはずだ。内心これはいけるかもしれないと心が躍った。




