時計模様の秘密を知ったところでもう手遅れの件
「あなたの選んだカードはハートの7ですね?」
また、当てられた。何度選んでも当てられてしまう。自分が選んだカードを、悉く目の前の女性に言い当てられてしまう。数十回同じようなやり取りをした後、私は目の前に居る女性に聞いた。
「降参です。どうやってカードを当てているかを教えてください。」
「マジシャンが、マジックの種をそう簡単に教えられるわけないでしょう?」そうか、目の前の女性はマジシャンだったのか。そんなことも分らないまま、私は、こんな遊びを延々と繰り返していたのか。
「誰にも言わないので、特別にお願いします。」
「仕様がないですね。今日は特別ですよ。」そう言いながら目の前のマジシャンの女性は、カードを裏にしてテーブルの上に並べだした。
「これを見て、アナタは何か気づきませんか?」カードの裏に、小さな時計が無数に描かれた不思議な模様のカードだった。「さあ?」
「よく見てください。カードによってそれぞれの時計の時刻が違っているはずです。」「あ、本当だ。」
「時計の時刻の法則性によって、裏の模様を見れば、表のカードの内容が分かるようになっているのです。裏面が重要だったのです。」「・・・裏面」「そうです。裏面が重要なのです。分かりましたか?」「分かりました」
その瞬間私は、目を覚ました。私は定期テスト中の教室に居た。今回のテストは問題数が少なく、早々に回答を終わらせた私は、机に突っ伏してテスト終了時刻までの時間を自分の睡眠時間に当てていたのだ。変な夢だったなあと、目をこすりながら何か引っかかることが一つあった。「裏面が重要。まさか・・・」私はゆっくりとテスト用紙をひっくり返した。そこにはびっしりと、私がまだ解いていないテストの後半部分が印刷してあった。
「残り時間、あと10分です」さっき見たマジシャンと同じ顔の先生が、僕に残酷な事実を伝えるのだった。