おばけみたいな思い出
あの時は冬の寒さの厳しい日だった。
大学の下校中,俺は真冬だっていうのに半袖短パンでボーッとしている男に何故だか視線を奪われた。
「…(この人,肌の感覚ねぇんじゃねぇのか,)」
「よぉ」
「(やべっ,見過ぎた。)」
「死んだ顔した少年よ,大学は楽しいか?」
「…僕は今まで何か熱心に取り組んだことがありません。大学受験も含めて中途半端な人生を送ってきた気がします。
そんな日々には,,,何も感じません。」
「少年,何かを始めるのに遅すぎることはない。という言葉を聞いたことはあるか?」
「はい。」
「あれは嘘だ。現実は何を始めるにしろ遅すぎることだらけだ。
経験則だが参考にしてみるといいよ。」
あの日,なんで俺は会ったこともない人にあんなことを言ったのだろう。
あの人には妙にシンパシーを感じた。
それはあの人も初対面の俺に向かって到底話すわけのないようなことを言って来たからであろうか。
不思議とあの人の声が今も耳に残っている。
今も何を為すこともなくダラダラ過ごしてる俺は果たして生きているのだろうか。
俺は存在している,けど俺は生きているのだろうか…