過去からのプレゼント
ウィルが部屋からでていってから改めて部屋を見るとティーテーブルやソファの上にプレゼントが沢山積まれていた。
今日はもう疲れたから開封するのは明日にしよう、そう思い着替えながらプレゼントの山を見ているとテーブルの真ん中に置かれた箱に目が行った。
これだけ開けてみよう。
それはレナードが生まれた年のワインだった。カードが2枚付いていた。1枚目のカードには
「成人おめでとう。レナード、君が僕の息子で本当に誇らしく、嬉しく思う。ジョセフより」
と書かれていた。もう1枚のカードには
「生前にジョセフお兄様から頼まれていました。カードとあなたが生まれた年に作られた大陸のワインを。約束通り成人のお誕生日に贈ります、大切な甥へ愛を込めてカレン。」
レナードはそのボトルを掴んだまま着替えをやめてデスクにフラフラと歩いて行った。デスクにボトルを置き、今度は懐中時計を手にテラスへ出て行った。
テラスからは敷地内がよく見渡せる。屋敷から門扉までまっすぐ続く中央の道。噴水がある庭園、反対側のバラの庭園。
今日はまだあちこちに明かりが付いていて外はぼんやり明るかった。
この部屋はお父様が若いころに使われていた部屋だそうだ。屋敷内でも一番いい部屋だと思う。ここに来てからの日々が思い出される。
足は自然とバラの庭園へ向かっていた。
秋バラが咲き乱れる庭園のベンチにどっさりと腰を下ろした。すごく疲れているのに、部屋に居ても眠れる気がしない。
初秋の夜は外でもまだ過ごしやすかった。風もなくただ静かだった。かすかに聞こえるのは反対側の庭園の噴水が奏でる水の音、秋が来ていることを告げる虫の鳴き声。
そこへ、ベンチの後ろから足音が聞こえてきた。
「レン兄さんこんな所にいたのね、プレゼントを渡したくて探していたの。でも…明日にしたほうが良かったかしら」
自分の誕生日パーティーの後、一人ベンチに座ってうなだれていれば誰でも声をかけにくいだろう。
ベンチに座ったまま振り返り、帰ろうとするフロウに言った。フロウもウィルと同じように遠慮がちな態度だった。
「いやいいんだ。こっちに来て座らないか?」
フロウは言われたまま黙ってレナードの隣に座った。




