葬儀
その後の事は夢の中の出来事のように虚ろで現実とは感じられなかった。
葬儀は重くのしかかるような曇り空の、冷たい風が吹く中で執り行われた。
母へレンの親族はほとんど参列していない様だった。年配の女性が侍女らしき人と一緒に来ていたが誰かは分からなかった。僕たちが子供の時も母の実家に帰ったことがない。
ウィルはずっと泣いていた。侍女長がぴったりとウィルにくっついて背中をさすったり涙を拭いてやったりしていた。
葬儀の時にフロウは泣いていなかった。だが目が真っ赤で泣いていないのは今だけだと誰もが理解した。
僕たちの天使は手にした白いハンカチを力いっぱい握りしめることで涙が出るのを必死に堪えているように見えた。ウィルが泣き通しているから、自分は泣くのを堪えてこれ以上周りに心配をかけまいとしているのだろう。
フロウは心も天使のように優しかった。両親が亡くなって辛いのはフロウ自身なのに、相手が使用人であろうと家族だろうと同じように心を砕いていた。
今すぐ駆け寄ってその体を抱きしめ、力いっぱい握られた手をほぐしてあげたかったのに、僕の足は墓地の墓石のように地面に張り付いて動かなかった。
両親の棺が土の中におろされ、土がかけられ始めるとフロウは顔を背け大粒の涙をぼろぼろとこぼした。
その涙を見た僕の足はようやく呪いが解けたように動いてノロノロとフロウの傍まで行き、その小さく震える肩を抱きしめた。
フロウにかけられる言葉もなく、僕の青ざめた顔には一向に涙が流れてこなかった。




