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渡る世間に鬼が居るのか居ないのかは教養と人望と世代によって決まる

「……燐の前世が勇者で、萌菜さんの前世が魔王……?」


 ストレートにそう告げる以外に無かった。最初は鳩がバルカン砲を食らったような顔を浮かべていた神楽坂だったが、燐が聖剣グランダムを召喚し、萌菜が閻魔業火(ゲヘナフレイム)を生み出すと神楽坂は納得せざるを得ない状況に陥った。


「━━━つまり、前世で宿敵だった者同士が結婚し、その能力を継ぐ子として産まれてしまったのが空くんということか」


「そういう感じです……色々おっつかなくてテンパってるとお思いですが……」


「━━━面白い」


「「へ?」」


「気体・液体・固体の枠に当てはまらない第四の物質『プラズマ』による怪奇現象は太古の昔より確認されており、在るときは信仰の対象として、在るときは畏怖されしものとして忌まれてきた。現在の物理学で解明出来るものも多いが、それでも未だ謎に満ちた怪奇現象が多いのも事実! お前たちと接していればそれを紐解けるヒントに成りうるかもしれん! これは実に興味深いぞ!」


 ……そういえばこの人、大学時代にオカルト研究サークルにも所属してたって言ってたな。この手の話って好きそうだわ……


「あなたの元上司、キャラクターが凄く渋滞してるわね」


「まあでも悪い人じゃないから……」


「よし。燐が職場に復帰した暁には俺がこの子のシッター代わりに面倒を見てやろう」


「い、いいんですか神楽坂さん。あなただって弁護士として忙しい筈じゃ……」


「そんなになんだ。今は大企業に顧問弁護士として雇われてるくらいだし、それだけで十分な稼ぎになっている。これも元刑事の人脈あってこそだ。ハハッ」


 ━━━刑事になったのは人脈形成の為だったのか……と思えば燐の中で納得の行くものがあった。


「本当に有り難い事だわ。こういう事って家族にも中々相談できないじゃない。娘が元魔王って、卒倒するか脳外科に連れていかれるかのどっちかだしね」


「だな。俺の母さんもあんなんだろ? 本当、神楽坂さんのような理解者が居てくれて助かります」


「これからは何でも頼ってくれ。頼れる人間が一人居るだけでもだいぶ違うだろ? 何かあったら遠慮なく呼んでくれ、な」


 その神楽坂の言葉で燐と萌菜は久々に肩の荷を下ろしたように、ほっと力を抜くことが出来た。燐と萌菜は前世の記憶が目覚めて今に至るまで、全てを打ち明けられるほど頼らしい存在が居なかったのだ。前世の事も含めて子供を受け入れてくれる存在が居る……それがどれだけ励みになるか。


「……神楽坂さん……ありがとうございます」


 そう言って燐はつくづく良い上司に恵まれたものだ、と言おうとした矢先だった。


「で、そろそろ二人目って気にならないのか?」


 燐と萌菜がたまげて吹き出したのは言うまでもない。


「二人目……って、冗談じゃないわ。まだまだ空だって手もかかるし……あたしたち、前世で殺し合いした仲なのよ」


 そう神楽坂が帰宅した後、味噌汁用に大根をいちょう切りにしながらぼやく萌菜に、


「……まぁ、空もまだ手もかかる年頃、ってのはわかるけど……本当に俺と、もうそういう気にはなれない?」


 と、肉と野菜を炒めながら燐が照れが混じりに萌菜に視線を向けて聞く。萌菜は燐の顔を直視できない。何故なら、顔を赤らめているのを燐に悟られたくなかったからだ。萌菜のその反応を見て、燐が切なげに炒めものに酢醤油を加えた時だった。


「……ねえ、燐」


「ん……?」


「あなた、空に物騒なおもちゃを与えたりしてないよね?」


 萌菜の視線が指す先には、勇者の剣らしきものをガラガラのように振り回して遊ぶ空。紛れもなくこれは聖剣召喚━━━勇者特有の能力だ。まさかこの能力までもこの年齢で受け継ごうとは……燐も萌菜もドン引き状態。


「……これ、二人目とか考えられるゆとりもないわよ……現状だと」


「だな……」

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