ウィルの成人パーティー
それから3週間後ウィルの誕生日パーティーが開かれた。
「ウイリアム様ももう成人なんですね。お屋敷に来られた時はあんなに小さかったのに」メイドのマリはカーライル家で20年以上働いているベテランだ。
「レナード様と並ぶとウイリアム様のほうが背が高くなられたんだな。こうやって見るまで気づかなかった」
¥ロブとマリは10代の初めからこの屋敷で働いているので仲がいい。お互いに家族ぐるみの付き合いだ。
「ほんとねー私も気づかなかったわお二人とも立派になって。レナード様はもうすっかりカーライル家の当主として板についてきたわね。表情も青年というよりは大人の男性になった気がする」
「ウイリアム様は士官の道へ進まれるそうですね。」ケイトがロブに尋ねた。
「来年学園を卒業されると士官候補生となるそうです。1~2年後に近衛隊に正式配属されると聞きました」
3人が兄弟の成長について感想を述べあっていると玄関ホールから聞き慣れた声が聞こえてきた。
「こんにちはー今日の主人公はどこかしら~」
「カレン様、お帰りなさいませ。こちらは新しい侍女長のケイトさんです」
「お初にお目にかかります、ケイト・ロウと申します」
ロブに紹介されたケイトはカレンに差し出された手を握り返した。
「お話は伺っているわ、沢山の使用人をまとめるのは大変でしょうけど、よくやってくれているってレナードが話していたわ。当主が若くて驚いたでしょう?」
4人は広間に向かいながら和やかに話をした。
「はい、とても驚きました。ですがレナード様はとても立派にお務めだと思います」
ケイトの言葉は偽りでもお世辞でもなかった。若干22歳の若者だがほぼ完璧な仕事ぶりだ。
カーライル家の政務をこなしながら趣味の時間もきちんと取っていた。その趣味のバラに費やす時間がいい息抜きになっているのは間違いなかった。
広間に着くとケイトとロブは下がっていった。カレンは大勢の人で賑わっている広間を縫い、お目当てのウィルを見つけた。
「成人おめでとう!あら随分背が伸びたわね。立派な士官様になるわ、間違いないわね」
「叔母様もお変わりなくて何よりです。今日はお一人なんですね」
「ええ、あの人はどうしても外せない仕事があって。ごめんなさいね」
「大丈夫です、叔母さんのパワーは二人分ありますから」
「そうですよ、元気だけは誰にも負けません」カレンは胸を張って笑った。
「ところであなたのパートナーはどこなの?」
「俺はパートナーはいません。ダンスはフロウに頼んであります。叔母さんも俺と踊ってくれるでしょう?」
ちょっとイタズラっぽい眼差しでウィルは答えた。
「ええ、それはもちろんだけど。レナードといいあなたといい男女交際に興味が薄いのかしら。私は今度ここに呼ばれるのは誰かの結婚式だと期待しているのだけど」
去年のフロウの成人パーティーの時もウィルがパートナーの代理をしていたわね。ジョージからくる手紙の内容にもあまり社交活動の話は出てこなかったし。3人揃って何か訳でもあるのかしら・・・。
そうこうしているうちに1曲目が始まった。今日の主人公のウィルとフロウが初めに踊りだす。
「ウィルとは去年も踊ったけれど今年は何か感じが違うみたい」フロウは踊りながら言った。
「それはね、背が伸びたんだよ。俺も立派な大人になったんだ」得意げなウィル。
「自分で立派って言うのね」フロウが茶化しても
「うん、背が伸びただけじゃないさ。剣術も強いんだよ、フロウは僕が守ってあげるから安心して」
笑いながらもまじめな調子でウィルは言った。
「頼りにしてるわ!」フロウも笑い返した。
確かにウィルの背はとうにフロウを追い越して、腕も胸も逞しくダンスも力強い。屈託なく笑う顔だけが昔と変わらない。
姉弟の楽しそうなダンスに周囲の客たちも見とれていた。運動神経がいいウィルのダンスはとても軽やかだ。
「血の繋がりは無くてもとても仲がよろしい姉弟よね」
「小さいころから一緒に育ったからでしょうか?見ていて微笑ましいわ」そんな声が聞こえてきた。
ジョージは、今回も無事にパーティーが終わりそうでほっとしていた。そこまで盛大なパーティーではないが5年前の悲劇を乗り越えられたと思える、明るく楽しい空気が満ちていた。




