仮面舞踏会1
とうとうその日がやってきた。フロウは準備の為か昼前から出掛けていた。
仮面舞踏会は20時からだった。
レナードは15分頃には到着したがもう中は人でごった返していた。
クロードとカイルを探したが、人の多さと仮面を付けているせいで見つけられそうになかった。おまけに会場内はとても暗かった。
レナードは飲み物を取って入り口を見ていたがフロウらしき人が入ってくる様子がない。
もしかして俺より先に着いたのか。フロウの仮面もかなり顔を大きく覆うタイプだった。黒とオレンジ色の仮面だったな。緑色の瞳に映えるだろうな…。
そんな想像をしているとダンスの曲が流れだした。
後ろの方にいたカップルがダンスをしようと無理に人混みをかき分けたせいで何人かの人にぶつかっていた。ぶつかった人がまた隣の人にぶつかって
「痛っ」とか「きゃっ」という声が聞こえたがすぐ音楽に消されてしまった。
レナードもその被害を受けた。
斜め前にいた女性がぶつかってよろめいた拍子にレナードの靴を踏んだのだ。女性はすぐ振り向いて謝った。
「ごめんなさい、靴を踏んでしまいました」
黒とオレンジの仮面、フロウだった。こんな目の前にいたとは。入口の方ばかり気にしていたし、髪の色が違うので全然気づかなかった。
フロウもレナードと同じ頃に会場に入っていた。
レナードを探したかったが人混みでうまく身動きが取れなかった。
会場内は暗く見通しも悪い。それにアメリアと一緒に来ているかもしれない。
フロウの不安な気持ちとリンクするかのように壁際の明かりが揺れていた…。
兄さんは青で緑の縁取りの仮面。
兄さんにしては派手な色合いだわ、レナードの選んだ仮面を思い出してフロウは独りクスっと笑い、少しだけ気持ちが楽になった。
それにしてもすごい人だわ。仮面舞踏会には初めて参加したけれどこんなに人が集まるなんて知らかったわ。
主催者は兄さんの友達のカイルの家よね、兄さんはカイルと一緒にいるのかしら。でもどれがカイルかも分からないわ…。
ダンスの曲が始まるとほぼ同時に奥から人が出てきた。
カップルの男性の方と強くぶつかったフロウは後ろにいた人の靴を思いっきり踏んでしまった。謝ろうと振り返ると青と緑の仮面のレナードが立っていた…。
レナードは髪の色が違った。ウィルのような亜麻色になっていた。
これは仮面を知っていないと分からなかったかもしれない。着ている物も普段より少し派手だった。でもアメリアと一緒ではないようでフロウは内心ほっとした。
フロウも髪の色がブルネットだった。
いつものふんわりしたスタイルではなくストレートのポニーテールスタイルだった。口元にはホクロがひとつあった。ぱっと見ただけでは全く分からないな、レナードはそう思いつつフロウの謝罪に返した。
「平気ですよ。あなたこそ大丈夫ですか?ひどくぶつかったようですが」
「ええ、混んでますから仕方ないですね。私仮面舞踏会は初めてで、混雑に少しびっくりしました」
「今日は特に混んでいるようですよ、23時になると花火があがるそうですから。ところで…どなたかと待ち合わせですか?」
「いえ、一人なんですの」
フロウはそう言いながら少し恥ずかしくなってしまった。
(こういう舞踏会にはパートナーと来るのが普通なのかしら)
レンはフロウの様子を察知して言った。
「僕も一人ですよ。良かったら次の曲を一緒に踊って頂けませんか?」
「はい、ぜひ。今度は靴を踏まないように気を付けますわ」
二人は一緒に笑った。




