兄さんに対する気持ち
会議がお開きになったあとフロウは図書室に向かいながらさっきの話を思い返していた。
だけど結婚なんて今の自分には想像もできない。
尊敬できる人?楽しい人?ずっとそばに居たい人?なぜかふとレナードの顔が浮かんだ。
え?ど、どうしてレン兄さん?兄さんは……あの日を境に兄さんは変わった。変わったというより元に戻ったというほうが合っているかもしれない。
子供のころはよく3人で遊んだ。
優しくてよく笑う兄さん。ウィルがやらかすイタズラの尻拭いををよくやらされていたっけ。
優しい人はどこにでもいる。でも兄さんは思いやりもあるわ。
そして時々私を真剣に見つめるブルーグレーの瞳…どうしたんだろう。胸が、心臓が苦しくなる。レン兄さんの事を考えてこんな風にドキドキするなんて私はおかしいわ。
でも兄さんの成人の日。あの日から私の兄さんに対する気持ちも変わっていった・・・・。
自分の感情に戸惑いながら、図書室に入ろうとした瞬間扉が内側に開きフロウは体制を崩して図書室から出ようとした人物に倒れ掛かった。
「おっと、危ない!」レナードは倒れかかったフロウを両腕でしっかり支えた。
フロウは支えてもらったおかげで転倒は免れたが顔面をレナードの胸に打ち付けてしまった。
鼻にツーンと痛みが走る。
「あっ、いたたたた。うぅ・・ごめんなさい」
両手で鼻を抑えながら顔を上げるとすぐそこにレナードの心配そうな顔が覗いていた。フロウは顔がカッと熱くなるのを感じた。きっと私の顔は真っ赤だわ…。
「びっくりした、に、兄さん。ごめんなさい痛かったでしょう?」
レナードの腕から離れ、真っ赤な顔を見られたくなくて下を向きながら言う。
「俺は大丈夫だよ、フロウこそ顔?ぶつけた?大丈夫かい?」
レナードは顔こそ平静さを保っていたがびっくりして心臓がバクバクしていた。扉を開けると天使がこの腕に倒れこんできたんだから。
成人パーティーのダンスの時より近くにフロウの顔があった。
「鼻がちょっと痛くて・・びっくりしただけ。兄さん図書館室での用事は済んだの?」
何か、何か話さないと…必死に平常心を取り戻そうとする。
「資料を取りに来たんだ。用事はもう終わったよ。フロウは探し物かい、手伝おうか?」
少し顔の熱が引いたフロウはレンの方を向いて答えた「何を読むかまだ決めていないの、だから大丈夫。ありがとうレン兄さん」
レンは出て行こうとして振り返りざま言った。
「出るとき気を付けて、また誰かとぶつからないように」
レンはフロウに反撃されないうちに笑いながら早足で行ってしまった。
「もうっ」
私の気も知らないで、兄さんったら。兄さんは私の事を可愛い妹として見ている。そう、妹として。




