カレン叔母さん
成人の誕生日パーティーはその家の使用人たちの腕の見せ所でもある。装飾や料理、招待状など、奥様が考えられた細かい内容を再現していく。
パーティが始まってからも指示通りに段取りよく進行させて軽いトラブルも想定しておかなければいけない。
酒癖の悪いお客様は要チェックである。お終いまで気を抜くことは許されず後片付けも大変である。
とはいえやはりお祝い事なので使用人たちのテンションも高く大変大変、大忙し、とぶつぶつ言う割には皆、楽しそうである。
ただ今回は事情が違う。パーティーの発案をし、先導をする奥様がおられない。なので侍女長と執事長のわたし、フロウ様の3人でパーティーを取り仕切ることになった。
お客様は、レナード様のご友人、カーライル家の近しい親族、フロウ様、ウィリアム様のご友人である。
去年レナード様を取り巻いていた令嬢さま方は今年は招待されずがっかりされていることでしょう。
ジョセフ様には亡くなられたお兄様と妹様がいらっしゃる。
その妹カレン様は海を隔てた大陸に嫁がれていて、去年のジョセフ様の葬儀以来のご帰省となった。
ジョセフ様とは5歳の年の差、二人の兄やご両親から可愛がられてお育ちになり、少々我の強い所があるものの明るく裏表のない方である。
そしてフロウ様はもちろん血の繋がりのない甥二人をとてもかわいがっておられる。
「レナード!成人おめでとう。あれから1年しか経ってないのに立派になったわね」
「カレン叔母さん、遠くから来てくれてありがとうございます。叔母さんは・・・元気そうですね」
「あなたたちの叔母ではあるけれど私はまだ若いですからね、フフフ。それよりこんなに忙しくなければもっとここに遊びにくるのに。ごめんなさいね、大変な時にそばにいてあげられなくて」
明るく笑うカレン様も甥っ子達のことはとても心配そうである。
カレン様はカーライル家と取引あった貿易商の富豪とご結婚されたが、あちらの大陸で新しく企業されそれが繁盛して大変お忙しいのである。
叔母の到着を見て、フロウ様が寄ってこられた。
「カレン叔母様、来てくれて嬉しいわ。叔父様はご一緒かしら?」
近くをくるっと見回してフロウ様が尋ねられた。
「ええ、ここに来るのを楽しみにしていたみたい。あの人も忙しすぎるから少し骨休みが必要なのよ」
「ではしばらく滞在していかれる?わたし、大陸のお話をまたお聞きしたいわ」
「そうですよ、ゆっくりしていってください僕達みんな大歓迎です」
「ほんとに可愛い甥っ子達ね~でも予定は三日なの。三日間思いっきり羽を伸ばすわ。さてちょっとお腹が空いたから何か頂いてくるわね」
カレン様は飲み物を手にしてウイリアム様と談笑しておられる夫君の方へ行かれ、そこでまた楽しそうな笑い声を響かせていた。