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波乱の晩餐会

「お兄様、頑張ってくださいね。 ふふふ。」

いきなり模擬戦という流れになってしまったアヤトに対して

アヤノからの脳内通信だった。


アヤノとしては、アヤトが負けることは決してないと思っている。

むしろ模擬戦とはいえ相手を死亡させないように工夫しなければならない。

だから、かなり能力を抑えた戦い方をするだろうと予想しているくらいだ。

それほどアヤトの強さを知っており、絶大な信頼がある。


「でしたら、アヤノ様の訓練はわたくしがお付き合いいたしましょう」

メティーラからアヤノに対する訓練の誘いだった。

話の流れや立場上これは断りにくい。


「アヤノ様は魔術師と聞いておりますので、普通の魔術訓練でいいですわね。」

ただ、模擬戦闘ではない普通の訓練という事ではあった。


「ぜひ私はお二人の訓練を見学させていただきたいです。」

「能力とかも気になりますから」

能力の把握もできてないのに模擬戦闘訓練を勝手に承諾したラティーシャがそういう。


「私は、錬金術師なので強さは気にしないで下さい。」

アヤトは一応複線を張るとともに、

ラティーシャの過大な期待を下げておくような言い方をした。


「んー、アヤトよー、学者爺さんから」

「忍者とか侍とかっていうのが戦闘スキルに見えたって聞いたんだがなぁ」

「それ、日本の戦闘術だろ」

「すげぇ興味あるんだけどなぁ」

シュージからの言葉を聞いて、戦闘スキルがある程度理解されていることに驚く。


「えっ・・」

あの爺さん、自分では意味が分からないと言ってたはず

何故シュージさんはそれに固執するんだ。


アヤトは動揺を少しだけ顔に出した。

「がっはっは」

「こう見えても俺は地球からの転移者だぜ」


隠す必要もないが自発的に個人情報を言い出すことに驚く。


「いや、でもそんな赤い髪って・・」


「おいおい、ヨーロッパ系人種なら赤髪もいるだろうよ」

「それに俺はハーフだから、見栄えを気にして綺麗に染めてたのよ」

「転移中にそのまま髪の色が定着したようだけどな。」

「母親が日本人で、父親がスペイン人っていえば理解できるか?」


「え、ええ、それで名前がシュージと・・」

「どこか日本人のような名前だとは思っていました。」

そしてスパニッシュ系の血が混じってるから豪快で陽気な性格なんだな


「ああ、名前についてはその通りだ。」


「俺は西暦で言えば2000年。」

「日本の大学へ留学中に召喚されたのさ。」


彼は自分たちからしたら過去の人だ

この世界では4年前の召喚なのだが、地球では60年近く差がある。

これは俺たちがタイムリープ実験をしたからなのか

召喚というものが時空を超えるために年代が異なるのか

他にもサンプルがなければ理解は難しい。


「お前らの黒髪と黒い瞳を見て、日本人だなって近親感がわいたのさ」

「んで、そのお嬢ちゃんの衣装。」

「和装風のドレスだろ。」


「ええ、おっしゃるとおりですわ。」

アヤトの代わりにアヤノが答えた。


「そして日本の武道みたいなスキル名を聞いてたから、これは間違いないと思ったぜ。」

「俺とお前たちは、同郷だろ。」

「がっはっは」

笑うと同時に背中や肩をバンバン叩くのは勘弁してほしい。


どうやら初見なのに妙に馴れ馴れしいのは

同郷という意識もあったからなのか・・。


「ただなぁ・・」

「そこのナビとかいう幼女」

「人じゃないって、ロボットなのか」

「そんな精巧なものを作れるってどんな未来からきてんだ。」


まずいな、そこまで見抜かれてしまったのか

ここは適当に答えておくしかなさそうだな


「同じ地球でもパラレルワールドの可能性がある。」

「科学力の基準がそのまま年代と比例しない。」

「それと私はアンドロイド。ロボットとは異なる。」

「最新のAI技術で動いている。」

これに対してはナビが適当に答えてくれた。


ナビは自分のことを微妙な言い方されると言い返すようだ。

なにやらプライドみたいなものがあるのだろうか。


「お、おお」

「まあ、俺がいた時代でもすでにAIの話はあったしな」

「別次元というのは他の召喚者からも聞いた話だ」

「召喚元の年代もこっちの世界の年代とは関係性がないからな。」


ナビはいい加減な答えをしたわけではなかったのか

パラレルワールドの地球からの召喚という可能性が事実としてあるわけだ。


「アヤト様、それは簡単な論理です。」

「実は私たちがタイムリープに成功していたとしても」

「パラレルワールドの地球にしか着地できませんでした。」

「同様に召喚による転移が行われても、それによってパラレルワールドが形成される」

「実は、それが風神と雷神の答えです」


「なら俺たちの任務だった歴史改変とは無理なことなのか?」


「いえ、パラレルワールドの地球を変えることは可能です。」

「これは極端な話ですが、実は着地に成功してもしなくても」

「パラレルワールドが形成された時点で歴史が改変される可能性が高いのです」

「タイムリープはその確率をさらに上げるものという解釈でした。」

「よって、成功確率10%未満であっても実験が承認されたのです。」


「なら・・俺たちがここにいても」

「人類が滅亡しないパラレルワールドの地球が存在しているということか」


「はい、それ以外に」

「タイムリープが成功しているパラレルワールドも存在すると申し上げます。」


「何故そんな大切なことを今まで言わなかったんだ」


「この実験に関してのみ」

「聞かれていないことに対しては、答えないようにと指示されていました。」


「お兄様、深く考えても仕方ありませんわ」

「それにナビちゃんを攻めることは出来ません」

「現実的に私たちは今この世界で生きているのですから」

「この世界にいる今の私たちの未来だけを考えましょう」


「そうだな、確かに仕方はない。 だがナビ、他にも何か隠してないか?」

「お前は任務以外の知識が多すぎるのが不思議だったんだ。」


「はい、お答えします。」

「今回の実験において、タイムリープによる歴史改変だけでなく」

「人類が生き残る方法として並行した作戦がありました。」


「なん、だと」


「作戦名アダムとイブ。」

「アヤト様、アヤノ様のお二人がいれば、結果として人類は存続可能。」

「よって、ナビにはお二人の生活を支援する知識も導入されています。」


「風神雷神の計算結果として、若い男女2名、しかも生き残る確率が高い能力者。」

「自己防御のための戦闘力と判断力向上、様々な知識。そのための英才教育の実施。」

「これにより、アダムとイブ作戦の成功確率が90%だと判断されました。」


「なるほど、10%に満たない実験の裏には、そういう背景があったのか」


「ですからお二人はこの世界で生き延びでくださることを進言いたします。」


これらはすべて脳内通話での一瞬の会話である。


この話を聞いていたアヤノの顔が少し赤くなった。

「お兄様と、私がアダムとイブ。 うふふ。」


「まてまて、アヤノ。考えを早まるな。」

「俺たちのどちらかの子孫が残れば任務成功だと考えれば、答えが出るはずだ。」


「では、お兄様に少し気がありそうなラティーさんとの間の子供とか?」


「いやいや、それも早計だぞ・・」

「俺たちはまだ若い。この先どうなるかわからないだろ。」


「生殖行動には問題がない年齢だとナビは進言します。」


「ふふふ、では私とお兄様の間の子供という可能性はゼロではないのですね。」


「おい、ナビ。ややこしくなるからやめろ。」


先ほどまでの模擬戦騒動の話は、どこへやら

この場の空気を読まない脳内通話が行われていた。


「あら、アヤト様」

「顔色が悪いようですが、どうかされましたの?」

ラティーシャが少し心配気味にアヤトの顔を覗き込んだ。


「あ、いや」

「そ、そうですね、シュージさんの話を聞いて少し動揺しました。」

なんとかその場を取り繕おうとする。


「ま、なんだ」

「俺が話したっかったことは終わった。」

「明日あたりに訓練場で会おうな。」

「がっはっは」


「そうですわね」

「まだまだ、ご挨拶しなければならない方々がお待ちですし」

「シュージ様とわたくしはこの場を離れることにいたしますわ」

「では、また明日にでも・・。」


こう告げて二人は離れていった。


残っているのは、どうやら接待役というか世話役のラティーシャだ。


「では、あちらに参りましょう。」

ラティーシャが示したその先には、周囲から飛び抜けた美人が二人立っていた。


「今回召喚された3人様をお連れいたしました。」


「あらあら、ラティちゃん。案内ご苦労様ね。」


「はい、伯母様。ごきげんようですわ。」


「ラティ、あなたが召喚したというのは、この方達ですの?」


「ええ、お姉様。ご紹介いたしますわ。」

「こちらの男性が、アヤト様」

「そしてその妹君のアヤノ様」

「それと、この幼い方がナビ様」

アヤノの紹介のところに無理やり妹と注釈を加えているのが

少し違和感を感じながらも挨拶を行う。


「お初にお目にかかります」

「アヤトと申します」


「初めまして、妹のアヤノです」

アヤノもそれに対して少し皮肉交じりのように、妹という言葉を加えた。


「わたしは、ナビ。」


「まぁ、小さくて可愛いですわね」

「うちの子と同じくらいかしら」


えっ、この人子持ち??

見た目は、この二人は姉妹くらいにしか見えなかった。

ラティーシャが3女だから、姉と伯母と聞いて納得はしたのだが

ナビの見た目から想定すると10歳近い子がいる?

当主の親父さんも若く見えたが、この世界の人の年齢はわからないな。


「わたしは、マリーヌと申します。」

「姪のラティーシャの召喚にお応じてくださり、ありがとうございました。」

偶然が重なったこととはいえ、召喚されたのは事実だ。


「わたくしは、キャリノール。この家の長女ですわ。」

「ラティから若い子が3人と聞いてましたけど本当ですわね。」


なんとなくキャリノールさんの言葉がきつい感じがしてしまうのは

マリーヌさんのおっとりとした感じとの対比だからなのか

それとも長女としてしっかり者だからなのだろうか


二人ともすごく美人で銀髪なのだが、

公爵家は銀髪の美形が共通点だと言うことだけは認識した。


「マリー、この方たちが新たな召喚者なのかい」

マリーヌさんの後ろから突然声をかけてきた男性がいた。


「この人、全く気配が感じられなかったぞ。」


「ええ、お兄様。私も察知できませんでした。」


脳内通話で二人は驚きから警戒に入る。


「あらあら、あなた。」

「ご挨拶をどうぞ。」


「マリーの夫でサマルと申します。」

「私と同じ召喚者という事で歓迎したします。」

軽装の軍服姿のように見えるが、これは礼服のようなものなのだろうか

そして、二人目の召喚者との会合だ。


「いやー、私も召喚されたときは何もわからなくてね。」

「いろいろと大変かもしれないけど、君たちには頑張ってほしいな。」

色白のスレンダーな優男のようでいて、気が抜けない何かがある。

金髪で目は青く、すごいイケメンだ。


「もうあれから12年がたつのね」

「時の流れは早いですわ。」


「ああ、一番上の娘も10歳になるんだ。」

「我々も、次の世代のことも考えなければならないな。」


「そうですわね、そのうち、娘が召喚の儀を執り行うとか。」


「いやいや、まだ先に取っておいてほしいかな」

「召喚されてきた男に娘を取られたくはないよ。」


「あら、あなたったら・・。」

「ご自分は召喚後一年もたたないうちに求婚してきたのに・・」

「娘のことになると違うのですね。」


「いや、それはマリーがあまりにも美しくて・・」


「ゴホン、叔父様、伯母様。お客様の前ですわよ。」

「そのように仲がよろしいのはいいですが、少し慎んでくださいな。」


俺が突っ込みたいと思っていたら

キャリノールさんがやってくれた。


「サマル様、私はアヤトと申します」

「先輩の召喚者としてどうか今後ともご指導よろしくお願いします。」


「アヤノと申します」

「文化や風習の違いから失礼の無いように、いろいろとお教えください。」


「わたしはナビ」

本当にナビは口頭会話では省エネだな。


「うん、年齢の割にはちゃんとしていそうだ。」

「学園に通うと聞いているから、私とはまたそちらで会えるだろうね。」


「夫は、あ、サマルは学園の講師もしておりますの」

「学園内で困ることがあったら相談するといいですわ」


「叔父様は、講師だけど立場は副学園長なのです。」

ここまで静観していたラティーシャさんがやっと口を挟めたようだ。


「そして、キャリノール姉様は講師補佐ですの」

えっ、女教師というやつなのか、それで毅然としているのも納得できた。


「ええ、それと・・少し呼ぶわね」

「カオリ、いらっしゃい。」

キャリノールさんが近くにいた女性を呼んだ。


「カオリと申します。」


「この子も講師補佐ですわ。」

「8年前にわたくしが召喚した子なの」

「少し特殊なスキル持ちなので、学園のお手伝いをしてもらってるのよ」


3人目の召喚者。

4年ごとに召喚していると聞いてはいたけど。

男性だけじゃなくて女性もいたんだ。


しかし、名前がカオリって・・。


「シュージ様と同じ、地球の日本というところから来たみたいですわ。」

「ですからアヤト様たちとは同郷・・・というのかしら、になると思います。」

ラティーシャさんが小声で説明してくれたことで、いろいろとわかり始めた。


眼鏡姿でおとなしそうな感じ。

確かに少し茶色ががかってはいるけど黒髪ではある。

イメージ的には、学者風という感じだろうか。


「カオリ様は、錬金術師なので、アヤト様と同じですわ。」

ああ、忘れかけていたが俺のジョブカテゴリーは錬金術師だ。

やっと見つけた、同じ錬金術師ということになる。


「実のところ私はこの国の錬金術というものを理解していません」

「どうかご指導をよろしくお願いします。」


「あ、はい」

「私の出来る範囲であれば、お力になれるようにします。」


しかしこのカオリさん

かなり若そうに見えるけど、日本人だからなのか

それとも実年齢は本当に若いのだろうか

申し訳ないがシュージさんより若そうなのだが・・。


「わたくしたちも地球の日本から来ましたので、」

「これから仲良くしてくださると嬉しいです。」

アヤノが同郷であるアピールをする。

なかなかよいフォローだ。


「えっ、私も日本人なんです。」

「こちらこそよろしくお願いしますね。」

カオリさんの目が輝いた。

地球という同郷の上同じ日本人という共通点で打ち解けてくれたのだろうか。


しかし、地球人と日本がらみが多いのは何だろう

それとシュージさんが言っていたことは、

きっとカオリさんのことだったんだと納得した。


「同郷というならなおのこと、」

「あなたたちはラティと同じ16歳でしょ」

「カオリは18歳」

「本来ならまだ学生なの、でも優秀すぎて飛び級しちゃったのよ」

「でもまだ若いから講師補佐にしてもらって、学園に通ってるわ」

「年も近いし、どうかカオリと仲良くしてほしいの」

「どうもこの子は引っ込み思案で、講師と生徒というよりお友達になってあげて」

キャリノールさんから優し気な言葉が出た。


ああ、この人は立場上しっかりしているけど本音は優しい人なんだ。

きっと自分が召喚したカオリさんのことを気遣っていたんだな。


「キャリちゃん・・ありがとう。」

「いつも気にしてくれて本当にうれしい。」

カオリさんから小さな声で感謝の言葉が聞こえた。


8年前の召喚者ってことは、わずか10歳でこの世界に一人来てしまったことになる。

それはきっと心細かっただろう。

キャリノールさんがカオリさんをいたわる気持ちもよく分かった。


「うん、わたしの願いはカオリがこの世界で幸せになってほしい事よ」

見た目は異なるけど、二人は姉妹のようだなと思った。


最初きつそうな人だと思って本当に申し訳ないです。

心の中で謝っておく。


「アヤト様。人は見かけによらないとはこれのことだと認識しました。」

ナビからの脳内通話だった。

どうやらナビの印象も同じだったらしい。


「では、私はカオリさんとお呼びしてもいいかしら」

「私のことはアヤノでいいですわ」

アヤノからカオリさんへの言葉だった。


「では、俺も、カオリさん。」

などどいったら調子に乗っていると思われそうだからスルーしておく


「あら、お兄様それもいいのじゃないでしょうか」


「いや、次の機会にしておくよ」

二人の脳内通話だ。


「ええ、アヤノさん」

「また学園でお会いしましょう。」


「それと・・・アヤト君。 でいいかな」

「一緒に錬金術を勉強しましょうね。」


「はい、カオリさん。 よろしくお願いします。」

危惧していたけど、これはなんとなくいい感じでまとまった。


「お兄様ったら、結局カオリさんってお呼びになったじゃない。うふふ。」


「ま、まあな。成り行きというか・・。」


こんな脳内通話をしていると何やら視線が・・。


「ならわたしくも、アヤト・・くん」

「とお呼びしてもいいかしら」

ラティーシャさんだった。


「もとよりラティーシャさんには好きに呼んでほしいと言ってましたから」

「どうぞ気軽にアヤト君と呼んでください。」


「なら、アヤト・・くん」

「私はラティって呼んでほしいと言いましたから、ぜひそれでお願いしますわ」


「あ・・はい、ラティさん」


「ではわたくしも、兄と同じようにラティさんとお呼びします。」

アヤノだった。

この二人は何やら対抗し合ってるのだろうか。

それとも本当は気が合うのか。


「じゃあ、わたしはカオリ、ラティと呼ぶ」

そこでナビが突っ込んできた。

しかし本当に口数を少なくしようとしてるな。


「ええ、嬉しいわ。 ナビちゃん」

ラティさんは、まんざらでもなさそうだ。


「では、わたしも ナビちゃんと呼ばせてね。」

「実は、こんな妹がいたらいいなって思っていたの。」

カオリさんも結構打ち解けてきたみたいだ。


「なら、今からカオリとナビは姉妹。」


「あら、だったらわたくしもナビちゃんと呼びますわ」

「そしてカオリはわたくしの妹みたいなものだから」

「ナビちゃんもわたくしの妹ね」

思いもよらないキャリノールさんからの言葉だった。


「なら、ナビはキャリと呼ぶ。」


「うふふ、本当にナビちゃんは可愛いわね。」

「カオリやラティの幼い頃を思い出すわ。」


「しかし、この子が造形物とやらとはなぁ」

サマルさんぶち壊し


「あなた・・ふふふ。」

「わたくしたちはこれで、お暇しましょう」

「では、晩餐会をお楽しみください」


「なら、わたくしたちも」

「また会えることを楽しみにしていますわ。」

「カオリ、行きましょうか」


「はい、キャリちゃん」

「皆さん、学園で会いましょうね。」


「ナビちゃんのこと造形物っていう人が多いですけど」

「気になさらないでくださいね」

結局、ラティさんがフォローした。



「アンドロイドは認識してもらえないですね。」

「この世界にそういう言語意味が欠如しているからだと想定します。」

ナビも造形物という言い方は気にしているようだ。

間違ってはいないが、ナビを直接表す言葉としては確かに不適当だ。


「どうでしょう、いっそのこと、この国でも通用する用語として」

「ドールという言い方は・・。」


「まてまて、なんだかドールという言い方はいやな気がする。」


「肯定、20世紀以降の性的玩具につけられた名称と類似していると進言します。」

これにはナビも猛反対らしい。


「うーん、学者の老人が言ってた言葉」

「ホムンクルスだっけ、それなら使えるんじゃないか」

「今後は、通用しないアンドロイドという言葉をやめてホムンクルスにしよう」


「お兄様のおっしゃる通り、それが妥当なところかもですね」


「了解。通称名ホムンクルスを認証します。」

「以後、自己紹介の時はアンドロイドではなくホムンクルスと説明します。」


これらもすべて脳内通話だ。


一段落したところ

ラティさんが周囲を見渡していた。

次の面会者への案内がありそうな気配が漂う。


「あ、あちらにお兄様が・・」

「案内いたしますので、皆様よろしくお願いします。」


周囲には、会話しているグループが見られる。

どうやら貴族というのは会話中に入っていくことは失礼になるようだ。

だから会話が終わっているところを見て話しかけていくスタイルなのだろう。

その男性はちょうど会話を終えて一人になったところのようだ。


「お兄様、召喚者の方をご案内しました。」


「おお、ラティありがとう。」

「わたしは公爵家長男 リムラスという。」

「我が家にお越しくださり感謝の極みだ。」


やはり銀髪の凛とした口調の若者だ。

白のタキシードに赤いマント姿という、どこかに出てきそうな姿である。


しかし、親子で間違いがないというくらい公爵様に似ている。


すると付近にいてこちら見ていた若者がやってきた。

「挨拶をかわし始めているところ失礼します。」

「兄上、ラティ失礼しますね。」


どうやら会話になりきる前なら割り込むことは可能なのかな。


「ああ、これは弟のラカエルだ。」

「わたしとは母親が異なるが公爵家の次男だ。」


ふむ、銀髪に少し青みがかかっている

目の色も透き通るように青く、今まで見てきた公爵家の人とは少し異なる印象だ。

似た白のタキシードだが装飾は控えめで、

目の色に合わせているかのような水色のマント姿。


ちなみに今までの公爵家の方々は、深い緑色に見える目をしている。

風貌も何か違う気が・・。

よく見ると、耳の形に少し特徴がある。


「兄から紹介があったように。私は、公爵家次男。ラカエルと言います。」

「兄や妹と似てないのが少し気になりますか?」

どうやらジロジロ見ていたのに気が付かれたようだ。


「後に父と話すときにでも、お聞きください。」

「多分母上と一緒におられるはずですから。」


「あっはい、失礼しました。」

「私は、アヤトと申します。」


「わたくしはアヤノと申します。」

「よろしくお願いします。」


「わたしはナビ」


「おお、そなたが噂の・・」

「まるで人の少女にしか見えん。」

リムラスさんの目が輝く。


「聞いていましたが確かにゴーレムとは全く異なりますね。」

「これで本当に造形物なのでしょうか」

ラカエルさんも興味津々のようだが、早速ナビの尾を踏んだ。


「広義の意味においては造形物だけど」

「厳密にはホムンクルス。」

「ゴーレムとは違う。」


「なに・・爺からは聞いておったが」

「やはりホムンクルスだと」

リムラスさんが驚く


「神話の話ですが、神が原初に作り出した人工生命体ですね」

「人類を作る前に作った人形の生命体」

「それに魂を入れることによって人類ができたという・・」

ラカエルさんは、動揺を抑えるようにその知識を淡々と説明してくれた。


だが、ホムンクルスってこの世界じゃそんな神話になってるのか


「ナビ、俺たちが学園に行くとき図書館にでも行ってこの世界の知識調査をしてくれ」

「今のままでは、予想外の情報が出てきても対処できない」


「了解。図書館の所在を確認・・・発見しました。」

「今後、情報取得を最重要任務とします。」


脳内通話でナビへ今後の継続した任務を告げる。


「申し訳ありませんが、こちらの世界とは異なる世界なので」

「ホムンクルスというものの定義が異なるのかもしれません」

「我々の世界においては人に限りなく近い機械生命体なのです。」


「ふむ、機械・・・とな。」

リムラスさんの反応はいまいちだった

機械というもの自体が理解できていないらしい。


「金属によって部品をくみ上げて作るものを機械と言います。」

「言い方を変えるなら自動で動く装備とでも言いましょうか・・。」


「よくはわからぬが、すごい技術だとは見てわかる。」

「是非我が国に継承していただけるとありがたい。」


「ナビは戦闘は苦手。」

「戦争の道具ではないと進言する。」

いつものようにナビは戦闘回避を言及した。


「ええ、ナビはわたくしたちの生活のサポートをするためのものなのですわ」

「ただこの見た目なので身近にいてくれるだけで癒しになりますの」

アヤノがなかなか素晴らしいフォローをする


「ふむ、それならば動く人形と考えたほうがわかりやすいな」

リムラスさんがそう自己理解したらしい。


「ほら、リムラスさんは人形。私が言ったようにドールと認識しましたわ」

アヤノが少し得意げに脳内通信を送ってきた。


「そうだな、ホムンクルスが自動人形だというほうが理解されそうだ」

アヤトも少し諦めた


「この世界には科学力がないため知識説明は無理だと認識しました。」

「納得はできませんが、しばらくは自動人形という事を捕捉します。」

ナビもあきらめたらしい


3人の脳内通信により

ホムンクルスの意味するところは自動人形ということにした。

それはゴーレムとは用途が全く異なるという事にもつながる。


「結局、愛玩用にしておくのが一番か・・」


「うふふ。 お兄様、ナビちゃんは愛玩用途もありましてよ。」

「意味もなく可愛く作られているわけではないと思いますわ。」

「だって情報サポートだけの用途なら可愛くする必要はありませんもの」


「まあ、そういう考えもできるだろうな。」


本来の任務からしたら

2020年代にアンドロイドが街を歩くわけにもいかなかっただろうし

たぶん見た目によって相手から警戒されにくくなるという意味もあったのだろう

いろいろ用途に対する意味は異なるが、ナビの見た目に癒されているのも事実だ。


結局そんな脳内通話で落ち着いた。


「なるほどです。」

「ですが技術のすばらしさは言うまでもありません」

「これが錬金術のスキルだとすれば、」

「アヤト殿は似ているものを作ることは可能なのでしょうか」

ラカエルさんは感性だけで引き下がってくれそうになかった。

実現するための話を切り出し始める。


「申し訳ないのですが、私はこの世界の錬金術は知りません」

「ただ、私の世界では錬金術ではなく科学技術と言います。」

「それであれば、ここまで精巧なものは無理ですが基礎的なものは作成可能です。」


俺は装備類の管理を兼ねて技術技師としての知識を所持している。

よって装備どころかナビの修理まで可能だ。

その知識は部品の作成レベルにまで及ぶ。


人型に類似の外見と単純な機能だけというなら可能、

ナビクラスのAIとかコンピュータによる電子頭脳の作成は無理だ。

そんなものを作れる装置がこの世界にはない。


「ふむ、今後のために屋敷内に工作室を作るか・・・。」

これは独り言だった。


「ならば、アヤト殿の研究所を作るように父に進言しておきます。」

ラカエルさんにより工作室どころか研究所・・。


「うむ、ラカエル。それは素晴らしい案だ」

「我も是非それに協力させてもらおう」

「公爵家を挙げて取り組ませてもらうぞ。」

リムラスさんも完全に乗り気になってしまった。


リムラスさんは周囲を見渡して声を上げる

「父上っ、今、時間は取れますか?」

「面白い話があるのです。」

どうやら公爵様まで取り込むようだ。


少し離れた場所にいた公爵様はこれに気が付いたようだ。

二人の美しい女性を伴いこちらに歩いてくる。


「やあ、みなさん」

「本日はお越しくださりありがとうございました。」

「召喚されたばかりでお疲れではありませんか?」

公爵家の当主でありながら本当に気さくな人物だ


「いえ、大丈夫です」

「本日はお招きありがとうございます。」


「リムラスからの話の前に私の妻を紹介しますね」


「サファリーヌと申します。」

「お話はいろいろとラティから聞いておりますわ。」

「よろしくお願いしますね。」

公爵家とよく似た銀髪の女性だ。


そして青くとても長い髪の女性。

今まで見てきた人達の外見より何か透明性のある透き通った白い肌を持つ女性。

「エレノーラインと申します。」

「ふふふ、わたくしは人族ではありません。」

どうやら俺がすごく気にかけているのを見抜かれたようだ。

にしても、人族じゃないとはどういう意味だ?。


「ええ、驚かれるかもしれませんが」

「エレノーラは、エルフ族です。」


公爵様の説明はこうだった


初代勇者王の時代に魔王討伐に協力してくれた亜人族が5種族いました。

エルフ族、ドワーフ族、狼人族、兎人族、竜人族

そのうち竜人族については、残念ながら人との間に子が授かりません

ですが他の4種族については、人との間に子が授かります。

勇者王は協力してくれた亜人族に敬意をもち、

子々孫々交わりを持つことを約束したのです。


「その4種族との交わりが、それぞれの4公爵家に引き継がれております。」

「そして、竜人族は、代々王直属の近衛騎士になっております。」


「ですが、わたくしたちと人との寿命は異なるのです。」

「お互いを認め合った仲でなければ結婚までは至りませんの・・うふふ。」

エレノーラインさんは、優しく微笑みながら公爵様の肩に手をかける。


「また、召喚という儀式を行うためには、亜人種と人種の間の子では無理でした。」

「そのための妻二人ということです。」


なるほどの一夫多妻制だった。


「サファリーヌは、他の4公爵家の出身です。」

「公爵家同士も交わりを持つことで、争いが起こらないようにしています。」


「ええ、わたくしは南の公爵家 サウザント家の出身ですわ」

「わたしも若い時に召喚の儀を行っていますの」


「ええ、それが今の我が家の騎士団長です。」

「午前中に、ご紹介させていただいてますよね。」


これには驚きを隠せない。

既にあの時点で最初の召喚者と出会っていたという事だ。


「お父様、お母様」

「そろそろこちらの3人を紹介させていただいてもいいでしょうか。」

ラティさんが良いタイミングで話に割って入ってくれた。

長話になりそうだったので少し助かる。


「私はアヤトと申します」

「わたくしはアヤノと申します」


「どうぞよろしくお願いします。」


「そして、わたしはナビ。」

ナビを見た奥さん二人の目が輝く


「では一通りの挨拶が終わりましたので、」

「リムラス兄さま、話を進めてください」


「うむ、どうやら母上も興味がありそうですが」

「その少女、実はホムンクルスとのこと」

「アヤト殿の話では、ここまで精巧なものは作れないとのことですが」

「基礎的なものは作れる可能性があるとのこと。」

「それを聞いたラカエルがアヤト殿のために」

「研究所を作ったらどうかと提案しました。」

「これについては我が家の、いや我が国のためになると私も賛同したのです」


「おおお。それは素晴らしい話ではないですか。」

「うむうむ、我が息子たちが優秀で、わたしはすごく満足しましたよ。」

「アヤト君、是非この話は進めさせていただきたい。」

「おお、そうだこの件。カオリ君にも協力していただきましょう。」


「すぐに新しく錬金術研究所を設立するように指示しておきます。」

「準備ができるでは学園の一室を自由に使えるように手配しておきすね。」

「何か希望があれば遠慮なく言ってください。」


凄い速度で話が進んでいった。

このエネルギーこそがこの国の文明をいろいろ支えてきたんだと思う。


「だから予想外に、文化が進んでいたりするんだな」

これはアヤトの独り言である


「はい、ありがとうございます。」

「希望や必要なものは、後日一覧にまとめるようにしておきます。」



「アヤト様、何やら思わず話が良い方向へ向かいましたね。」


「これも、ナビちゃんのおかげかもですわ。」


「うむ、装備メンテナンス以外に改良や新作なども可能になりそうだ。」


「なら、お兄様。」

「生活用品なども作成して生活環境を向上していただけると助かります。」

「もちろんわたくしも手伝いますから。」


「ナビも知識的に協力すると進言いたします。」


3人の脳内通話だった。


「では、話もまとまったことだし」

「そろそろ晩餐会を始める時間ですね。」


「当家のものとの話は終わっていますか?」


「はい、お父様」

「家族の皆様との挨拶は終えております。」


「ならば、3人は私と一緒に会場の前で、他の皆さん全員に挨拶をして下さい。」

「親類縁者しかいませんから気楽にしてくださいね。」


周囲を見ても十数人

もうすでに半分は個別に挨拶が終わっている状態だ。


案内された会場の前方には例の騎士団長がすでに待っていた。

・・・というか仁王立ちで周囲を警戒し続けていたんだなこの人。


それとあの学者の老人先生もいた。


「あと今日は、この場にいないですが」

「私の弟と姉が二人、叔母が一人他にいます。」

「また後日、お会いできると思いますので覚えておいてください」

公爵様の話だった。


「皆様、本日はお集まりくださりありがとうございます。」


「わが娘、ラティーシャの召喚の儀、成功の報告と」

「来訪いただけた召喚者の皆様を紹介させていただきます。」


「では皆様こちらへ」


「まずは、こちらの少年」

「錬金術師のアヤト君」


「そして、こちらの少女が」

「魔術師のアヤノ君」


「最後に、ホムンクルスのナビ君」


会場内がざわつく、そして学者先生の目が輝く。


「見ていただけるとわかるように」

「我が公爵家、いや我が国で初めての3名の同時召喚に成功しました。」


「そして、初めて召喚の儀を執り行ったラティーシャにも」

「合わせて拍手を送りください。」


会場内で、パチパチと合唱のような拍手が起こった。

俺たち3人はそれに合わせてお辞儀をした。

どうやらこれが紹介の挨拶らしく、これが終われば晩餐会の流れになるのだろう。


「本日召喚されたばかりなのでまだ能力把握はできておりませんが」

「不思議な技能やスキルを所持している可能性があるという話も聞いております」


「そして、こちらのホムンクルスの基礎技術のために」

「わが公爵家において新たに錬金術研究所を設立いたします」

「今後の働きにも期待しておりますので、皆様もご協力をよろしくお願いします。」


更に拍手が起こる。

一番喜んでいるのは学者先生だった。


「では、長話も何なのでご自由にお食事を進めてください。」

「歓迎ありがとうございました。」


どうやらこれで無罪放免になりそうだ。


「アヤト君、アヤノさん 食事をご一緒してもよろしいですか?」


「ええ、ラティさん、大歓迎です。」


「ラティさん、こちらのマナーなども知りませんので」

「いろいろ教えていただけると助かりますわ。」


この後いろいろラティさんに教えてもらいながら

案内や説明交じりで食事を進めていった。


そしてその食事の間。

食事をとらないナビは窓の外、夜空を眺めていた。

これはあらかじめ決めていた観測である。


食事を進めている間でも、個別に挨拶をしなかった人がやってきたりもした。


「お兄様、ラティさんの従姉妹のかたがたも一族っていう感じでしたわね」

公爵様が言っていた姉、要するにラティさんの伯母さんの子供たちだ。


こういう人たちはラティさんのような直系の娘さんが召喚の儀に成功しなかった場合

当日、代わりに召喚の儀を行うべく別室で待機していたらしい。

どうやら召喚の儀とは一人一回までの決まりがあるようだ。

だからその時は近い親類の娘さんが代行者として入るようにしているらしい。


そして公爵様の弟さんやお姉さん、伯母さんたちがこの場にいないのは

王都以外の公爵領を守っているとの事。

アヤノが王都の外にも城塞都市が点々とあるらしいと言っていたが

それらの城塞都市はそれぞれの公爵家一族の直轄領になっているとの事。


そのため階級名として公爵ではなく侯爵という事になるらしい。


そして・・・何故そんな城郭都市を形成しているかと言えば

他国との戦争があるというだけでなく、

魔物の存在や魔族の存在があるからだという。

その他にも敵対している亜人族もいるらしい。

やはり想定していた通りの戦乱時代だった。


しかし、魔族は亜人族の一種と見れるが

魔物とは、なんだ?。

ナビに調べてもらうしかないな。


「あの、ラティさん、私たちが学園に通っている間」

「ナビを図書館で勉強させたいのですが入館を許可していただけますか?」


「ええ、大丈夫ですわ」

「護衛の方に同行してもらえば行動は自由にしていただけると思います」

「それと英雄の方は王城内以外の入館は認められてますからご安心ください」


「でもナビちゃんって、たぶん重要護衛対象になるわね」

「戦闘力がないって言ってましたし・・」

「通常の護衛兵士ではなく、武官級の方を付けるように指示しておきます。」


「ああ、あの召喚の儀の時にいた甲冑姿の人たちのことですね。」


「ええ、そうですわよ」

「上級の剣術師や魔術師を武官と言います」

「騎士爵を持つ貴族ですわ」


「あ・・そういう貴族の爵位や階級みたいなのを全然わからないのですが。」


「では、少し説明しますね。」

「皆様召喚者は対外的には英雄と呼ばれますが、」

「貴族としては伯爵級という事になります」

「ちなみに伯爵位以上が直轄領を所持できます。」


この国の階級として

王、公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵、騎士爵が存在する。


伯爵、子爵、男爵は文官が持つ爵位にもなっているとの事で

大臣級、次官級、事務官級という感じだ。


侯爵とは公爵家の一族であり、地方領主、知事のような立場になる。


そして武官は一律、騎士爵。

その上のほうにいる騎士団長クラスになると伯爵級。

分団長が子爵級、部隊長が男爵級。


伯爵級で地方領主というのはいわば最前線の砦を守る役。

ゆえに辺境伯などと呼ばれたりする。

場所によっては騎士団長クラスの武官が任命される。


但し武官の階級とは指揮能力で決まるので個人の戦闘力とは比例しない。

よって、騎士爵でも個人戦闘力が高い武官は護衛に選ばれる。


ここの公爵家の騎士団長は召喚者だが

召喚前の世界でも騎士団長、もしくは武将クラスという指揮官歴があった。

そのうえで能力持ちなので個人戦闘力も申し分がないという事だ。

これは非常に珍しい例と言えるらしい。


それとこの国の貴族とは血族が占有しているわけではない

この点は地球とは大違いだ。

組織の階級に準じているため能力階級となるらしい。


いわば貴族とは公僕というものだ。


但し、王位に近い公爵家は特権階級になる。

全く別格の存在だ。

その代わりに有事の際には国民を最優先で守るという責任を持つ。


だから場合によっては最前線に王が立つ。

これは勇者王から継続した流れだ。


貴族の面白いのは平民でも、仮に農民であっても

優秀であれば、まずは仮採用として準男爵や準騎士爵になれる。

これらはそういう学校制度があるから成立している。


そしてエルム学園、別名勇者学園とはそういった意味でも

学校制度の最高位の学舎だ。


以上、

ラティからの話まとめ。


「アヤト様。また報告書的な感じになってます。」


「ナビちゃん、それもまたお兄様らしいから好きにしてあげてね。」


「了解しました。」


いつの間にか考え事が脳内通話になっていたアヤトだった。


「では、ナビから天体観測の結果を報告します。」


「星の位置が地球と異なるため観測は難しく」

「この世界がどの位置にある星なのかは不明」

「但し、月を観測していた結果、驚くべきことが判明しました。」


「実は・・・月は地球の月と90%以上類似していました。」


これを聞いて

二人とも思わず食べたものを吹き出しそうになった。


「ナビ、それが示すものとは・・。」

なんとなく聞きたくない予想が頭をよぎる。


「はい、現状の観測結果内ですが」


「70%以上の確率で、ここは地球です。」




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