表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
薔薇の名前   作者: 山口三


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/74

ケイトの話


 成人の誕生日パーティーなんて退屈だとウィルは思っている。


 パーティー自体は好きだ。楽しい事はなんでも好きだ。でもお見合いを兼ねているという所が気に入らない。


 俺は将来フロウと結婚する。

 姉弟として育ってきたけど血は繋がっていない。俺とフロウは気も合うし一緒にいると本当に楽い。 

 天使を見たと思ったあの日から俺はずっとフロウが好きだ。今も目の前でパーティーの準備に真剣な顔で悩んでいる。そんな表情も可愛らしい。



「ねぇウィル、聞いてる?」

 招待客のリストとにらめっこしていた顔を上げて怪訝そうに聞く。


「え、ああ、聞いてる。聞いてる」

 2回言いましたね、聞いてない証拠です。フロウはため息をついた。


「パートナーはどなた?って聞いたのよ」


「あっと、パートナーね。それはいない。フロウがパートナーになってよ。兄さんの時みたいに」


「兄さんの時みたいに、結婚はまだ早い、って言うのね。でも確かに早いわよね」


 フフフとフロウは笑ってケイトに向かって言った。


 今日の会議?にはケイトとロブも参席していた。大まかな概要はもう決まっていて今は招待客のリストをチェックしているところだ。


「昔と違って今ではちょっと早いかもしれませんね。私も成人のパーティーの時に紹介された方ではなくて、社交界で出会った方と結婚しましたから」


「まぁ、きっかけは?どんな方だったの?どの位お付き合いされてから結婚したの?」


 ケイトの結婚の話にフロウは興味津々でケイトを質問攻めにした。


 ケイトはひとつひとつフロウの質問に答えた。


 恋愛の話に目を輝かせている女子生徒に優しく答える教師のようだった。


 ケイトの話によると社交界で出会い1年ほど交際したのち結婚したが、夫が流行り病でなくなりその後学園で講師の仕事を始めたらしい。

 

 結婚していた期間は短かったが幸せだったことが話から伝わってくる。この流行り病はジョセフの兄が罹ったものと同じだ。


 この病は健康な者の命を容赦なく奪う凶悪な悪魔の爪だった。




「ケイトも大変だったのね」

 一通り話を聞いたフロウがしみじみと言った。


「いい話だな~俺も絶対好きな人と結婚する。家が決めた相手なんて御免だ」

 ウィルは意気込んだ。


「短い結婚生活でしたけど彼に出会えて良かったと思っています。お嬢様方も素敵な方と巡り合えて欲しいですわ」


「レナード様もウィリアム様も結婚にはまるで興味がないようですしね。せめてフランシス様くらいは…」


 ロブの愚痴を遮るようにフロウは慌てて「私も焦らないでいい方を探すことにしているの」


「そうですね、恋愛結婚で幸せになっていただけるのでしたらそれ以上のことはありません。あーーですがあまりにも身分の差があってもいけませんよ、お嬢様はカーライル家の本筋の血統でありますから…」


 ロブはますますジョージに似てきたわ。

 耳が痛くなりそうな話を聞き流しながらフロウは思った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ