片方の話
高速道路上に落ちている片方だけのスニーカー
サイズからして男性用だろうか・・・?
(って思ってそうな顔だな)
あるとき車で走行中に視界に入ったそれは、力なく横たわり
ピクリともしない
(とでも想像してる感じか)
轢かれるのを待つか誰かに拾われるのを信じるかの二択しかなさそうだ
(そう思ってそうだな)
しかしだ、よくわからないのだよ
なんで片方ばかりがよく落ちているのか
(それは同意する)
捨てるには惜しいくらいに新品である雰囲気を醸すものや
年期が入り主の足を守り抜いた功労者の様なものもあった
(いろんなものがいたもんだ)
でも落ちているのは片方だけ
(なんでなんだろう)
いつもは興味も惹かれないのに、なぜか考えている
(どうして~?)
とうとう思考が深いところまで入りすぎたせいか
おかしいな、幻聴が聞こえる
(念じれば通ずるか)
どうやら片方が語り掛けているようだ
(念じれば通じた)
「おい、興味示してるとこ悪いが、、、前見ろよ」
は?
は??
聞こえたような気がしたが片方が語り掛けるはずがない
でも
ブレーキが間に合わない、目の前に車がいた
現場の音は想像してくれ
先ほどまで高速道路だったところが、一瞬にして車のスクラップ工場に
様変わりした
おまけにリンボーダンスするには強すぎる炎つきだ
そんな光景を見つめる片方(俺)のもとになにか飛んできた
片方の靴、白いスニーカーのようだが・・・なんか部分的に赤くベトッとしてる
「・・・新入りか、どこから来た?」
すると新入りは
「先ほどあなたについて考えていた者の片方です」
二足揃ったが、不揃いだな