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思いがけないBad Timing

 ━━━俺は勇者リンカ


 ━━━私は魔王デステモーナ


 長年に渡る因縁にけりをつける瞬間(とき)がやってきた。


「魔王デステモーナ。何も遺す言葉はないな」


「それはこちらの台詞だ。次に挑む勇者に遺す言葉はないな」


「ない━━━この聖剣グランダムがお前の心臓を穿つからな」


「ならば━━━私の閻魔業火(ゲヘナフレイム)でお前の身を塵も残さず焼き切るまでだ」



━━━━━━━


━━━


━━



「━━━ちょっとちょっと、あなた! 財布忘れてたよ!」


「ああごめん! でも萌菜(もな)、安静にしてないと駄目なんじゃないのか?」


「平気よ(りん)くん。まだ予定日まで一週間━━━っ!?」


「萌菜!?」


「嘘ッ……きた……きたみたいっ……!あつつ!!」


……………………


「奥さん、気張って!!」


「萌菜! がんばれ!!」


「うぅぅ!! あああっ━━━━!!!!」


「はい、いきんで! 赤ちゃん出ますよー!」


 最初の陣痛から凡そ十二時間。取り上げられた赤ちゃんは戦慄した分娩室に産声を轟かせた。


「おめでとうございます。元気な男の子ですよ」


 そう赤ちゃんを燐に託した助産師は、分娩室を後にした。あとは夫婦二人の時間だ。


「萌菜……! なんてかわいいんだろう。俺達の子だよ」


「まあ……鼻のところが燐くんにそっくり」


「この二重まぶたは萌菜そっくりだね」


「なんにせよ、疲れたわ……あなたも仕事を休んで、ずっとつきっきりで居てくれて、疲れたでしょう」


「まずはきみがゆっくり休みな……俺は平気だから」


 と、二人が安堵した瞬間だった。


「━━━━……?」


「━━━━……?」


 ふたりの光景に、あの時の光景が浮かぶ。

 聖剣デュランダルを持つリンカ。閻魔業火(ゲヘナフレイム)を放つデステモーナ。そして、刺し違える形で息を引き取る二人……


「デステモーナ……?」


「リンカ……?」


 あろうことか、地球の、日本という小さな国に二人は生まれ変わり、夫婦となっていたのだ。そして、今日。お産という、おめでたく最悪のタイミングで二人は記憶を取り戻してしまった━━━━


「デステモーナ! お前っ、人間に生まれ変わって俺をたぶらかしやがったのか!」


「貴様こそ! 勇者の能力を捨てて私に近づいたのだな!」


「━━━この魂が不滅なる限り、勇者の能力(ちから)は無くならない! 出でよ! 聖剣グランダム!」


 と、燐ことリンカがグランダムを召喚すると、


「━━━私とて、この魂が有る限り魔力は尽きぬ!出でよ! 閻魔業火(ゲヘナフレイム)!」


 萌菜ことデステモーナは閻魔業火(ゲヘナフレイム)を発動させる直前だった。赤ちゃんが泣き出したのは。


「ああっ、ごめん! おーよしよし、怖かったね……」


「ほらほらもう大丈夫よ~、ママがいまちゅからね~」


 なんとか二人があやして寝かしつけた、は、いいものの━━━これはとんでもないことになった。よもや前世で殺し合いをしていた二人が夫婦となって生まれ変わり、記憶も能力も取り戻してしまったのだ━━━そしてこの赤ちゃんは、そんな勇者と魔王の間に産まれた子━━━


「……仕方ない。一時休戦とするか」


「やむを得まい……吾子(あこ)を巻き込むわけにはいかぬ」


 高卒六年目。24歳の地方公務員、立花燐と同じく高卒六年目、24歳のWebデザイナー(産休中)の立花萌菜。結婚二年目の二人に大きな壁が立ちはだかった━━━

◇ ◆キャラクタースペック◆ ◇


 ・立花(たちばな)(りん)

 24歳、身長169cm。萌菜の夫。童顔で、私服だと高校生、中学生に間違えられる事も。前世は勇者リンカで、勇者専用魔法や魔族に対して有効な聖剣召喚等の能力を扱える。魔王を倒すまで魂は何度も生まれ変わりを繰り返す運命にあり、名前は輪廻転生「Reincarnation(リンカネーション)」から取られている。勇者の魂を継ぐ者は男女問わず代々このリンカの名を継承していた。


 ・立花(たちばな)萌菜(もな)

 24歳、身長154cm。燐の妻。燐と同じく見た目は幼く、燐と並んで歩くと高校生カップルに間違えられるのが悩み。前世は魔王デステモーナ。魔物を操る魔族の王として2000年間君臨していた。魔族を人類から守る事が本来の目的であったが、人類の文明発展、並びに生活領域の拡大によって長らく人類と対立状態にあった。魔王らしく様々な魔法を使えるが、広範囲を焼き付くす閻魔業火(ゲヘナフレイム)がお気に入り。

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