ケイトの話
成人の誕生日パーティーなんて退屈だとウィルは思っている。
パーティー自体は好きだ。楽しい事はなんでも好きだ。でもお見合いを兼ねているという所が気に入らない。
俺は将来フロウと結婚する。
姉弟として育ってきたけど血は繋がっていない。俺とフロウは気も合うし一緒にいると本当に楽い。
天使を見たと思ったあの日から俺はずっとフロウが好きだ。今も目の前でパーティーの準備に真剣な顔で悩んでいる。そんな表情も可愛らしい。
「ねぇウィル、聞いてる?」
招待客のリストとにらめっこしていた顔を上げて怪訝そうに聞く。
「え、ああ、聞いてる。聞いてる」
2回言いましたね、聞いてない証拠です。フロウはため息をついた。
「パートナーはどなた?って聞いたのよ」
「あっと、パートナーね。それはいない。フロウがパートナーになってよ。兄さんの時みたいに」
「兄さんの時みたいに、結婚はまだ早い、って言うのね。でも確かに早いわよね」
フフフとフロウは笑ってケイトに向かって言った。
今日の会議?にはケイトとロブも参席していた。大まかな概要はもう決まっていて今は招待客のリストをチェックしているところだ。
「昔と違って今ではちょっと早いかもしれませんね。私も成人のパーティーの時に紹介された方ではなくて、社交界で出会った方と結婚しましたから」
「まぁ、きっかけは?どんな方だったの?どの位お付き合いされてから結婚したの?」
ケイトの結婚の話にフロウは興味津々でケイトを質問攻めにした。
ケイトはひとつひとつフロウの質問に答えた。
恋愛の話に目を輝かせている女子生徒に優しく答える教師のようだった。
ケイトの話によると社交界で出会い1年ほど交際したのち結婚したが、夫が流行り病でなくなりその後学園で講師の仕事を始めたらしい。
結婚していた期間は短かったが幸せだったことが話から伝わってくる。この流行り病はジョセフの兄が罹ったものと同じだ。
この病は健康な者の命を容赦なく奪う凶悪な悪魔の爪だった。
「ケイトも大変だったのね」
一通り話を聞いたフロウがしみじみと言った。
「いい話だな~俺も絶対好きな人と結婚する。家が決めた相手なんて御免だ」
ウィルは意気込んだ。
「短い結婚生活でしたけど彼に出会えて良かったと思っています。お嬢様方も素敵な方と巡り合えて欲しいですわ」
「レナード様もウィリアム様も結婚にはまるで興味がないようですしね。せめてフランシス様くらいは…」
ロブの愚痴を遮るようにフロウは慌てて「私も焦らないでいい方を探すことにしているの」
「そうですね、恋愛結婚で幸せになっていただけるのでしたらそれ以上のことはありません。あーーですがあまりにも身分の差があってもいけませんよ、お嬢様はカーライル家の本筋の血統でありますから…」
ロブはますますジョージに似てきたわ。
耳が痛くなりそうな話を聞き流しながらフロウは思った。




