13.いざ、市場調査②
「美味いな、コレ」
喧嘩が始まる前にルルのいう屋台へと向かった。
そこの名物は麺料理で、塩ダレのような感覚の味付け。
カラフルな野菜と一緒に何らかの肉が入っているが、まぁ聞かないでおこう。
めちゃくちゃ美味い。
「お前でもこういう店来るんだな?」
「冒険者たる者、色々なものに触れることこそ重要ですわ」
「……ちげぇねぇ」
おお。珍しく二人の意見が一致した!
食べ物は世界を救う。ありがとう、塩ダレ。
「えーーっと、一皿銀貨一枚か」
「銀貨二枚でレイ銀貨な」
銀貨が大体三百円から五百円として、銀貨二枚でレイ銀貨ってことは。
やっぱりレイ銀貨は千円くらいって認識でいいのか。
んでレイ銀貨五枚は金貨だから、金貨は五千円。
それが二枚でレイ金貨。
つまり一番上は一万円くらいか。
まぁ何とか覚えれそう。
「とりあえず服を買いたいかな」
「効果が付いたような装備ですと、レジェンダリー級か魔道具になりますが……」
「いや、俺パッシブスキルみたいなのもうあるし。普通の服でいいよ」
ん? なるほどな。
最初の内はパッシブのクラススキルをどんどん覚えていくと、それだけで冒険者にとっては節約の意味にもなる訳か。
確かにスキルのレベリングより、そちらが優先かもしれないな。
「それもそうだな。大体ハヤトのスキルに勝る効果が付いた装備、そうそうねぇだろ?」
「そういうもんか?」
「お前は自分のこと過小評価しすぎな」
S級のグレイに言われても、今一つピンとこない。
「ハヤト様の行きたい所へ着いていきますわ」
「そう? じゃぁ、一周してみて良さそうな所に入るか」
「店主、ありがとな」
「また来ますわ」
「ありがとうございます! ご武運を!」
いつも喧嘩しているイメージが強いが、二人のこういう礼儀正しい所を見ても、冒険者の模範なんだろうなとは思う。
「ごちそう様でした」
「坊主も気を付けてな!」
徐々に坊主呼ばわりに慣れてきたのも複雑だ。
服を主に扱っているエリアを見て回る。
機能性を重視したもの、装飾に凝ったもの。色々あるな。
俺はどちらかと言えば機能性、動きやすさ重視でいきたい。
「ん」
丁度探していたような、いかにも弓使いっぽい上下セットが売ってある。
動き易そうなシャツと簡素な膝丈のズボン。
手の甲まで覆うアームガードのような装備。
その上から外套を羽織って、靴はひざ下まであるブーツ。
うん、これだ。
しかも『大特価! 全部で金貨一枚!』と書いてある。
えーーっと、五千円くらい?
安すぎないか? お店大丈夫?
「これにしようかな」
「まぁ、お得ですのね」
「お、兄ちゃん、お目が高いねぇ! 同じサイズを仕入れ過ぎてね。今年は身軽なクラスがそんなに居なくて余ってるんだ。特に効果が付与されたりはしてないが……」
「これで良いです、あ。サイズ合うかな?」
試着室のような場所はないので困った。
「ちょっと合わせてみやしょうか」
俺の体のラインに合わせて、目分量で見てくれるらしい。
どれどれ。
「おーー、良さそう?」
恐らく初心者用の服を主に扱っているんだろう。
ターゲット層が十八歳に設定されているため、サイズも問題なさそうだ。
「靴だけ履いてみやす?」
「そうだな」
履き替えてみると、こちらもピッタリ。
ナイス。
「本当に一式で金貨一枚なのか?」
グレイも不思議そうに言うあたり、余程お値打ち品なんだろう。
「ええ。最近の若者は親からお金をもらうのか、初期装備を買う者も以前より減ってきてね」
「なるほどなぁ、時代だぜ」
「本当ですわねぇ。私達の頃は無一文で冒険者を始めたものですわ」
なんとなく聞きそびれてはいたんだが、この二人って年齢いくつなんだ……?
エルフのグレイは、イメージ的にも長寿なんだろうけど。
ルルって何者かすら不明だし、とても聞けないよな。
「じゃぁ、金貨一枚」
「ありがとよ! 包むから待ってな」
「思ってたより良い買い物できたな」
「本当ですわね、運が良いですわ」
一万円……レイ金貨一枚の出費は覚悟していたため、非常に満足のいく買い物ができた。
それにしても昨今の冒険者事情とやらも、昔とは変わってきているんだな。
アルバ・ダスクで人が大勝しているからだろうか? 景気がいいんだろうな。
「はいよ」
「ありがとう」
包んでもらった服を持って、あとは冒険者の必需品とやらを見に行く。
「冒険者に一番必要な物って、何かあるか?」
「武器防具以外で言やぁ、ポーションか」
「あんまり使わないですけれど」
あぁ、この二人に聞いたのが間違いだった。
「一応この街には相の聖団の本部がありますので、他の街よりもいくらかレートは安いはずですわ」
「あ、そうだった」
二人に相の聖団とやらの事を聞くんだった。
「その、相の聖団ってどういう組織?」
「回復系の術師が集まる互助組織だな。冒険者をしながら所属する者もいれば、街の者を癒すことを専業とする者もいる」
なるほど、冒険者ギルドのヒーラー版って感じか?
「最近では民衆からの支持を元に、政治介入も見られるとか。……まぁ、私は怪我をしないので分かりませんわ」
でしょうね。
「専門職だからな、冒険者では見ない特殊クラスも居るらしいぜ? オレも世話にならんから分からんが」
……でしょうね!
「その言い方でいくと、ポーション関係はヒーラーさんが作ってるのか?」
「ええ。回復の魔法とは水と光の魔法ですの。そもそも水魔法に適性がないクラスや冒険者では、回復の術はないですからね」
「あーーなるほど」
「その効果を高めるための、薬草を調合するスキルなんかは、別であるけどな。調合したものに、ヒーラーが魔法を付与するって感じだな」
「ふむふむ。分業できていると」
「相の聖団がポーションの流通を牛耳っている訳でもありませんし、単純にこの街にはヒーラーが多く居て数が作れる。という話ですわ」
独占禁止法には触れていないと。
いたって健全な組織だな、おい。
「まぁ怪我をした際にお世話になる場所、とでも覚えていただければ」
この二人……、世話になったことがないから若干テキトウに言ってるな?
「正直、ハヤト様のスキルを見る限り必要なさそうではありますが……」
「まぁ、ヤバい時の逃げ足だけは自信あるからな」
「敵さんの注目を集めるのはオレに任せとけ」
おお、頼もしい。
「じゃぁ、とりあえずポーションは……要らない?」
「それでよろしいかと」
「なんだかなぁ」
RPG序盤の、少ない手持ちでいかに装備とポーションを工面するか!
あのドキドキが得られないのはちょっと悲しい。
「まぁ、オレが数本持ってるし大丈夫だろ」
さすがに近接職のグレイは持ち歩いてるのか。ん?
もしやその小さそうな腰の鞄は、収納魔法が付いてるレジェンダリー……?
「一応お金の価値も大体把握したし、服も買えたし……。目的達成?」
「良かったですわ」
「今日は時間もまだあるし、自由行動にするか?」
「それもそうだな。明日またギルドで依頼内容を見て色々教えてもらえるか?」
ひとまず冒険の用意は出来たとして。
冒険者の皆さんの定番ってやつをもっと経験しておきたい。
教えを乞うならやっぱりギルドだよな。
「おう、なら今日は解散だな」
「ではまた明日、ギルドでお会いしましょう!」
「ハヤト、道に迷うなよ!」
余計なお世話だ! ……と強く言えないのは、内緒だ。
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