休暇の日々
フロウは自室でゆっくりお風呂に浸かっていた。
今日は久しぶりに楽しい夕食だったわ。トムって面白い人、私も兄さんも沢山笑った。それにしてもウィルは私に対して昔からあんなに過保護だったかしら?
アメリア嬢の一件からフロウはずっと気分が落ち込んでいた。
一見するとレンのアメリアに対する気持ちは分からなかったが、頻繁に二人で出かけているようだから私の前では恥ずかしくて彼女への気持ちを表現出来なかっただけかもしれない。
フロウはレンに対する自分の気持ちに気づいていた。
レンに微笑みかけられる度に胸が締め付けらるように苦しくて普段通りの自分でいられなくなった。でも兄さんが結婚するなら早くこの気持ちを整理しなくてはいけない。
この屋敷で仲睦まじい二人の姿を見て心を痛める前に。
その前に一度だけ妹としてでは無く、一人の女性として兄さんに向き合いたい。何か、何かいい方法はないかしら…。
ウィルは帰宅中ほとんどの時間をフロウと過ごした。
トムと3人で行動することも多かったが、トムがひとりになってもフロウが一人になることはあまりなかった。レンとトムが釣りに出掛けるとウィルとフロウは町へ買い物に出掛けたり音楽会へ行ったりした。
「今日の指揮者は若いのに物凄い気迫だったね」
音楽会の帰りにお茶をしている所だった。
「私もそう思ったわ、またこの方の指揮でオーケストラを聞きに行きたいわね」
「うん、行こう。次も俺と行こう! そうだ、これから宝石店に行こうよ」
ウィルはテーブルの上のフロウの手をぎゅっと握った。
「えっ、急にどうしたの? 何か買いたいものがあるの?」
「そうだよ、今日の記念に何か買おうよ」
普通の音楽会に来てお茶をしているだけなのに、何か特別なことがあったかしら?とフロウは思ったがウィルが楽しそうだし、理由はどうでもよかった。
「士官候補生の初休暇記念ね!」
「そうだよ!」




