仮面舞踏会2
踊りながら改めて見るフロウはとても美しかった。
仮面に合わせてドレスもオレンジだった。裾の方に行くに従って色が薄くなっていくオレンジのグラデーションだった。
胸元には黒と金色の刺繍が施してあり、グローブが同じ刺繍のデザインだった。
緑の瞳がブルネットをバックにいつもより深い色に見えた。
レンはフロウの瞳をじっと見つめてしまった。
「知らない方と踊るのは緊張しますね」
レンが無言で自分を見つめているので、先にフロウが話しかけた。
「ええ、緊張します、あなたも同じでよかった」
レンが緊張しているのは知らない相手だからではなかった。
フロウの美しさに見とれて言葉が出てこないだけだった。前に一緒に踊ったのは成人の時だ。あの時はこんなに緊張しなかったのに。
改めて見るフロウはもうすっかり大人だった。成人の時とは明らかに違う。
人混みとダンスのせいで会場はすごい熱気だった。二人はダンスの後、冷たい飲み物を手にテラスへ出て行った。
その頃には緊張も解けやっと普通に会話ができるようになり、カイルの学生時代の面白い話で盛り上がった。
カイルの友人はレナードだけではないからカイルの話題を出しても平気だろう。
その後2回、二人でダンスを踊った。
二人共ダンスがこんなに楽しいと思ったのは初めてだった。そうこうしているうちに花火の時間が迫ってきていた。
「お腹は空きませんか?」
「ええ、沢山踊ったから空いてきましたわ」
フロウはレンに言われてはじめて今日は何も食べていない事に気付いた。緊張して食べ物が喉を通らなかったのだ。
「では花火がよく見える部屋を知ってるんです、そこへ持って行って食べましょう」
カイルの家には何度も来たことがある。
ここの図書室は屋敷の裏側にあって、花火は屋敷の裏を流れる大きな川で打ち上げられる。
図書室のテラスは広く、確かテーブルとイスもあったはずだ。
軽くつまめる物を持ってテラスに出た。別の部屋からも繋がるテラスには先客のカップルがいたが、大きな柱に遮られてお互いは見えない。
1発目の花火が上がった。
近いせいでドーンと物凄い轟音が響いた。突然の音にフロウはびっくりして図書室とテラスの敷居につまづいてしまった。
前を歩いていたレンに頭突きを食らわす形に倒れこんだ。
倒れこんだが、レンのがっしりした背中のおかげで転ばずに済んだのだ。




