大公家の孫娘
レナードは夕食の少し前に帰宅した。
夕食のテーブルに着いた彼は少し疲れて見えた。フロウはすぐにでも話を聞きたかったがなんとなく気まずい気がした。
兄さんのプライベートな事なのにうるさいと思われるかしら。でも兄さんが結婚したら私達は家族になるんだから関心があって当たり前よね…
フロウが何もしゃべらず黙々と食事をしているのを見て
「何か考え事かい?」レンが先に話しかけた。
「あっ、いえ、ええと、何でもないの。今日はピアノの練習に時間をかけてみたんだけれどどうしても同じ個所で躓いてしまって。原因は何か考えていたの」
咄嗟にフロウは頭の中とは全く関係のないことを言ってしまった。
他の事が何ひとつ手につかない位ならはっきり聞けばいいのに。でもその答えを聞くのが怖くもある。
本当に縁談で兄さんが結婚してしまうのだとしたら。そしてその縁談を兄さんが望んでいるとしたら。兄さんはその人と一緒に大切にしているバラ園を歩くの?
結局夕食の時には何も聞けず、また昼間のように不安な気持ちに悩まされながらフロウはベッドに入った。
レナードは疲れていた。
大公家への道のりが遠かったせいもあるがやはり気乗りしない縁談のせいだった。
アメリア嬢は美人ではあった。美人で大公の孫娘として大事にされ、何不自由なく育ってきて世間知らず。自分に自信があり、気が強い。
エリスに似ていると、会ってすぐ感じた。どうして俺はああいうタイプに好かれるんだ。一体どこのパーティーで会ったのか、こちらはまるで覚えていない。
帰り際顔を出してくれた大公閣下がこっそり
「孫の頼みを断れなく、強引に招待して申し訳ない。アメリアは気が強いが根は悪い子ではないからどうか付き合ってみてはくれまいか。それでも無理なようなら縁談を断ってくれて構わない」
と言ってくれたが、本当に構わないのだろうか…
今日の事はフロウには話せなかった。黙っているつもりじゃなかったのに話しそびれてしまった。俺に縁談が多数舞い込んでいるのはフロウも知っている。
実際に相手に会ったのは今回が初めてだが。
フロウは俺が結婚すると知ったらどう思うだろう。どうもこうもないな、笑顔で祝福してくれるだけだろう。
だけどフロウがウィルと結婚するとき俺は笑顔でいられるだろうか?




