ウィルのプレゼント
今日の主人公のレナード様は全てのお客様から声を掛けられ忙しそうだった。
それでもここ最近では一番楽しそうにしていらっしゃるように見える。
レナード様からの挨拶の後はダンスが始まり更に賑やかになった。レナード様はパートナーをお連れではなかったのでフロウ様と初めに踊られた。
「兄さんはいつも忙しそうなのにいつダンスの練習をしたの?」
「忙しくてもそれくらいの時間はあるさ」
「じゃあまたバラの育種も再開される?」
「…そうだね。ほったらかしにしてたらバラが可愛そうだよね」
「さ、次の曲はウィルと踊っておいで。フロウを独り占めしていたらウィルに後で何をされるか」
レナード様は優しく微笑みながら最初のダンスを終えたフロウ様を見送られていた。
パーティーは滞りなく進み、楽しい夜はあっという間に過ぎお開きとなった。
「レナード様、お疲れ様でございました。お部屋にプレゼントを運んでございますのでご確認ください」
「ありがとうジョージ。うん、さすがに疲れた。部屋に戻ることにするよ」
最後のお客を玄関ホールで見送ったあと2階へ行こうとするレナードにウイリアムが遠慮がちに声をかけた。
「兄さんこれ、誕生日おめでとう。遅くなったけど手渡ししようと思って」
包装された長方形の箱を手渡されたレナードは少しだけ驚いた様子で
「誕生日のプレゼント?・・・ウィルありがとう。今開けてもいいか?」
「うん、開けてみて」
ガサガサと包装紙を破ると紺色のビロードの箱が出てきた。蓋を開くと金のチェーンが光っていてレナードの「L」のチャームも付いていた。
「兄さん、前に母様から金の懐中時計を貰っただろ?あれにどうかと思って」
母の話を出すのを少しためらう様子でウィルは言った。
思い出させるような物を送るのはまだ早いかと思ったが、成人の記念になる物で一番に思い付いたのがこのチェーンだった。
「きっとぴったりだよ。俺の部屋に行こう、すぐ付けてみたい」
二人は足早にレナードの部屋に向かった。
テラスに続く大きな窓のそばに置かれたデスクの引き出しから木の箱を取り出し、ずっとしまいっぱなしになっていた懐中時計を取り出した。
チェーンの金の色合いと懐中時計はぴったり合った。太さもバランスがいい。
「いいセンスだな、ウィル。本当にありがとう」
「喜んでもらえて良かった。兄さん今日はお疲れ様、お休み」
母の話を出したことでどんな反応をされるか不安だったが、いつもと変わらない態度だ、大丈夫だった。
やっぱりレン兄さんは大人だ。プレゼントもとても喜んで貰えた。僕が不安に思うことは無かった。ウィルは気分よく自分の部屋に向かった。




